マルコス大統領、経済特区新設を拒否 税源確保優先

マルコス大統領、経済特区新設を拒否 税源確保優先
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0436Q0U2A700C2000000/

『【マニラ=志賀優一】フィリピンのマルコス新大統領が、北部で計画されている経済特区の新設法案に対して「拒否権」を発動した。企業の税制優遇を抑制し、公約であったインフラ投資の財源確保と過去最高水準の債務削減を狙う。

新政権のアンヘレス報道長官は4日、マルコス氏による拒否権行使について「経済特区が地域のためでなく国全体に対して利益をもたらすのか示す必要がある」と説明した。

マニラ首都圏の北に位置するブラカン州では現地財閥大手サンミゲルが主導し、空港とともに税制面などで優遇がある経済特区を新設する計画が進んでいる。マルコス氏は2026年ごろの運用が見込まれる空港新設には賛同する一方、特区新設の法案について議会に対し再検討を要求した。

フィリピンの大統領は法案を認めず修正を求める拒否権を持つ。新政権の発足時には前政権の政策を軌道修正するケースがあり、ドゥテルテ前大統領も就任直後の16年7月に人事制度などに関して拒否権を行使した。

マルコス氏が拒否権を使ったのは初めてとされる。背景にあるのが税収の確保だ。

フィリピンではドゥテルテ前政権から大型インフラ整備計画「ビルド(造れ)・ビルド・ビルド」を打ち出し国内総生産(GDP)の5%前後をインフラ投資に充ててきた。雇用創出につながる同計画はマルコス氏も踏襲すると表明している。

だがインフラ整備のための多額の支出により政府債務残高は5月末時点で前年同月比13%増の約12兆5000億ペソ(約30兆円)と、過去最高水準に達している。ビルド計画継続には安定的な歳入の確保が必須なため、マルコス氏は税優遇を受ける企業の増加を警戒する。

マルコス氏は声明で特区新設の法案について「課税対象を狭めている。国のインフラを維持する十分な税収が確保できなければ、増税や新たな借り入れにより財源を確保せざるを得ない」と指摘した。

さらに法案は「低税率と幅広い課税対象を備えた税制を作る政府の目的に反する」うえ、隣接するパンパンガ州にすでにクラーク経済特区があり「戦略的場所に特区を創設する方針にも反する」としている。既存の法律でも企業は優遇を受けることは可能と指摘し、同国の監査委員会の監査などを通じて法案を精査すべきだとしている。

サンミゲルのラモン・アン社長は4日、政府の決定を尊重するとしつつも経済特区の新設による経済効果は大きいと声明を出した。』