Uber、仏マクロン氏と「密約」か 英紙が社内文書入手

Uber、仏マクロン氏と「密約」か 英紙が社内文書入手
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1070A0Q2A710C2000000/

『【パリ=白石透冴、シリコンバレー=佐藤浩実】フランスのマクロン大統領が経済担当の閣僚だった2014~17年ごろ、米ライドシェア大手ウーバーテクノロジーズと「密約」を結び、同社の事業拡大を助けていた可能性があることが分かった。行きすぎた支援と取られかねない内容で、支持率低迷に苦しむ同氏にさらに打撃となる恐れがある。

英紙ガーディアンがメールや社内資料など13~17年のウーバーの社内文書12万4000件以上を入手した。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)や42の報道機関と共有・検証した。仏紙ルモンドなども調査に加わり、10日に一斉に報じた。

ウーバーは現在のフランスで多くの利用者を持つが、当時は「運転手が労働者として保護されない」「タクシー業界を圧迫する」など多くの指摘を受けていた。中道左派オランド政権にも批判的な声が多かったが、経済産業デジタル相だったマクロン氏は「革新的だ」など一貫して評価していた。

報道によると、マクロン氏は、ウーバーの最高経営責任者(CEO)を務めていた創業者トラビス・カラニック氏と14年10月に初めて会い、以降ウーバーを保護する姿勢を強めた。同社幹部と平均して月に1回面会や電話などでやりとりをしていたという。

15年10月、南仏マルセイユの警察当局がウーバーの主要サービスの禁止に動くと、同社のロビイストがマクロン氏に「何が起こっているか教えてもらえませんか」と連絡。マクロン氏は「個人的に検討する」と返信し、間もなく当局が停止命令の見直しを公表したという。取材に対し、当局はマクロン氏の介入を否定した。

ウーバー経営陣はマクロン氏とある時点で「ディール(取り決め)」を結んだとしている。同社が一部サービスの提供をやめる代わりに、希望者がウーバー運転手になるための手続きを大幅に簡素化する内容だった。取り決めはマクロン氏が提案し、バルス首相(当時)やカズヌーブ内相(同)にも相談したという。実際仏政府は16年、運転手になるまでの訓練時間を250時間から7時間に短縮した。

ルモンドによると、仏大統領府は「マクロン氏の行動は大臣の職務としてありふれたものだ。多くの企業と接触するのも自然なことだ」などと説明している。

ただ、マクロン氏の当時の行為はウーバーだけを特別扱いしていたと受け止められかねない。同氏の企業寄りの姿勢はしばしば「金持ちのための大統領」との声につながっていたが、批判が強まる可能性がある。与党連合はロシアのウクライナ侵攻で加速する物価高への不満から、6月の国民議会(下院)選挙で過半数割れを起こした。今回の報道で政権運営が一段と難しくなる恐れもある。

一方社内文書では、倫理的な問題を指摘されかねないウーバー経営陣の言動も明らかになっている。フランスでは15年、ウーバー進出で客を奪われることに反発したタクシー業界による大規模な抗議活動が起き、ウーバーの運転手が暴行を受けた。運転手の身の安全を心配する現地幹部に対し、カラニック氏は「暴力(を受けること)が(仏国内での事業の)成功を保証する」などと返答した。いかに抗議活動をメディアに伝えて、仏タクシー業界の印象を悪くするかも議論したという。運転手への暴力を政治利用する意図があったとみられる。

ウーバーは10日に声明を公表し、17年に経営陣を一新したことなどを説明して「明らかに現在の価値観に合わない過去の行動に対して言い訳はしない。過去5年間と今後数年間の行動によって、我々を判断してもらうよう世間に求める」と言及した。

カラニック氏が率いていた17年までのウーバーは法令順守軽視と受け取られかねない攻撃的な組織文化で知られていた。今回明らかになった文書の発行時期とも一致している。』