Twitterがマスク氏を提訴 6兆円の買収取引撤回に反発

Twitterがマスク氏を提訴 6兆円の買収取引撤回に反発
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1276Y0S2A710C2000000/

『【シリコンバレー=白石武志】米ツイッターは12日、同社の買収契約を打ち切ると表明した米テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏を相手取った訴えを起こした。契約解除は無効だとして、総額440億ドル(約6兆円)の買収取引を実行するよう求めている。同氏がSNS(交流サイト)上の影響力を駆使して注目を集めた「劇場型買収」をめぐる争いは、法廷に持ち込まれた。

ツイッターが12日、登記上の本社を置く米東部デラウェア州の裁判所に訴えを起こした。訴状によると、ツイッターは4月25日に合意した価格と条件でマスク氏に買収取引を強制するよう裁判所に求めている。

マスク氏は7月8日、ツイッターに買収契約を打ち切ると通知した。同社が「ボット」と呼ばれる実態のない偽アカウントに関する十分な情報提供に応じず、買収契約の複数の条項に違反したためと主張している。

一方的に契約を破棄されたツイッターは訴状のなかでマスク氏が求める偽アカウントに関する情報提供には応じてきたと反論。「買収契約に基づく義務をすべて履行している」と述べ、合意済みの契約はなお有効で執行可能だと主張した。

約1億人のフォロワーを抱えるマスク氏はツイッターと買収契約を結んだ後もSNS上で同社経営陣を中傷するような投稿を続けてきた。同社はこうした行為が契約上の義務違反に当たると指摘。「不誠実さの見本だ」と強い言葉で非難し、奔放な振る舞いへの怒りをあらわにした。

米利上げに伴う株式市場の変調によって米ハイテク銘柄は軒並み株価が低迷している。両者が4月に合意した買収価格は割高になっていた。ツイッターはマスク氏が買収を撤回した本音は「個人的な利益にならないからだ」と指摘。偽アカウント問題を表向きの理由に掲げる姿勢を批判した。

マスク氏は、訴訟を通じてツイッターが偽アカウントの実態開示を迫られ、利用者全体の5%未満であるとする同社の過去の情報開示が誤りであることが明らかになるとの見通しを示している。同氏は訴訟の提起が報じられた12日夕、ツイッターに「ああ、皮肉なものだ」と書き込んだ。

米食肉業界における過去の類似の訴訟では、デラウェア州の裁判所は情報開示の不備などを理由に買収契約を打ち切ろうとした買い手企業に取引の完了を命じる判決を下している。ツイッターの提訴についてマスク氏の代理人弁護士にコメントを求めたが、回答は得られていない。

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

物理学的思考を標榜し、「アウトプット=ボリューム×密度×速度」へのこだわりでテスラを進化させてきたマスク氏。「算盤」は物理学的レベルで優れていますが、不足していたのは「論語と算盤」だったのかも知れません。渋沢栄一は、知・情・意のバランスが取れた、人として在るべき人物を「常識人」、歴史に登場するような興亡を体現する人材でどれかが欠落している人物を「英雄豪傑」と表現しました。地球レベルの成果を出している宇宙レベルの異才、マスク氏に「論語」は不要なのかも知れませんが、成長の壁にぶち当たるとしたら、それは「算盤」ではなく「論語と算盤」、特に渋沢の言う「情」、論語の言う「仁」という壁なのかも知れません。

2022年7月13日 6:56 (2022年7月13日 6:57更新)

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森幹晴
弁護士・東京国際法律事務所 代表パートナー
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分析・考察

今回のツイッターへの買収提案のように、買収意向を公表して交渉を迫る手法をベアハグと呼ぶ。米国ではよく見られる手法で、日本でもオーケーやSBIなどが採用した。劇場型とも呼ばれるが、取締役会は企業価値を高める買収提案を検討する信認義務を負うので有効な手法だ。お行儀が悪いという見方もあるが、資本市場のダイナミズムを生み出している側面も否定できない。法廷闘争に持ち込まれ、マスク氏は防衛戦だ。偽アカウントがツイッターの主張する5%未満かそれ以上か、情報開示が十分だったか隠匿があったのか、などが論点となるだろう。買収契約破棄に10億ドルの違約金の定めがあると言われており、賠償責任の有無、金額が争われる。

2022年7月13日 10:21

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蛯原健
リブライトパートナーズ 代表パートナー
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分析・考察

結局のところTOBを表明してから株価は一度もTOB価格を上回る事は無かった。つまり成立につきマーケットは一貫して半信半疑であったという事。確かに取り下げた後の月曜は株価急落したが、その前からTOB価格より3割近くも低かったし、月曜はナスダック全体も大きく下げた。

そのような価格乖離があるからこそ皮肉にも裁判に繋がっている。つまりは同氏以外にマーケット価格の3割近くも高い価格で買う者はおらず、そのディールを追求する事が株主の最大利益故ボードはそれを追求する義務があるからであるし、一方の同氏は3割損する故なんとか難癖を付けてでも逃げたいというのが実態だろう。

2022年7月13日 9:14 』