[FT]NATOに接近の韓国、防衛産業ハンファに商機

[FT]NATOに接近の韓国、防衛産業ハンファに商機
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『ロシアのウクライナ侵攻を受けて欧州各国が防衛費を増額するなか、韓国の防衛大手が自社を「需要急増に応える北大西洋条約機構(NATO)の重要なサプライヤー」と位置付けている。

6月29日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に参加し、岸田首相(左から2人目)らと写真に収まる韓国の尹錫悦大統領(右端)=ロイター

砲撃システムや装甲車両を手掛ける韓国のハンファディフェンスは2014年、ロシアのクリミア併合を受けてポーランドの下請け会社に自走式りゅう弾砲「クラブ」の製造ライセンスを供与し、欧州防衛市場に参入した。

それ以降、NATOの規格に対応させた自走式155ミリりゅう弾砲「K9」をフィンランド、ノルウェー、エストニア、トルコに輸出している。

ハンファディフェンスのソン・ジェイル最高経営責任者(CEO)は、ソウルにある本社でのフィナンシャル・タイムズ(FT)とのインタビューで「当社は(欧州から)離れているが、信頼性の高いパートナーとなることができた」と強調した。

ハンファディフェンスは韓国7位の財閥ハンファグループ傘下の企業で、同グループが15年に韓国サムスングループの防衛企業サムスンテックウィンを買収したのに伴い、海外に事業を拡大した。21年のハンファディフェンスの売上高は1兆4000億ウォン(約1400億円)、営業利益は1156億ウォンだった。

ロシアのプーチン大統領が2月にウクライナに侵攻して以降、欧州連合(EU)各国は総額2000億ユーロ(約27兆円)の防衛費増額を表明している。

EUの欧州防衛機関(EDA)は短期の重要課題として、ウクライナへの武器供与で激減した在庫の補充や、主に東欧諸国での旧ソ連時代の装備刷新に予算を割り当てている。
「信頼できるパートナー目指す」

ソン氏は「欧州中心に海外事業を強化し、様々な欧州企業との提携を通じてNATOの信頼できるパートナーになることを最終的に目指している」と語った。

保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領はマドリードで開かれたNATO首脳会議に韓国の大統領として初めて出席した。韓国の外交筋は「セールス外交」が重要な目的だと説明した。

特に東西冷戦時代の東側諸国による軍事同盟、ワルシャワ条約機構に属していたポーランドなどでは武器の需要が大きい。関係者によると、ポーランドは戦車や自走砲、歩兵戦闘車の供給を求めている。

ポーランドは6月、ウクライナに供与した自走式155ミリりゅう弾砲「クラブ」50門の補充も求めている。

西側のある外交官は、クラブは韓国政府の同意なしではウクライナに送付できなかっただろうと指摘し、これは「大きな節目だ」と語った。アナリストや専門家によると、韓国政府はこれまでロシア政府や中国政府の機嫌を損ねることには消極的だった。

ソン氏はハンファの歩兵戦闘車「レッドバック」に数カ国が特に関心を示していると明かした。レッドバックには探知を回避し、対戦車ミサイルを迎撃する技術が搭載されている。

ソン氏は「自国の防衛産業の強化に努めている国もある」と語った。「これは当社にとって試練になるが、足元の需要急増はチャンスでもある」

韓国は2月、ハンファディフェンスがエジプト軍にK9を売却する16億6000万ドル(約2250億円)の契約をエジプトと結んだ。

1月には、ハンファなどの韓国防衛企業が中距離地対空ミサイルをアラブ首長国連邦(UAE)に輸出する35億ドルの契約も締結した。

さらに21年12月には、ハンファがオーストラリアに自走りゅう弾砲30門と弾薬補給車15両を供給する7億1700万ドルの契約を交わした。

ロシアはこのところ、高性能の防衛装備の製造に力を入れている。このため民間の防衛企業にとっては「りゅう弾砲に加え、主力戦車やその他の装甲車などの一般的な通常兵器」を供給するチャンスだとソン氏は指摘した。

インドとも契約

同氏はさらに、ロシアと長年に及ぶつながりがあるものの、ハンファが契約を勝ち取っている国の例としてインドを挙げた。

ソン氏は「インド政府にはロシアの装備やテクノロジーの活用から脱する動きがみられる。当社のチャンスが増えると期待している」と語った。

欧州では英国をターゲットにしていると明かした。米防衛大手ロッキード・マーチンなどに割って入り、英軍向けのK9を製造したい考えを示した。

英ロンドン大学キングス・カレッジ教授で、ブリュッセル・スクール・オブ・ガバナンス(BSoG)で韓国問題研究所の所長を務めるラモン・パチェーコ・パルドー氏は、ロシアや中国を安全保障上の脅威とみなす国への韓国政府による武器売却は、韓国の政策で西側寄りの姿勢が台頭し、明白になりつつあることの表れだと指摘する。

同氏は「(韓国が)オーストラリアだけでなく、インドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムなど東南アジア各国にも武器を売却していることに、中国は怒りを募らせている。一方、エストニア、ノルウェー、ポーランドへの武器販売には、明らかにロシアの要素がある」と語る。「それでも、韓国政府の前進を阻止できていない」

By Christian Davies and Song Jung-a

(2022年7月11日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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