中国、中米諸国に台湾断交迫る ホンジュラスに照準(2021年11月2日)

中国、中米諸国に台湾断交迫る ホンジュラスに照準
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2625G0W1A021C2000000/

 ※ 今日は、こんなところで…。

『2021年11月2日

【メキシコシティ=清水孝輔、台北=中村裕】中国がカリブ海・中米諸国に台湾との断交を迫っている。次の標的は11月28日に大統領選を予定するホンジュラスだ。世界で台湾を国家承認する15カ国のうち8カ国がこの地域に集まる。中国は2022年、北京冬季五輪、共産党大会という重要行事を控え、軍事だけでなく外交でも台湾への圧力を強める。米欧は警戒している。

ホンジュラス大統領選で最有力候補に浮上した最大野党LIBREのシオマラ・カストロ氏は、当選した場合「即座に中国と外交・通商関係を結ぶ」と繰り返す。ホンジュラスは台湾と外交関係を維持しているが、カストロ氏は中国に乗り換える方針だ。

大統領選は当初、首都の市長で与党・国民党のナスリー・アスフラ氏が先行し、テレビ司会者のサルバドル・ナスララ氏、カストロ氏が追う構図だとされた。だが、ナスララ氏が出馬を取りやめてカストロ氏を支持すると表明し、同氏とアスフラ氏の一騎打ちの様相になった。

ホンジュラスの民間団体CESPADの直近の世論調査で支持率は、カストロ氏が38%に伸び、アスフラ氏の21%を引き離した。

断交を明言するカストロ氏の伸長に、台湾は強い危機感を示した。台湾とホンジュラスは21年、外交関係の樹立から80年を迎えた。台湾外交部(外務省)はカストロ氏の発言について「中国は私たちの外交関係が不安定だとの誤った印象を与えるため民主的な選挙を利用している」と訴え、カストロ氏の背後に中国が存在すると示唆した。

中国外務省の汪文斌副報道局長は9月の記者会見でホンジュラス大統領選を念頭に「台湾は中国と不可分だ。(ホンジュラスなどと関係を強めても)台湾独立の動きは必ず行き詰まる」と主張した。当時はカストロ氏の勢いが弱かった。

台湾が警戒するのは、中国が「台湾独立派」とみなす蔡英文(ツァイ・インウェン)総統が就任した16年以降、カリブ海・中米諸国への影響力を強めているからだ。17年にパナマ、18年にはエルサルバドル、ドミニカ共和国がそれぞれ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。

中国の武器はインフラ建設を含む経済支援だ。最近では新型コロナウイルスのワクチン提供を加え、この地域の国々に食い込んでいる。

中国の企業連合は18年、15億ドル(約1700億円)でパナマ運河にかかる4本目の橋の建設案件を落札した。中国はパナマに新型コロナ対策として20年2月~6月、ヘルスケア関連として計200万ドルの支援を実施した。

中国は19年、エルサルバドルに対し、競技場、国立図書館などの建設に計5億ドルを投じると約束した。今後、左派の独裁政権のニカラグア、大統領が暗殺されたハイチなど、経済や政情が安定しない国に台湾との断交を働きかける可能性がある。

これに対し、台湾は「資金力で中国に勝ち目がないとみている」(外交関係者)といわれる。18年には台湾の呉釗燮・外交部長(外相)が「ドル外交はしない」と明言した。中国のように、多額の経済支援を相手国に約束して外交関係を維持する手法はとらない、というわけだ。

台湾は2月、中国と国交のある南米のガイアナに代表機構「台湾事務所」を設立すると発表した。ガイアナは当時、中国と距離を置き始めていた。だが、発表の翌日、ガイアナ外務省は「台湾といかなる外交関係もない。(台湾事務所の設立は)誤解だ」と説明し、事務所の開設計画を撤回した。中国の「台湾封じ込め」は徹底している。

窮地の台湾を側面支援するのは米国だ。7月にホンジュラスを含む中南米諸国へワクチンの追加提供を決めた。10月にはワクチン供給の国際的枠組み「COVAX(コバックス)」を通じ、ニカラグアにも約30万本分のワクチンを提供した。

ワクチンを製造する中国はこの地域で外交関係のある国に積極提供した。だが、台湾はワクチンを十分に確保できず、台湾を承認する国は不満を募らせていた。

カリブ海・中南米諸国は米国の「裏庭」と呼ばれ、同国のサプライチェーン(供給網)や安全保障を確保するうえで地政学上の要衝といえる。米国のトランプ前政権は明確に軽視したが、バイデン政権はこれを改め、ブリンケン国務長官らを派遣してきた。

米ローズ・カレッジのチェンカイ・チェン准教授は「中国が今後、中南米で台湾承認国の多くを切り崩していけば、米国にも大きな打撃だ」と指摘する。

米国と近い欧州諸国にとっても国際社会における中国の勢力拡大と台湾の後退は食い止めたい流れだ。台湾外交部の呉氏は最近、ほぼ2年半ぶりに欧州諸国を歴訪した。欧州側からもフランス議員団が10月に台湾を訪れ、関係強化を試みた。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/As-China-campaigns-to-cut-off-Taiwan-Honduras-looks-next-to-flip?n_cid=DSBNNAR 』

カリブ海のハイチ、長引く元首不在 治安悪化に中国の影

カリブ海のハイチ、長引く元首不在 治安悪化に中国の影
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN0318U0T00C22A7000000/

