中国、ハイテクで外資「排除」 中核技術の移転求める

中国、ハイテクで外資「排除」 中核技術の移転求める
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM04A150U2A700C2000000/

『【北京=多部田俊輔】中国政府は業界ごとに製品の技術などを定める「国家標準」で、ハイテク製品での外資排除を拡大する。中核部品を含めて中国で設計、開発、生産をするよう求める。外資企業は中核技術を渡すか、中国市場から事実上撤退するかの判断を迫られる。

中国の国家標準を手掛ける国家標準化管理委員会と品質管理を担う国家市場監督管理総局が4月、複合機やプリンターなどのオフィス機器を対象とした国家標準を刷新する検討に着手した。今年中に意見募集案を策定し、2023年の実施を見込む。将来はパソコンやサーバーにも広がる可能性がある。

半導体やレーザー、設計・開発を国内で

検討の草案によると、半導体やレーザー関連などの中核部品を含めた中国国内での設計、開発、生産を新たに要求した。従来は情報漏洩の防止などの安全技術が柱だったが、中国で完結するサプライチェーン(供給網)の構築を求めた。

通信や情報サービス、エネルギー、交通、金融などの重要情報インフラ企業は国家標準に適合した製品のみを購入することが義務付けられる。

これまで中国は政府調達のリストによって外資のハイテク製品を排除してきたが、国家標準に国産要求を組み込むことで幅広い顧客層で外資排除が広がる恐れがある。複合機の中国市場で政府調達は3割程度だが、インフラ運営企業に加え教育や医療など中国政府が重視する分野を加えると5割を超えるとされる。

日本政府は情報流出を警戒する。経済産業省関係者は「複合機は日本に強みがあり、ネットワークにもつながっている重要な領域だ。設計開発段階でバックドア(裏口)などを入れられる仕組みがわかってしまえば、情報が抜かれるリスクがある」と話す。

「新幹線の二の舞い」警戒

習近平(シー・ジンピン)指導部は18年、技術標準の長期戦略「中国標準2035」の策定に着手した。現在の策定状況は不明だが、ハイテク分野での米中対立を受け、国家標準を使って中国企業の国際競争力を引き上げることを目指しており、今回の標準策定も技術標準の長期戦略の一環とみる向きもある。

外資企業は「新しい国家標準は複合機の利用が多い教育や医療現場に適用される可能性もある」と不安視する。中国の複合機市場は、政府調達に教育や医療分野も含めると全体の半分以上を占めるとみられる。外資企業は中国に中核技術を移転するか、中国市場を手放すかを迫られる可能性もある。複合機の中国市場は90万~100万台とみられ、日本市場よりも4割程度大きいとされる。

外資系企業の中国法人幹部は「新幹線のようになってはいけない」と打ち明ける。中国企業が中核技術を握れば、日本や欧米を含めた世界市場で巨大な国内市場のスケールメリットをテコにして中国企業が販売を拡大する可能性もあるだけに「世界市場を見据えた長期的な戦略が必要だ」(同幹部)。

技術移転で残るか撤退か 日本企業に対応迫る

中国政府がハイテク製品の外資排除を拡大することを受け、中国で事業を展開する日本企業は対応を迫られる。中国での製品流通に使う「国家標準」の刷新により国内での設計や開発、生産を求められ、日本勢など外資企業は競争力の源泉となる中核技術の供与を迫られる。企業は巨大市場の開拓と自国の経済安全保障との間で難しいかじ取りを求められる。

中国当局は複合機やプリンターなどのオフィス機器を対象とする国家標準の改定に向けて検討に入った。オフィス複合機ではキヤノンや富士フイルムビジネスイノベーション(旧富士ゼロックス)など国内大手が中国に工場を持つ。

またセイコーエプソンでは中国の売上高が約1700億円と全体の15%程度を占める。深圳市にプリンターの生産拠点があるが、基幹部品のインクジェットヘッドは日本で開発・製造している。ある事務機メーカー幹部は「競争力の源泉となる技術の移転が求められると大きな影響がある」と警戒する。

オフィス機器企業で構成する一般社団法人のビジネス機械・情報システム産業協会は近く、非公式の会合を開いて対応を協議する見通しだ。国内大手メーカーの関係者は「情報収集を進めているが、(技術移転は)現実的ではない。業界や国としてどう考えるのか、という話だ」と話す。

複合機以外のハイテク製品でも同様の動きが広がる可能性がある。関係者が特に警戒感を強めている分野が医療機器だ。医療機器大手ではシスメックスの中国での売上高が全体の26%を占めるなど、無視できない市場となっている。内視鏡などを主力とするオリンパスは「中国企業とのパートナーシップなどを含め、委託生産や開発連携などあらゆる選択肢を検討する必要性を認識している」と身構える。

一方、生体情報モニターなどを手掛ける日本光電は「国産優遇策の強化はリスクだが、中国では今後も医療インフラの整備が続く。現地開発・生産体制を整えていく予定だ」とし、市場開拓を優先させる意向だ。

パソコンやサーバーなども対象となる可能性があるが、日本企業への影響は限定的となりそうだ。日本の電機大手はすでにパソコン事業を縮小しており、NECが出資するNECパーソナルコンピュータは中国大手のレノボ傘下となっている。またNECは中国ではサーバー事業を手掛けていないという。』