フランス、電力公社を100%国有化へ 電力逼迫懸念で

フランス、電力公社を100%国有化へ 電力逼迫懸念で
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『【パリ=白石透冴】フランスのボルヌ首相は6日、国が株式約84%を保有する仏電力公社(EDF)を100%国有化すると発表した。EDFは多額の負債を抱えており、ロシアのウクライナ侵攻に伴う電力逼迫や温暖化への対応を迅速に進めるために必要だと説明した。

ボルヌ氏は国民議会(下院)での演説で「(ロシアとウクライナの)戦争に直面し我々は自立性を保たなければいけない」としたうえで「気候変動対策で大胆な決断をしなければいけない」などと語った。発表を受け、EDF株は一時前日比15%上昇した。2005年に株式公開したが、上場廃止となる。仏経済紙レゼコーによると、株式の買い取りには50億~70億ユーロ(約6900億~9700億円)が必要になる。

フランスの電力生産は原子力が2019年時点で7割を占め、ドイツなどと比べるとロシア産エネルギーへの依存度は低い。それでも6月中旬には独経由のロシア産ガスの供給が止まったことが明らかになり、今年の冬には欧州の電力需給が逼迫する可能性が指摘されている。EDF完全国有化はフランスのエネルギー安全保障の一環とみられる。

温暖化対策についても、現状では政権が掲げる原子力促進計画の実現は資金面でハードルが高かった。マクロン大統領は50年までに原子炉を新たに6基造ると発表していたが、EDFの負債は21年末時点で430億ユーロに上り、事業費を捻出できない懸念があった。

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松尾博文
日本経済新聞社 上級論説委員/編集委員
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分析・考察

欧州は電力・ガス市場の自由化や国営電力会社の民営化で先行し、日本も手本としてきました。しかし、ウクライナ危機はエネルギー安全保障の重要性を再認識させ、フランスは脱炭素へ向かう潮流の下で、安定供給の手段の一つとして原子力の維持を確認しました。加えて市場原理と相反する難しさを持つ原発を運営するための決断が、EDFの全面国有化への回帰です。同じように原発新設を志向する英国は、建設・運営にかかる費用を、事業者がすべて回収できる、事実上の総括原価制度を復活させる方向です。原発をエネルギー供給の一角として維持・推進する以上、そのための推進体制に国が責任を持つ。それは日本も同じです。
2022年7月7日 11:15 (2022年7月7日 11:18更新)』