『【ニューヨーク=清水孝輔】カリブ海の島国ハイチで国家元首が不在という異例の状況が長引いている。2021年7月7日にモイーズ大統領が暗殺されて約1年がたつが、後任を決めるための選挙は実施のメドが立たない。権力の空白でギャング団が台頭して治安が急速に悪化する。中国が政情不安を利用して影響力を強める懸念が高まっている。

ハイチのモイーズ大統領(当時)は21年7月7日未明に自宅で武装集団の襲撃を受け、暗殺された。約2週間後にはモイーズ氏が死去する前に任命していたアンリ氏が首相に就任した。当初は21年9月に大統領選を実施する予定だったが、事件後に無期限での延期が決まった。暗殺から約1年間がたった今でも選挙の日程すら決まっていない。

大統領の座が空席のまま、権力を握るのはアンリ氏だ。21年9月に暫定選挙管理委員会(CEP)の全委員を解任した。アンリ氏は大統領暗殺に関与した疑いで検察から捜査を受けていた。事件の全容は明らかになっていないが、元首不在という現在の状況はアンリ氏に有利だという見方がある。

大統領暗殺で情勢が不安定になる中、ギャング団が力をたくわえ治安の悪化に拍車をかけた。ギャング団は燃料の供給を支配し、輸送を妨害して混乱を広げている。国民に必要な燃料が行き渡らない状況が続いており、21年12月には市民が輸送中のタンクからガソリンを盗もうとして爆発に巻き込まれる事故も起きた。

治安の悪化は危機的な水準に陥っている。国連人道問題調整事務所(OCHA)によると、ギャング団の関与で5月下旬までの約1カ月だけで少なくとも188人が死亡した。犠牲者のうち半分はギャング団に所属しない一般市民だ。多くが、身代金目的に誘拐され、殺害された。また、ハイチの人権団体、人権保護全国ネットワークによると、6月上旬までの約1年間で44人の警察官が殺害された。

治安悪化は経済に大きな打撃をおよぼす。ハイチの製造業系の経済団体ADIHによると、治安の悪化によってハイチに生産拠点を置く企業が撤退すれば、1万人近くが工場などでの仕事を失う可能性があるという。ADIHエグゼクティブ・ディレクターのソフィア・リブル氏は「企業が代わりの生産地を探し始めることを懸念している」と指摘する。産業空洞化と治安悪化の悪循環に陥りかねない。

政情不安に、地域での影響力拡大をねらう中国がつけいることも懸念されている。ハイチは、台湾と外交関係を結ぶ14カ国のうちの1つだ。中国の戴兵国連次席大使は2月、「ハイチの国民が安定した生活を取り戻せるように、政治指導者に緊急事態という危機感をもって統治する責任を果たすように求める」と述べた。

米国は、中国の動きに神経をとがらせている。台湾を支援する議員連盟に所属するトム・ティファニー氏ら複数の下院議員が21年、ブリンケン米国務長官に対し、中国がハイチの大統領暗殺に乗じて同国に関与を強める動きを警戒するよう求めた。

中国は台湾と外交関係を持つ国々に対して経済支援を打ち出して、台湾との断交を迫ってきた経緯がある。中米・カリブ海諸国では17年にパナマ、18年にエルサルバドルとドミニカ共和国、21年にニカラグアが台湾と断交した。

経済と治安の悪化に直面するハイチが欧米から十分な支援を受けられなければ、同様の道をたどる可能性がある。』

米軍F35、韓国軍と訓練 北朝鮮抑止へ4年半ぶり展開

米軍F35、韓国軍と訓練 北朝鮮抑止へ4年半ぶり展開
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM056UZ0V00C22A7000000/

『【ソウル=甲原潤之介】韓国国防省は5日、米空軍の最新鋭ステルス戦闘機F35が6機、朝鮮半島に展開したと発表した。韓国空軍と14日まで共同訓練を実施する。韓国の聯合ニュースによると米軍のF35が韓国に来るのは2017年12月以来。北朝鮮による7回目の核実験を警戒し、米韓同盟の抑止力を示す。

在韓米軍は5日、米アラスカ・アイルソン空軍基地所属のF35が韓国に到着したと発表した。韓国軍のF35を含む複数の機種と共同飛行する計画だという。「訓練によって米韓の空軍の相互運用性を高める」と説明した。

F35は相手のレーダーから探知されにくくするステルス性能を備え、高い戦闘能力を持つ最新型の戦闘機だ。北朝鮮との非核化交渉が本格化した18年以降、米軍は朝鮮半島でこうした最新機種を交えた高度な共同訓練を控えていた。

近年は北朝鮮が核・ミサイル開発を再び活発化させ、米韓も訓練を増やし始めた。6月には韓国軍の戦闘機16機に米軍のF16戦闘機4機が加わって共同飛行した。

米軍は17年にF35を展開した際、F22戦闘機や長距離爆撃機も投入し大規模な軍事演習を実施した。北朝鮮が核実験に踏み切れば、米国が17年のような大規模な対処に乗り出す可能性がある。

バイデン米大統領と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は5月の会談で、北朝鮮への抑止力強化や軍事演習の拡大に合意した。6月には4年9カ月ぶりの日米韓首脳会談も開き、対北朝鮮での共同対処を申し合わせた。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料 https://www.nikkei.com/r123/?ak=https%3A%2F%2Fwww.nikkei.com%2Farticle%2FDGXZQOGM056UZ0V00C22A7000000&n_cid=DSPRM1AR08 』

