半導体市場が一転、2年ぶり変調 台湾勢に警戒感強まる

半導体市場が一転、2年ぶり変調 台湾勢に警戒感強まる
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM089DA0Y2A700C2000000/

 ※ 「コロナ」も世界的に落ちついて来て、「巣ごもり特需」も一巡したんだろう…。

『【台北=中村裕、龍元秀明】供給不足で2年間の好調が続いていた半導体の市場が、一転して変調をきたし始めた。代表的な半導体であるDRAMの在庫が今春以降だぶつき、価格が30%強も急落するなど大きな変化がみられる。中国経済の減速懸念や世界的なインフレを受け、企業の設備投資や消費者の購入に対する意欲が減退している。世界の半導体生産の中心である台湾では、急速に警戒感が広がってきた。

「(世界の半導体市場では)今年の上半期までは楽観論があったが、今となっては、それはもう逆転した」

DRAM世界3位の米マイクロンで台湾法人トップを務める盧東暉・董事長は6日、日本経済新聞の取材に対してこう答え、市場の急変に危機感を示した。マイクロンはDRAM最大の生産拠点を台湾に構える。

盧氏は「市場のスローダウンがこの数カ月間続いている」とも指摘。現在起きている変化が、決して一過性のものではないことも強調した。
単独インタビューに応じた米マイクロンの台湾法人トップ、盧東暉・董事長。「(半導体業界の)楽観ムードが今は逆転した」と語った(7月6日、台湾・台中市)

11日にDRAM世界4位の台湾・南亜科技(ナンヤ・テクノロジー)が開いた決算発表の記者会見でも、やはり関心は「半導体市場の変化」に集中した。

「需要が弱ってきた。(22年)7~9月期も、さらに半導体のDRAM価格は下落するだろう」

経営トップの李培瑛・総経理はこう述べ、今後の市場の見通しに対する危機感の強さをあらわにした。李氏は需要悪化の理由について、中国政府による上海市でのロックダウン(都市封鎖)の影響やインフレ、ロシアによるウクライナ侵攻が重なり、消費者の購入意欲が予想以上に落ちてきたと分析した。

実際、半導体の消費市場としては世界最大の中国で、落ち込みは顕著だ。今年1~5月でみると、スマートフォンの出荷台数は前年同期比で27%の大幅減。新車販売も同12%落ち込んだ。さらに世界に目を向けても、パソコン出荷は今年8~10%の出荷減が予想され、半導体を取り巻く環境は今、大きく変化しつつある。

業界全体を見渡すと、厳しいのは、記憶系の半導体であるDRAMだけではない。家電やパソコン向けなどに使う旧世代の汎用的な半導体にも影響は広がっている。

半導体不足の象徴的な存在でもあったが、ある台湾の大手半導体メーカー幹部は「つい最近までの半導体不足が噓のようだ。4月から在庫調整が始まり、今も足元で続く。適正在庫は2カ月分だが、既に3カ月分を超えてしまった」と明かす。

別の同業メーカーの幹部も「半導体の納入先の企業の生産が完全に落ちている。注文をもらった半導体のキャンセルも増え、潮目が変わったのは間違いない」と話した。

市場の変調は、台湾半導体大手の直近の月次売上高からもみてとれる。例えば、液晶ディスプレー向けの半導体などを手掛ける聯詠科技(ノバテック)。同社は4月まで前年比で2ケタの成長をみせていた。ところが5月に減収に転じると、直近6月の業績はさらに悪化し、29.6%の大幅減収に見舞われた。

世界の半導体市場は、過去2年間、近年にない大きな成長をみせてきた。きっかけは新型コロナウイルスの感染拡大だ。テレワークやオンライン授業が世界で普及。パソコンやスマートフォン、ゲーム機などを筆頭に、在宅でのオンライン需要が急拡大した。米中大手IT(情報技術)企業によるサーバーの増設も続いた。この結果、世界半導体市場統計(WSTS)によると、2021年の世界の半導体市場は、前年比26%増の5558億ドル(約76兆円)と、空前ともいえる伸びをみせて過去最高を記録した。

ただ、半導体市場は景気動向に敏感で、好不調の波が激しいのが特徴だ。好調が長く続いても、いったん市場が何らかのきっかけで弱気に転じると、歯止めが効かずに急変をみせることも少なくない。今回でいえば、3月末に始まった上海でのロックダウンが影響した可能性がある。時を同じくしてDRAM価格は急落した。

半導体は家電から車、スマホ、軍事、宇宙関連に至るまであらゆる製品に搭載されるため、景気の先行指標となる。一般的な半導体の発注から納期までのリードタイムはおよそ3カ月だ。そのため足元の半導体市場が弱含めば、その3カ月後から、景気が弱含むと推測できる。

現在の半導体市場の変調も、3カ月先の景気後退のサインといえる。その半導体市場が今後さらに崩れるのか、それとも持ちこたえられるのかは、中国次第のところが大きい。

中国は「ゼロコロナ」政策を掲げ、感染拡大の封じ込めを優先した結果、今春から経済が急失速した。そのため今後、どこまで効果的な景気対策を打てるかが焦点となる。ローン返済の繰り延べや自動車などで一部始まった景気刺激策だけでは「今の半導体価格の値崩れは止まらない」というのが業界の見立てだ。
半導体業界では、パソコンやスマホ向けを中心に需要が落ち込んでいる(2月、米マイクロンの国内工場)=AP

株式市場は既に先行きを織り込み、恐怖に駆られている。半導体銘柄は総崩れの状態だ。大手の台湾積体電路製造(TSMC)や米インテル、韓国サムスン電子の株価はそろって年初比で約3割下落し、米エヌビディアは半減した。

現段階では、TSMCやサムスンが製造する先端の半導体の需要はサーバー向けなどで底堅い。電気自動車(EV)向けも好調だ。ただ、過去の半導体サイクルをみると、一部の半導体だけが長期に好調を持続することは難しい。今後は半導体市場全体に「弱気」が広がる恐れがあり、供給過剰への懸念も膨らみ、予断は許さない。

月内には、米アップルなどIT大手「GAFAM」の四半期決算の発表が控える。半導体を大量に消費するGAFAMは既に成長の壁に直面しているともいわれ、景気減速で先行きに不透明感がさらに増す決算内容となれば、半導体市場には追い打ちとなる。現在の半導体工場の投資ラッシュにも水を差しかねず、計画の見直しといった悪影響を及ぼす可能性は十分にある。
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

専門家によれば、半導体需給はおおよそ2年を周期にアップダウンするといわれている。この仮説に則れば、秋に半導体の供給が需要を上回ると予想される。この記事が示したのはその前兆といえるかもしれない。供給過剰になるのはよくないが、バランスするよう期待している
2022年7月12日 11:49

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菅野幹雄
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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ひとこと解説

世界景気の体温を測る台湾の半導体産業の変調を経営者の肉声を交えて示した、説得力のある記事です。
新型コロナ禍を受けた半導体の不足は、自動車を筆頭に家電やさまざまな製品の生産のボトルネックとなり、インフレの一因となってきました。半導体需給が一気にダブついてきたとなれば、2、3カ月先の世界経済の風景もだいぶ変わってきます。
中国のゼロコロナ徹底による上海などの経済封鎖の影響が和らいでくるとは予想されますが、先端品を含めた半導体の需要がどうなるか、一段と注意しながら見ていく必要があると思います。
2022年7月12日 12:01 』