“レバナス投資”で被害続出? 背後に投資系インフルエンサーの影も

“レバナス投資”で被害続出? 背後に投資系インフルエンサーの影も
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2205/13/news044.html

『米国株ブームで増加した投資系インフルエンサーの推奨により、「レバナス」と呼ばれる投資信託がここ半年で半値近くまで大暴落している。

レバナスは半年で半値近くまで落ち込んだ オコスモ作成

 「レバナス」とは「レバレッジ」と「ナスダック」を掛け合わせた投資信託だ。「レバナス」は日々の基準価額の値動きがNASDAQ-100指数(米ドルベース)の値動きに対して、概ね2倍程度となることを目指したファンドである。

 一部では「ツミレバ投資」などと銘打って、レバレッジ商品の長期積立を推奨する業者も現れていた。しかし、レバナスをはじめとしたレバレッジ型の金融商品については、金融庁が2021年6月の時点で注意喚起を行っており、「主に短期売買により利益を得ることを目的とした商品」と分類していた。

 それだけでなく、長期投資を前提とした資産形成制度であるつみたてNISAからもレバレッジ型の投資信託は除外されている。件の「レバナス」も当然、つみたてNISAでは投資できず、24年から開始される新NISA制度からも対象から除外される見通しだ。

 レバレッジ型の金融商品に発生する「減価リスク」や「出口戦略」におけるリスクについては、21年末に執筆した「急増する“レバナス信仰”の裏に隠れた投資信託『負の側面』」という記事にて既に解説を行っている。

 今回は、前回に紙面の都合で紹介しきれなかった投資信託の「繰上償還」リスクについて確認していきたい。

繰上償還になると「強制的に損切り」となる

 繰上償還リスクとは、投資信託系統の金融商品に特有のリスクであり、「レバナス」をはじめとしたレバレッジ型の投資信託にとって“天敵”ともいえる存在だ。

 繰上償還とは、市場環境の悪化など、当初の想定と比べて運用の継続が難しくなった場合に適用されるもので、その時点で運用が終了する条項だ。

 通常の投資信託であれば、価格が堅調でも投資家からの人気が集まらなかった投資信託が繰上償還されることもあり、その場合は繰上償還時点で利益が出るようなパターンもある。

 しかし、レバレッジ型投信が繰上償還される場合の多くは、株価の下落局面で発生する。仮に人気のある投信であっても、レバレッジによって株価下落の影響が増幅されると、その投信の純資産総額が大幅に毀損(きそん)し、繰上償還に追い込まれる。この場合の多くは繰り上げ償還時点で含み損となり、強制的な損切りを余儀なくされるのだ。』

『繰上償還は相場の回復を待ってくれない

 ここで、レバナス投資を推奨する投資系インフルエンサーは「ITバブル崩壊時の相場でもレバナス投資を継続していれば着実に利益を生み出すことができる」と主張する。

 現に、証券会社のレバナス紹介ページでは、ITバブル最高潮のときに購入した場合でも、バブル崩壊を乗り越えて17年9カ月間保有していれば、レバレッジ2倍をかけて投資したNASDAQ-100はプラスになる旨が記されている。

大きく下落しても17年でプラスになるというが……(引用:楽天投信投資顧問)

 しかし、図表で指摘されているような98.6%のドローダウンが発生したとすると、「レバナス」も繰上償還に追い込まれ、運用の継続が許されない危険性がある。

 現在、楽天投信投資顧問の取り扱う「レバナス」の純資産総額は210億円で、運用口数はおよそ385億口だ。ここで「レバナス」の繰上償還条項を確認すると、受益権の口数が10億口を下回ることになった場合は繰上償還となり、運用が終了する旨が記載されている。

 ここで簡易な計算として、385億口にナスダック100指数の2倍レバレッジにおける98.6%のドローダウンを当てはめると、受益権の総数は大底圏で5.3億口まで減少する計算となり、繰上償還のラインに引っかかってしまう。

 実際には、繰上償還に先んじて投資家が解約を行ったり、損切りを行ったりすることでも純資産総額や口数は減少する。そのため、実際にITバブル崩壊級のドローダウンが発生するよりも先に、レバナスは繰上償還になる可能性が高い。

 「レバナス」のような投資信託はいくつか存在するものの、運用方法に大きな違いはない。1つのレバナスが繰上償還されると連鎖的に他の投信も繰上償還となる可能性が高いのだ。そうなれば、レバナス投資家は下落局面で繰上償還によって強制的に損切りを余儀なくされるだけでなく、運用を継続するための代替手段も見つけられないだろう。

 仮に代替手段が見つかったとしても、繰上償還によって確定した損失は、税務上は3年しか繰り越せない。そうすると、繰上償還となったレバナス投資家は、そこから3年以内に損失をカバーできなければ、税務的にも不利な状況に追いやられてしまう。過去のドローダウンでは、相場の回復までに17年9ヶ月かかったことを考えると、3年という損失繰越の期間はあまりにも短いのではないだろうか。

 「投資は自己責任」というフレーズもあるが、レバナスを推奨する投資系インフルエンサーは証券会社の社員のような社内規則にとらわれない。推奨にあたりセンセーショナルで断定的なフレーズが用いられている場面も散見される。そういった意味では、レバナスのリスクを十分に把握しないまま、インフルエンサーの言うがままに投資を行っている者は、ある意味で被害者といっても過言ではないだろう。

 そんな投資系インフルエンサーの中には、自身のフォロワーに対してFIRE(Financial Independence、 Retire Early)や老後資金の準備のためにレバナス投資を推奨する者もいる。しかし、レバナスには減価リスク、運用終盤での相場下落リスク、繰上償還リスクといった長期投資にとってマイナス要因が大きい。

 資産形成は「レバナス」ではなく「レバ無し」で十分だ。』