マルコス大統領、中国外相と会談へ 融和姿勢修正も

マルコス大統領、中国外相と会談へ 融和姿勢修正も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM058JL0V00C22A7000000/

『【マニラ=志賀優一】フィリピンのマルコス新大統領は5日、中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相と会談すると発表した。領有権を巡り対立する南シナ海問題についても議論するとみられる。中国側から訪中を要請する可能性もある。

マルコス氏は同日、新政権で初めて開いた関係閣僚との会議後に記者会見を開き、6日までフィリピンを訪問する予定の王氏と会談することを認めた。具体的な時間などは公表しなかった。マルコス氏は「議題は両国の関係強化に加えて両国間にある対立を解決する方法を探ることになるだろう」と話した。

マルコス氏は大統領選当選後の5月に「我々の権利を1平方ミリメートルも踏みにじることを許さない」と発言するなど領有権問題を重視する姿勢を打ち出している。経済協力を優先したドゥテルテ前政権が貫いた対中融和姿勢を修正する可能性がある。大統領に就任した6月30日には林芳正外相と会談し、対中国を念頭に法に基づく海洋秩序の維持・強化へ協力することで一致した。

地元報道によると、中国はマルコス氏に対し習近平(シー・ジンピン)国家主席からの招待として訪中を要請するとみられる。

マルコス氏に対しては欧州連合(EU)のミシェル大統領も訪欧を要請したほか、バイデン米大統領も訪米を要請したとされる。フィリピンによる米中との関係構築の動向次第では南シナ海の安全保障体制に影響を及ぼす可能性があり、初の外遊先をどこに選ぶかに注目が集まる。

閣僚との会議では、食品価格の高騰に対処することや年内に教育機関で全面的に対面授業を再開することなどを議論した。』

中国の一帯一路構想に関する疑問(スリランカコロンボ通信)

中国の一帯一路構想に関する疑問(スリランカコロンボ通信) : タフツ大学フレッチャースクールにて国際関係を考える(Thinking about International Relations at Fletcher school of Tufts)~経済産業官僚の日記~
http://blog.livedoor.jp/bostoninter2/archives/28595133.html

『人生初のスリランカからお届けいたします。Colombo Villaというインテリアが素敵なホテルに宿泊して、インドで働いているフランス人の英語の先生と2時間ほど会話しながら朝御飯を食べ終えたところです。新しい人に会えるのが旅の醍醐味です。

今回は、私の卒業論文とも関係がある「一帯一路」構想に関してです。大学の先輩かつ広い意味での職場の先輩から以下の質問をいただきましたので、考えていきたいと思います。

1.中国のインフラ開発プロジェクトは採算性があるのか?

2.中国にとってもホスト国にとっても継続性が期待できる事業なのか?

3.どのぐらいホスト国である中国がプロジェクトの管理に対して口出しをできる余地を残せるのか?

1.中国のインフラ開発プロジェクトは採算性があるのか?

1に対するシンプルな回答は、「採算性が無かったとしても中国が損切りをすることはない」 というものです。中国のインフラ開発は、日本のインフラ開発=「面による開発」に似ているといわれます(これに対してヨーロッパや国際機関は点による開発を指向)。以下、中国のインフラ開発の底本「チャイナズ・スーパーバンク」から引用します。

アフリカ諸国は西側の援助を効率的に使い始め、政治的にも民主化が進みつつあった。次のステージは、インフラの整備と産業の工業化に対する需要の高まりである。しかしアフリカにはインフラを整備する技能がないし、西側諸国にもない。西側諸国はその手の投資には何年も前に背を向けていた。「西側には短期間で大規模な都市化の建設プロジェクトを完成させた経験がない。彼らは、道路を一本通すだけでも十年はかかると言うだろう」とユーは言ったそうだ。(中略)

中国のアフリカヘの援助は1956年に始まったが、それは発展途上国の旗手になりたいという毛沢東の野心から生まれたものだ。1970年代は国家解放運動の支援が中心であるが、70年代半ばには中国は米国のアフリカ向け援助プロジェクト数を上回るほどになっていた。ところが1980年代になるとアフリカの重要性は縮小してしまったが、1989年の天安門事件後は、途上国とアフリカは中国の政策にとって以前にも増して重要になった。「中国のアフリカ援助の特徴はヒモ付きではないこと。内政干渉ではないこと。そしてインフラの建設に的を絞ることである」と中国商務省の外国援助部の副部長だったワン・チョンアンは、中国の外国援助方針に関する方針を一字一句違わずに引用してくれた。

(中略)

陳元が三峡ダムプロジェクトで学んだことは、ダムがあれば電気ができるし、できた電気は売れるのだ。2011年2月にコンゴにおいて、中国開銀は道路網と鉄道網、さらに鉱業、エネルギー、農業および製造業の改善に関する合意書に調印した。このようにプロジェクトをパッケージ化することによって、中国開銀は融資が成功する条件を創りだすことができるのだ。もしひとつのプロジエクトがうまくいかなくても他のプロジェクトで補える。陳元が中国の地方政府融資に関して「パッケージ型融資はキャッシュ・フローを調整し、特定されたリスクを軽減することを狙ったものだ。そして、良いプロジェクトをさらに良くし、是正しなければならないプロジエクトを改善するためのものだ」と言っている。

