紛争鉱物とCFSプログラム(1)紛争鉱物とは? ~概要~
https://www.dowa-ecoj.jp/naruhodo/2014/20140402.html





『米国証券取引所に上場しており「紛争鉱物」を製品に使用する企業は、その調達先を調べ、米国証券取引委員会(SEC)に毎年報告し、内容を公開することが、アメリカの金融規制改革法(ドッド・フランク法)で義務付けられました。
自社の製品を米国上場企業に供給していれば、または、自社の製品が組み込まれた製品が米国上場企業に供給されていれば、この紛争鉱物調査の対象になるため、日本企業にも影響があります。
DOWAグループも金を製錬・精製していますので、第3者の監査を受け、紛争鉱物不使用の製錬・精製業者(コンフリクトフリースメルター/CFS)の認定を取得しました。
ドッド・フランク法の適用は、2013年1月1日~2013年12月31日が初年度となり、初年度の紛争鉱物に関する報告書の提出締め切りは2014年5月31日です。
■紛争鉱物
紛争鉱物とは、アメリカの金融規制改革法(ドッド・フランク法)の定義では、スズ・タンタル・タングステン・金、と、コンゴ民主共和国もしくは周辺国で紛争の資金源となっている鉱物のことです。
■紛争鉱物の定義
「紛争鉱物」は、下記のものを意味する。
(A)
コロンバイト‐タンタライト(コルタン)、錫石、金、鉄マンガン重石※1、またはこれらの派生物、
または
(B)
コンゴ民主共和国もしくは周辺国において紛争の資金源となっていると国務長官が判断したその他の鉱物またはその派生物
「周辺国」? コンゴ民主共和国に関し「周辺国」は、国際的に認められた国境をコンゴ民主共和国と共有する国を意味する。
ドッド・フランクウォールストリート改革および消費者保護法(金融規制改革法)
(出典:経済産業省ホームページ アメリカ 金融規制改革法 第1502条仮訳)
※1:鉄マンガン重石は、これはタングステンの鉱石鉱物です。
※2:周辺国とは、コンゴ民主共和国と接する国(9カ国)です。
■3TG
スズ(Tin)・タンタル(Tantalum)・タングステン(Tungsten)・金(Gold)の鉱石とその派生品は、英語の頭文字をとって3TGと呼ばれています。
■なぜ「金融」規制改革法で鉱物の情報公開なのか
「OECD 紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンス・ガイダンスにあるように、紛争地域で天然鉱物資源開発が行われており、これらの地域から調達を行っている企業は、紛争に手を貸してしまうリスクがある、と国際的に認識されています。
「OECD 紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・デリジェンス・ガイダンス」は、鉱物採掘活動を通じて紛争に手を貸してしまう事を回避するためのものですが、強制力はありません。そこで、アメリカでは金融規制改革法(ドッド・フランク法)によって情報公開を義務付けることで、コンゴ民主共和国の武装集団の資金源を絶つことを目的としています。
欧米ではNGOが社会の番犬と言われるように、市民権を得ています。大量虐殺と人道に対する犯罪行為の撲滅をミッションとしたアメリカのNGOのEnough Projectが、電子機器メーカーの紛争鉱物の取組みに関するランキングを発表し、その結果から不買運動や抗議運動にも発展しました。
金融規制改革法によって紛争の資金源となる鉱物の使用は禁止されていませんが、紛争鉱物に関する情報を公開しなければいけないとなると、企業は紛争に関係する鉱物の使用を削減しようとするでしょうし、結果として紛争地域への資金の流入が減少して、紛争に伴う人権侵害を抑制することにつながる、と考えられます。
【参考資料】
経済産業省ホームページ
米国の紛争鉱物開示規制
金融規制改革法第1502条(仮訳)
OECD紛争鉱物ガイダンスに関する関連資料(SEC最終規則にて言及あり)
OECD紛争地域及び高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュ-・ディリジェンス・ガイダンス」(仮訳) 』
『紛争鉱物とCFSプログラム(2)
CFS認定について
[2014年8月1日]
その1では、紛争鉱物とは何か、またその概要について説明しました。
今回は、CFS(コンフリクトフリースメルター)認定について解説します。
■紛争鉱物に関する調査
米国証券取引所に上場しており「紛争鉱物」を製品に使用する企業は、その調達先を調べ、米国証券取引委員会(SEC)に毎年報告し、内容を公開することが、アメリカの金融規制改革法(ドッド・フランク法)で義務付けられました。
E.最終規則を図にまとめたフローチャート
