スリランカ非常事態宣言、一族支配に幕 中国と蜜月暗転

スリランカ非常事態宣言、一族支配に幕 中国と蜜月暗転
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『【ムンバイ=花田亮輔】経済危機下のスリランカで13日、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領が国外に脱出した。20年弱にわたり中国の支援を受けたラジャパクサ一族による支配に幕が閉じた。ウィクラマシンハ首相は同日、大統領代行として全土に非常事態を宣言した。政情不安がインフレや対外債務にあえぐ他の新興国に飛び火する恐れもある。

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ラジャパクサ氏は13日に軍用機でモルディブに「逃亡」した。デモ隊の活動は激しさを増し、当局は同日に催涙ガスを使用。大統領代行に就いたウィクラマシンハ氏は当局に「秩序回復に必要なことはなんであれ実行を」とも命じた。

20日に新たな大統領が選出される見通しだが、情勢は不透明感が強まっている。

ラジャパクサ氏失脚の直接的な要因は経済運営だ。スリランカでは新型コロナウイルスの発生により、国内総生産(GDP)の1割程度を占める観光業が低迷し、外貨が急減した。2019年末時点で約76億ドルだった外貨準備高は6月末時点で約18億ドルに減少し、国営企業などの輸入に支障が生じた。

スリランカでは国際商品価格の上昇や通貨下落で、燃料や食料といった生活必需品の不足や高騰が深刻だ。9日には数千人のデモ隊が大統領公邸などを占拠し、ラジャパクサ氏とウィクラマシンハ氏は辞意表明に追い込まれた。

国民の怒りは長年にわたるラジャパクサ一族の支配そのものにも向けられている。ラジャパクサ氏の兄であるマヒンダ氏は05年から15年まで大統領を務めた。ラジャパクサ氏が19年に大統領に就任すると、マヒンダ氏を首相に任命した。4月時点では財務相を弟のバシル氏が務めていたほか、ほかの複数の閣僚ポストも一族が担っていた。

ラジャパクサ兄弟を裏で支えてきたのが中国だ。中国を中心に投資を積極的に呼び込んだ結果、01年に83億ドルだった対外債務残高は21年には507億ドルにまで増えた。

債務返済に窮したスリランカ政府はマヒンダ氏の大統領選敗北後の17年には、南部ハンバントタ港の99年間の運営権を中国側に渡している。援助と引き換えに権益を奪われる「債務のワナ」の典型例とも指摘された。

ゴタバヤ・ラジャパクサ氏(右)は兄のマヒンダ氏とともに中国寄りの姿勢が懸念されていた(1月、コロンボ)=ロイター

ラジャパクサ氏は大統領就任後、バランス外交を演出してきた。一方で21年には日本とインドで合意した港湾開発計画を突如として白紙撤回し中国企業に一部を発注するなど、依然として中国寄りの姿勢が懸念されていた。

ラジャパクサ氏は1月、スリランカで中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談し、対中債務の支払いの条件緩和を求めたと報じられている。しかし中国でも広域経済圏構想「一帯一路」の事業などで採算性を精査する傾向が強まるなか、中国側からのつなぎ融資などは見込みにくいもようだ。

窮したスリランカは4月、経済再建のメドがつくまで対外債務の支払いを一時停止すると表明。ウィクラマシンハ氏は5日に同国の現状を「破産国家」と表現した。国際通貨基金(IMF)からの金融支援を得るために8月末までに債務再編計画をまとめる方針だったが、経済再建交渉の行方は不透明になっている。

国連は6月の報告書で、ウクライナ危機の影響で世界94カ国の16億人が食料とエネルギー、金融のいずれかの分野で深刻な危機にさらされると指摘した。グテレス事務総長は「未曽有の飢餓と貧困の波が引き起こされ、社会と経済に混乱を残す」と述べた。スリランカで起きたような生活苦への国民の怒りが噴出し、他国でも政情不安を招きかねない。

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