(チャイナズ・スーパーバンク ヘンリーサンダースン P180-182)

一帯一路というのは、中国が個別の途上国に対して過去におこなった開発事業をパッケージ化して今後の方向性を示したものだと多くの識者が指摘しています。そういうわけで、一帯一路というバズワードに踊らされることなく、そもそも中国のインフラ開発の在り方を知る必要があります。

上の例以外にも、道路網や鉄道網の単体開発で問題になるのが、土地収用になります。鉄道は鉄道単体ではなく、周囲の土地収用とセットでおこなうのが中国の特徴です。鉄道の近くの地価上昇も見越して地域の面的開発を目指します。これも日本に見習った知恵で、日本も鉄道会社は運送事業のみではなく、駅ビル事業や不動産事業から多くを稼いでいます。これに関しては、ODAに詳しいJICAの山田審議役(2015年当時)の言葉をお借りしたいと思います。

我が国の大都市では鉄道や地下鉄が整備され、多くの市民が通勤や通学に利用をしている。軌道系の鉄道は都市の骨格と言えるもので、その沿線開発によって都市が発展する。日本では50万人都市となったら地下鉄の整備が当たり前のようになされ、都市の渋滞緩和や沿線の住宅開発を行ってきた。そうした意味で日本の鉄道投資は、沿線の開発などを事業効果と捉え、都市の発展の骨格を作るといった長期的なビジョンに立って投資される。

同じ考えで、我が国はアジアの都市圏における鉄道整備を進めてきた。アジアの大都市では人口が500万人であっても軌道系の公共交通手段を持たない都市が多い。円借款においてはソウルの地下鉄1号線の整備に始まり、ジャカルタのジャボタベック(首都圏)の鉄道整備、マニラの通勤線、バンコクの地下鉄に対して継続的に円借款を供与してきた。最近ではインドのデリー、ムンバイなどの主要都市での地下鉄、ジャカルタ、ハノイ、ダッカなどでのMRT (都市鉄道などの大量高速輸送)の建設が続いている。

これに対し、世界銀行のエコノミストは、「鉄道への初期投資は、財政状況の良くない途上国政府にとっては多大な負担を強いる」としてその整備に反対した。筆者がジャカルタの都市交通を担当していた1980年代当時のことである。鉄道は初期投資に大規模な資金が必要であるが、途上国の公共交通では乗客から高額の運賃を取れないので初期費用を回収できないというのだ。また、「鉄道の運営・管理は高度な技術が必要で、そうした技術は途上国にはない」とも言う。今から考えればインドネシアに失礼な話である。その代わり推奨されるのが、建設費が鉄道に比べ半分以下で整備できるBRTと呼ばれるバス専用レーンの整備である。確かに建設費は鉄道の半分以下で済む。しかしながら、問題はその輸送力である。鉄道の輸送量が1時間に一方向で3万人から5万人とされるが、BRTは1万人から2万人がせいぜいである。

これに対しては、筆者は「確かに運賃だけでは初期投資は回収できない。しかしながら、沿線の住宅開発や駅前広場の商業施設など、長期的に考えれば、経済全体にプラスであり、有効な投資だ」と反論した。日本の私鉄会社も運賃だけでは赤字の場合が多く、沿線の不動産やターミナル駅のデパートなどで収益を上げている。

その時の議論は平行線で終わった。結局、米国ワシントンDCで車通勤しか経験していない世界銀行職員、特に米国出身者には、アジアの大都市における鉄道の役割が皮膚感覚として分からないのだと、思ったことが印象に残っている。しかし、世界銀行も最近では鉄道の社会的なインパクトに気づいてきている。2015年には世界銀行の都市交通エコノミストが、東京や香港での鉄道開発の事例を紹介し、沿線の土地の値上がりや利用価値の増大によって鉄道開発の資金を賄うという発想に転換してきている。(新興国のインフラを切り拓く 戦略的ODAの活用山田順一 P14-21)

上記の例は、かつての国際機関と日本の開発姿勢の違いを述べたものです。現在では両者とも鉄道の沿線の土地開発が現地の利益に結びつくように企画提案をしています。しかし、中国の場合は沿線の土地を含めて自国の資産にする土地収用は必要不可欠という考えなので、インドネシアの新幹線事業では沿線の住民の反対によって土地収用が思うように進まずに、新幹線の事業の着工の遅れが生じるという事態が生じています。ミャンマーでも本来は既にガス/石油パイプラインが通っている昆明⇔チャオピュー間に、鉄道を敷設したいと中国側は考えていましたが、ミャンマー側が近隣住民の理解が得られないということで反対したため実現していません。

このようなわけで、中国は決して損が出るような形で事業を実施することはないと思います。

2.中国にとってもホスト国にとっても継続性が期待できる事業なのか?