(出典:経済産業省 米証券取引委員会(SEC)による紛争鉱物開示規制に関する最終規則(仮訳・部分抜粋))
■紛争鉱物調査へ対応プログラム
「紛争鉱物」の原産地を調査するといっても、製品には多種多様な部品が組み込まれています。それぞれの部品に使用されている金属が紛争鉱物かどうかを調査するためには、サプライチェーン全体、多数の企業を対象に調査する必要があり、一企業で調査できる範囲には限度があります。
そこで、米国電子業界団体であるElectronic Industry Citizenship Coalition(EICC)と欧州の情報通信関連の業界団体であるGlobal e-Sustainability Initiativeが共同でCFS(コンフリクトフリースメルター)プログラムという、紛争鉱物調査への対応プログラムを開発しました。
このプログラムの特徴は、以下の二点です。
製錬・精製業者は監査を受ける事で、紛争鉱物不使用の製錬・精製業者(=コンフリクトフリースメルター/CFS)であると認定される
認定業者からタンタル・スズ・金・マンガンを調達していれば、そのサプライチェーン全体がコンフリクトフリーであると証明する事ができる
【参考資料】
cfsi(conflict-free sourcing initiative)ホームページ
Conflict-Free Smelters & Refiners(紛争フリー製錬所プログラムと製錬所リスト)【英語】
Frequently Asked Questions (FAQ) on Company Assurance and Conflict Minerals Disclosure(企業の対応措置と紛争鉱物の情報開示に関するFAQ)【英語】
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)ホームページ
一般社団法人 電子情報技術産業協会(JEITA)
※責任ある鉱物調達検討会のページに、企業の対応措置と紛争鉱物の情報開示に関するFAQの仮訳が掲載されています。
経済産業省ホームページ
米国の紛争鉱物開示規制
米証券取引委員会(SEC)による紛争鉱物開示規制に関する最終規則(仮訳・部分抜粋)』
『紛争鉱物とCFSプログラム(3)
OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス
[2014年11月1日]
【その1】紛争鉱物とは何か、またその概要
【その2】CFS(コンフリクトフリースメルター)認定について解説
今回は、米証券取引委員会(SEC)による紛争鉱物開示規制に関する最終規則にて、利用可能なデュー・ディリジェンス・ガイダンスとして記載されている、OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス(以下、ガイダンス)について、ご紹介します。
このガイダンスは、「OECD多国籍企業行動指針」、「OECDガバナンスが脆弱な地域における多国籍企業のリスク管理ツール」の原則や基準と調和した内容で、以下の4つの内容が含まれています。
紛争地域および高リスク地域(以下紛争地域など)からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンスの包括的枠組み
鉱物のモデル・サプライチェーン指針
リスク緩和のために推奨される措置、上流企業が下流企業の支援を受けて行う改善の度合いを測定するための指標
すず・タンタル・タングステン・金に関する補足書
■ガイダンスのポイント
- 目的
企業が人権を尊重し、紛争への加担を回避し、持続可能で公平かつ効果的な発展への貢献を行うようにする事
- デュー・ディリジェンスの必要性
鉱物の採掘、取引や取り扱いは、紛争への資金提供や、紛争環境を助長・促進・悪化させるリスクが高い一方で、企業はそうした悪影響に関与するリスクと切り離されていないため、企業は、紛争地域などで操業する供給業者に関連して生じる悪影響のリスクをすべて特定し、防止もしくは緩和するために、妥当な措置及び誠実な努力としてデュー・ディリジェンスを行う必要がある。
(悪影響には、人に対する危害(外的影響)、評価の失墜または企業の法的責任(内的影響)、あるいは両方が含まれる。)
出典:OECD(2011)OECD紛争地域および高リスク地域からの鉱物の責任あるサプライチェーンのためのデュー・ディリジェンス・ガイダンス、OECDパブリッシング。すず、タンタル、およびタングステンに関する補足書(仮訳)<P34>
- デュー・ディリジェンスを行う主体
鉱物サプライチェーン上にあって、紛争地域などからのすず、タンタル、タングステン、金を供給・利用しているあらゆる企業で、どの企業も人権侵害や紛争には絶対に加担しないようにする事を目的としてデュー・ディリジェンスを実施する必要がある。』