米国、対中制裁関税引き下げ探る 貿易戦争開始から4年

米国、対中制裁関税引き下げ探る 貿易戦争開始から4年
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『【ニューヨーク=鳳山太成、北京=川手伊織】米国と中国が貿易戦争を始めて6日で4年を迎えた。バイデン米政権はインフレを抑制するため対中制裁関税の引き下げを検討している。一方の中国は景気回復や対米関係の安定のために制裁緩和を期待する。米国は台湾や人権などの問題を含めた対中関係全体の中で通商関係をどう修正するか慎重に見極める。
米国が2018年7月6日に産業機械など340億ドル(約4兆6000億円)分の中国製品に25%の関税を上乗せして、貿易戦争の幕が開けた。法律に基づき、関税発動から4年で見直す決まりになっており、米通商代表部(USTR)は5日、対中関税第1弾の是非に関する意見公募を締め切った。

USTRは6日以降も関税をひとまず続けたうえで、今後の扱いを決める。複数の企業は国内産業を保護するため関税継続の要望書をUSTRに提出した。一方、米経済団体はコスト削減のために関税の撤廃を求めている。

最終的にはバイデン大統領の政治判断となる。ジャンピエール大統領報道官は5日の記者会見で「複数の選択肢を検討しているところだ」と述べるにとどめた。

政権内ではイエレン米財務長官らが対中関税の引き下げ論を唱える。衣料品や自転車など消費財に課した関税は、中国の知的財産権侵害をやめさせるという目的を果たしておらず「戦略的ではない」と指摘する。約40年ぶりの物価上昇を記録するなか、米国の消費者の負担になっていると主張する。

一方、対中強硬派は慎重な姿勢を貫く。USTRのタイ代表は5月下旬、日本経済新聞の取材に「中長期で考えなければいけない」と述べ、短期的なインフレ対策のために関税を下げることに懐疑的な見方を示した。

21年10月に再開した閣僚級の米中貿易交渉は目立った成果が出ていない。タイ氏は関税引き下げで交渉力が弱まると懸念する。

11月の中間選挙でインフレ対策が争点となるなか、バイデン氏にとって対中関税の引き下げは政権として取り組める数少ない手段のひとつだ。劇的な効果は望めないが「共和党のトランプ前政権が課した関税を見直した」と有権者にアピールできる。

政権が中国から一定の譲歩を得ずに関税を引き下げれば、野党・共和党から「中国に弱腰」との批判を受けるのは必至だ。このため関税引き下げと同時に、中国への強硬策も練ってきた。

具体的には通商法301条に基づき、中国の不公正な貿易慣行を特定する案がある。半導体など特定産業で過剰な補助金が支給されていると判断すれば追加関税を課す。トランプ前政権は同301条を使って中国の知的財産権侵害を断定し、最終的に計3700億ドル分の中国製品に制裁関税を課した。

米中は対立を深めつつも、偶発的な衝突を避けるため対話を続ける構えだ。バイデン氏は近く中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席と電話で協議する方針だ。イエレン氏は5日、中国の経済運営の司令塔である劉鶴(リュウ・ハァ)副首相と協議したほか、ブリンケン国務長官も週内に王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談する予定だ。

中国は制裁関税の全面的な撤廃を求めている。新型コロナウイルスの感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で悪化した経済の立て直しを急いでいる。最大の輸出相手国である米国向けの出荷が伸びれば、外需が景気回復を後押しする材料になるとの算段がある。

中国は秋に共産党大会を控える。政治的な安定を重視する習指導部にとって、対米関係の安定も欠かせない。双方が制裁関税を見直せば、関係悪化に歯止めをかけるきっかけになるとの期待も見え隠れする。

ただ中国側には警戒感もある。政府関係者は「ビジネスマンのトランプ前大統領は貿易面での要求が明確だった。バイデン大統領の関心はハイテク分野での中国の除外や人権問題にあり、米国がどのように出てくるか見えにくい」と語る。』