私も「継続性(sustainability)」というのは研究の1つのキーワードにします。「継続性」というのはケインズの言う不況時に穴を掘って埋めるというような後の世代に役に立たない一時的な経済・雇用効果しかない単発の短期事業ではなく、効果が持続するような長期事業になります。例えば、スリランカのハンバントタ港(Hambantota port)はShort-term projectで継続性が期待できないとして(アメリカ、ヨーロッパ、日本、国際機関等の)批判を集めています。しかし、この「継続性」という言葉は先進国の押し付けがましい概念であることがポイントです。途上国が、効果が持続しない短期事業を求めている場合にも、先進国は途上国のニーズを無視して「継続性」がないという理由のもとに切り捨ててきたのが実態です。

ハンバントタ港は、そもそも長期的な利益を生む商業港としてではなく、燃料補給港というShort-term projectとして作られたものです。このようなスリランカの要求に対して、 ADB、世銀、JICAは「継続性」が無いと言って融資をしなかったため、中国が唯一の支援元(donar)となってしまったのが事実です。中国はもともとハンバントタ港を海のシルクロードの地政学的要衝として狙っていてスリランカをうまく丸め込んでファイナンスをおこない、結果として99年の港の使用権を得たという陰謀説が流布しています。これは、あくまでも中国に敵対する国家に都合のいい情報に過ぎません。真実はスリランカが実施したい事業が始めにあって、それを中国しか受注しなかったというものです。そもそも国際機関か日本が融資を請け負っていたら、このような事態にもならなかったのです。

(情報元は、スリランカ人Thilini KahandawaarachchiのPolitics of ports China’s investments in Pakistan, Sri Lanka & Bangladeshという論文より。本論文は中国に敵対する欧米メディアによる中国の開発批判に対する反論を試みていて被援助国の立場を明らかにしている)
sha
(日経新聞2017年6月8日より)

3.どのぐらいホスト国である中国がプロジェクトの管理に対して口出しをできる余地を残せるのか?

退屈な模範解答は、「プロジェクトの開始時期、主体、動機により大きく異なる」というものです。

マダガスカルでJICAに勤務する友人からいただいた以下の情報が参考になります。

「途上国、特にアフリカ側から見ると、大統領の任期中にさっさと完成するインフラは助かります。その後債務に苦しむのはたいてい別の大統領ですから。残念ながら真面目に次世代のこと考えてる人は多くないですからね。短期と長期で何を大事にしたいかで、アフリカが誰を選ぶかは変わってきますよね。

それから、中国と一言でいっても政府資金なのか、マフィアのような民間が勝手にやってるのかは全然違うようです。マダガスカルでも中国政府として中国企業の動きは全部追いきれない、と、半ばため息気味でした。政府がグルなケースと勝手にやられてるケースと色々あるようで、その点中国政府も大変だなぁと横目で見てました…」

プロジェクト開始時の大統領/次の大統領、政府資金/民間資金、得票行為/継続的な地域の発展等の対立軸を準備すると中国のプロジェクトが見えやすくなってくると思いました。しかし、これは1つ1つのプロジェクトをつぶさに見ていかなくてはならないので、時間がかかります。例えば、スリランカのハンバントタ港の例ですと、中国交通建設集団(CCCG)がスリランカ政府の政策を実行する実施者(implementer)から政策決定に関与する政策影響者(influencer)になった変化や、2006年以降はCCCG本体ではなく中国港湾工程がプロジェクト推進主体になったことは見過ごせません。 (中国の一帯一路構想は「相互繁栄」をもたらす新世界秩序か? 榎本俊一P46より)

他方で、大きな傾向としては、中国政府も最近になって、上記のマフィアのような民間が勝手にやっている一部事業(不動産、ホテル、映画館など)への取り締まりを強化して、対外事業を積極的に管理していく方針を出しました(2017年8月18日付)。というわけで、今後は中国政府が主体的に管理する一帯一路構想上に位置付けられた事業が増える流れにあります。

<出典:JETRO通商広報 対外投資を奨励、制限、禁止の3分野に明確化(中国)より>

https://www.jetro.go.jp/biznews/2017/09/a5db0aa2bcb07742.html

というわけで、中国がプロジェクトに口出しできる余地は、プロジェクト毎に異なりますが、一帯一路上のプロジェクトに関しては政府が主体的に介入しようとする流れが出来つつあります。

個別プロジェクトの調査に関しては、是非とも霞が関の各省や政府系の独立行政法人殿に委託事業でおこなっていただいて、オンラインで調査結果を公表して欲しいものです。情報が限られているものが多いので困難だとは思いますが、多くの一帯一路構想研究者に便益があると思われます。AEI (アメリカンエンタープライズ)やCSIS(戦略国際問題研究所)も同様のことを進めようとしていますが、個別プロジェクトの詳細情報がまとまっていないのが現状です。私も現地の新聞情報やネット情報から以下のような個別プロジェクトの詳細情報を作ろうと思っていますが、 1人の作業では限界があるのが現実です。

Capstone Thesis Image

一帯一路構想や中国の個別プロジェクトに関して、意見・情報がある方は共有いただけますと幸いです。

See you soon from Colombo. 』

ミャンマー、中国と一帯一路推進 政変後初の国際会議

ミャンマー、中国と一帯一路推進 政変後初の国際会議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM0344B0T00C22A7000000/

『【ヤンゴン=新田裕一】中国とメコン川流域5カ国は4日、国軍が全権を掌握したミャンマーの観光地バガンで経済協力を話し合う外相会合を開いた。クーデター以降、ミャンマーで閣僚級の国際会議が開かれたのは初めてで、国軍は「政権が認められた」とアピールする。中国の王毅(ワン・イー)国務委員兼外相との二国間会談では、広域経済圏構想「一帯一路」の推進などで一致した。

4日に開かれたのは「瀾滄江(らんそうこう)―メコン川協力(LMC)」の外相会合。東南アジア諸国連合(ASEAN)特使としてミャンマー訪問中のカンボジアのプラク・ソコン副首相兼外相のほか、タイ、ラオス、ベトナムの外相も出席した。ゾーミントゥン国軍報道官は1日の記者会見で「(軍事政権のもとでの)国家主権が認められたということだ」と語った。

LMCは2015年、中国主導で設けられた枠組みで、東南アジア最長の河川であるメコン川流域のインフラ開発などを話し合う。瀾滄江はメコン川上流の中国名だ。

王氏は3日、ミャンマー国軍が外相に任命したワナマウンルウィン氏と個別会談した。中国の支援でインフラ整備を進める「中国・ミャンマー経済回廊」の建設を加速することや、両国間の送電網を接続させる計画を進めることなどで合意した。

王氏はプラク・ソコン氏とも会談し、ミャンマーの政治情勢について①ミャンマーの憲法と法律の枠内で政治的和解を促す②ミャンマーの国情に即した民主体制移行の道を探る③ASEANが内政不干渉の原則を堅持する――ことなどを求めた。

ミャンマーでは、中国との国境のシャン州から第2の都市マンダレーへの鉄道建設が計画されている。国軍当局は6月中旬、事業化に向けた手続きの一環で、環境への影響に関する意見募集を始めた。総事業費は89億ドル(約1兆2000億円)とされる。

中国の国営メディアは5月、雲南省大理市とミャンマーとの国境にある同省瑞麗市を結ぶ鉄道敷設で、難所だった6本のトンネルの掘削が完了したと伝えた。将来はミャンマー西部のインド洋沿岸部まで路線を延伸し、中国主導で整備する港湾と接続する構想だ。

ただ、ミャンマーでは国軍に対する民主派勢力の武力抵抗が続いており、中国が大規模なインフラ事業に着手できる状況ではない。ミャンマー戦略・政策研究所のナンルウィン氏は「事業実施に向けた調整は続けているものの、治安情勢や対中感情の悪化で、中国政府は慎重になっている」と指摘する。3日の二国間会談でも、大規模インフラ事業への言及はほとんどなかった。

中国の万宝鉱業が運営するミャンマー北西部ザガイン地域のレパダウン銅山周辺では、民主派勢力の複数の武装グループが国軍の守備隊への攻撃を繰り返している。万宝は6月下旬、「従業員が危険にさらされる」として攻撃を強く非難する声明を出した。

【関連記事】

・ミャンマー軍政、強硬崩さず ASEAN特使訪問も手詰まり
・中国外相、東南ア訪問開始 米中首脳協議前に孤立回避へ 』

[FT]日本・韓国・豪州・NZ、中国警戒でNATOに接近

[FT]日本・韓国・豪州・NZ、中国警戒でNATOに接近
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB041TY0U2A700C2000000/

『マドリードで6月最終週に開かれた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議には、軍事同盟の通常の地理的範囲のはるかかなたにある日本、韓国、オーストラリアとニュージーランド(NZ)の首脳が招待された。

岸田首相㊧ら日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳は、NATO首脳会議に初めて参加した=ロイター

米国と同盟を結ぶ4カ国が初めて参加しサイバー防衛や海洋安全保障における協力でNATOと合意したことは、各国がロシアのウクライナ侵攻や威圧的行動を強める中国の台頭への警戒感を裏付けている。

「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分」

重要な参院選の選挙戦を中断して首脳会議に出席した岸田首相は、この動きは各国首脳が欧州とインド太平洋の安全保障は「不可分」であることを理解したことを示していると述べた。

また岸田氏は「ウクライナは明日の東アジアかもしれないと強い危機感を抱いている」とも述べ、将来はアジア太平洋のパートナー国がNATO首脳会議に「定期的に」参加すべきだと主張した。

NATO加盟国も中国の意図への懸念を共有している。首脳会議で採択された今後10年の行動指針となる「戦略概念」で、初めて中国を「体制上の挑戦」と明記した。

一方、中国はNATOと4カ国との関係強化を警戒している。

中国外務省の趙立堅副報道局長は「NATOがアジア太平洋に触手を伸ばしてきた」と批判し、地域の平和と安定を脅かす試みは「失敗する運命にある」と述べた。

中国はアジア版NATOの結成に繰り返し反対を表明してきた。安全保障の専門家は、域内各国の利害が大きく異なるうえ、中国との経済的結びつきが強いので結成の可能性は非常に低いと考えている。

だが、NATOと4カ国の関係強化の背後には、米国との個別の同盟だけでは安全保障面で不十分だとの懸念がある。日本と韓国から米軍を撤退させると脅したトランプ前大統領の「米国第一主義」で各国の米国への信頼は低下した。

中国への抑止力強化のための選択肢を拡大

さらにロシアのウクライナ侵攻と、中国が台湾に侵攻するのではないかとの恐れが、抑止力強化のため複数の選択肢を持つ必要があることを示唆している。

広瀬佳一防衛大学校教授(国際政治学)は「米国との同盟だけでなく、NATO加盟30カ国についても考慮する必要が出てくると、中国にとっては計算が複雑になる」と指摘した。

ある米政府関係者は、米国が日本など4カ国のNATO首脳会議への参加を働きかけたと明らかにした。中国に対抗するため価値観を共有する国との同盟関係の構築や拡大を目指すバイデン政権の戦略の一環だという。

またこの関係者は、2024年の米大統領選で自国との同盟を重視しない候補者が当選した場合に備え、日本が中国から身を守る保険として安全保障関係の拡大と多角化を望んでいるとも指摘した。「日本は米国との関係以外で安全保障能力を構築しようとしている」

米戦略国際問題研究所(CSIS)の日本専門家クリストファー・ジョンストン氏は、岸田氏がロシアのウクライナ侵攻にとりわけ危機感を覚えており、欧州とNATOに中国からの挑発にもっと気を配ってくれるよう望んでいると述べた。

また最近まで米国家安全保障会議で対日政策を担当していたジョンストン氏によると岸田氏は昨年来、英国とドイツにインド太平洋への海軍の展開を働きかけており、「関係の多角化という大きな考え方に合致する」という。

5月に就任したオーストラリアのアルバニージー首相はマドリードの首脳会談で、NATOとパートナー国が中国を「仮想敵」とみなしているとの非難を一蹴した。
「中国は現実を直視し、ロシアの行動の非難を」

同氏は中国がロシアと「無限の」友好関係を持ち、ウクライナ侵攻を非難していないと指摘し、「中国は起きていることと世界中で表明されている決意を直視し、ロシアの行動を非難しなければならない」と述べた。

首脳会議が国際舞台デビューとなった韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、同国が安全保障でより大きな役割を果たすと約束し、「韓国とNATOの協力関係は連帯の礎となる」と述べた。

また首脳会議に合わせて尹氏、岸田氏とバイデン氏がほぼ5年ぶりとなる3カ国首脳会談を行った。尹氏は歴史認識や貿易をめぐり大幅に悪化した日本との関係を改善する意欲を示した。

ロシアのウクライナ侵攻前から、中国の軍事的野心の封じ込め方法について懸念が存在し、アジアでは日米豪印4カ国でつくる「クアッド」などいくつもの安全保障枠組みが生まれていた。米英豪3カ国の「AUKUS(オーカス)」のもとでは英米がオーストラリアの原子力潜水艦配備に協力する。

これらの多国間安全保障枠組みや既存の二国間防衛協定は、最近バイデン氏が発表した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」などの経済圏構想によって補完される。

国際基督教大学のスティーブン・ナギ上級准教授は、NATOと新たなパートナー間の協力には限界があると指摘した。

「NATOはロシアを押し返すためのあらゆる外交的、経済的また資源開発への投資を歓迎するだろう」と同氏は話した。「だが加盟国が韓国、日本、オーストラリアやニュージーランドを仲間に入れ、同等の立場で席に着きたいと思うだろうか。確信は持てない」

By Kana Inagaki, Nic Fildes and Demetri Sevastopulo

(2022年7月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

スリランカ首相 「8月末までにIMFへ債務再編計画」

スリランカ首相 「8月末までにIMFへ債務再編計画」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB05D370V00C22A7000000/

 ※ 『「破産国家として協議に参加しているため、以前より交渉は困難で複雑になる」と述べた。』…。

 ※ 「破産国家」であることを、自認しているわけだ…。

 ※ 「対中国債務」は、どういう扱いになったんだろうな…。

『【ニューデリー=時事】深刻な経済危機に見舞われているスリランカのウィクラマシンハ首相は5日、議会で演説し、国際通貨基金(IMF)に対し、金融支援を得るための債務再編計画を8月末までに提出すると表明した。

地元メディアやロイター通信によると、同氏は最大都市コロンボで6月下旬に行われたIMFとの対面協議が成功裏に終わったとの認識を示した上で、「破産国家として協議に参加しているため、以前より交渉は困難で複雑になる」と述べた。

スリランカは外貨不足により生活必需品が不足。激しい物価上昇にも見舞われ、6月のインフレ率は前年同月比で54.6%に達し、9カ月連続で過去最高を更新している。』

米国・サウジ「盟約」限界 バイデン氏、原油求め訪問へ

米国・サウジ「盟約」限界 バイデン氏、原油求め訪問へ
石油と安保巡る戦略的互恵、脱炭素で見直し急務
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB290KT0Z20C22A6000000/

『米国のバイデン大統領が15~16日、サウジアラビアを訪問する。ウクライナに侵攻したロシア包囲網強化へ、ほぼ唯一原油の増産能力を持つサウジの協力を引き出したい立場だ。人権を重視する米国内のリベラル派からの圧力も強まるなか、77年続いた石油と安全保障を巡る「盟約」は書き換えを迫られている。

ムハンマド皇太子㊧とバイデン大統領はお互いを必要としている=AP

「今回も何か嫌がらせを企てているのでは?」。米政府関係者が気をもむのが2016年のオバマ大統領訪問時の光景が再現される可能性だ。

6年前、首都リヤドの空港に降り立ったオバマ氏を迎えたのは地元知事とひとにぎりの関係者。サルマン国王も現皇太子のムハンマド王子も姿をみせなかった。対立するイランへの制裁を解除したオバマ氏への不満を露骨な冷遇で示した。

サウジは、蜜月と呼ばれたトランプ前政権時代と打って変わり、人権問題に厳しい目を向けるバイデン氏に不信感を抱いている。

18年に起きた政府批判の記者殺害事件に皇太子が関与した(サウジ側は否定)ことを念頭に大統領候補時代のバイデン氏はサウジを「パリア(のけ者)として扱う」と発言していた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、皇太子は21年9月、サウジを訪れたサリバン米大統領補佐官との会談で、記者殺害事件が話題にのぼるや声を荒らげて怒り、増産要請を突っぱねたという。米当局者は報道を否定したが、関係者によると「会談は友好的とほど遠いものだった」。

「皇太子に会いに行くのではない。国際会合に出る。そこに彼が参加する」。国内のガソリン価格引き下げのため皇太子に増産を頼み込むのではないか。そんな批判を意識するバイデン氏はあくまで地域機構の首脳会議の席で皇太子と会うと主張する。会談の形式をめぐる調整、駆け引きが続いている可能性がある。

米欧の反サウジ感情の根強さを示したのが、男子ゴルフの新ツアー「LIV招待」だった。サウジの政府系ファンド、パブリック・インベストメント・ファンド(PIF)がスポンサーとなり、6月に英ロンドン郊外で始まった。

総額2億5500万ドル(約350億円)という破格の賞金で、22年は世界各地で8大会を予定している。猛反発したのが日程をぶつけられた米PGAツアーだ。
サウジがスポンサーとなったゴルフのLIV招待は批判を招いた(6月11日、英ロンドン郊外)=ロイター

コミッショナーのジェイ・モナハン氏は「お金のためにわれわれに背を向けた」と、LIV招待に参加したフィル・ミケルソン選手(米国)らのPGAツアー参加資格を停止すると発表した。

米英の著名なスポーツキャスターや選手が、記者殺害事件や人権問題を蒸し返した。事件で地に落ちた評判を回復させようとしたサウジのイメージ戦略は、まったくの逆効果となった。

投資規模5000億ドルの巨大都市建設や英サッカークラブの買収――。ポスト石油時代を前に民間主導の経済づくりを目指すはずだった皇太子の改革は、派手なイベントやメガプロジェクトばかりが目立ち、混迷を深めている。

「あり得ない組み合わせの結婚」と評される米サウジ同盟の始まりは、1945年、ルーズベルト大統領がヤルタ会談の帰路、初代アブドルアジズ国王と会談したことにある。

民主主義のリーダーと閉鎖的な王制国家のあいだの、石油と安保をめぐる戦略的な互恵関係は77年続いた。石油の時代の終わりが近づくなか、矛盾をはらんだ関係は見直しを迫られる。

英王立国際問題研究所のニール・キリアム氏は「米国にとってサウジの価値は個人的な好き嫌いを超える重要性を持つ」と指摘する。

中間選挙を前にインフレ対策に躍起のバイデン氏と、次期国王としての威信を取り戻したい皇太子。ウマの合うはずもない両者は結局、お互いを必要としている。

混迷するサウジの改革を本来の軌道に戻し、民主主義陣営に取り込むための同盟の書き換え。それはサウジと地域、世界にとっての利益となる。

(編集委員 岐部秀光)

【関連記事】

・バイデン氏、湾岸産油国に増産促す 7月のサウジ訪問で
・サウジ皇太子、中東歴訪 米大統領訪問控え結束強調
・米サウジ、修復へトップ会談 記者殺害究明「棚上げ」 
・[FT]ゴルフツアーにもサウジマネー イメージ向上目指す 』

[FT]ウクライナ正教会、侵攻祝福のロシア正教会から独立

[FT]ウクライナ正教会、侵攻祝福のロシア正教会から独立
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB044690U2A700C2000000/

 ※ ちーとも、「オーソドックス(正統)」じゃなくなって来たな…。

 ※ まあ、「カトリック(普遍)」から「プロテスタント(抗議する人)」が生まれたわけだから、「オーソドックス(正統)」からも何かが生まれるんだろう…。

 ※ 対義語で、「ヘテロドックス(異端)」というものがあるが…。

 ※ お互いを「異端であーる。」と罵り(ののしり)合うのだけは、願い下げだ…。

『ウクライナ正教会の高位聖職者であるロンジン府主教が6月上旬、ロシア正教会トップのキリル総主教を批判した日曜礼拝での説教は手加減がなかった。
イースターの祭事を執り行うウクライナ正教会の高位聖職者=Sipa via AP Images

ロンジン府主教はかつて礼拝のたびに、自身の教会の親組織であるロシア正教会のトップのため、祝福の祈りをささげていた。

ところが今では、「人々が命を落とし、血が流れていること、我々の修道院や教会を爆撃していること、虐殺を祝福したこと」を巡り、プーチン・ロシア大統領によるウクライナ侵攻を支持するキリル総主教を痛烈に批判している。

「すべての母親の涙、新たに掘られた墓のために、あなたは主なる神に答えなければならない」とロンジン府主教は述べた。「あなたはウクライナ正教の世界全体を傷つけ、我々に痛みをもたらした。正当化しようとしてはならない」

キリル総主教に対する激しい批判は、ウクライナ最大の宗教組織の一つで戦争前はロシア文化の牙城だったウクライナ正教会における激変ぶりを示している。大部分がロシア語を話す司祭と教区民が今ではロシアを拒絶し、ロシア政府が「兄弟国」の一部と主張する人々の間でさえウクライナの新たなアイデンティティーが根を下ろしている。

キリル総主教はロシア軍のために新たに建てられた大聖堂でプーチン氏の軍事作戦への熱烈な支持を表明した。この戦争への支持で、ウクライナ正教会に対するロシアの支配が失われた。ウクライナ正教会に所属する1万2000の教区は、親教会であるロシア正教会の教区の約3分の1に相当する。
「独立は唯一の選択肢」

ウクライナ正教会は5月、トップのオヌフリイ府主教の下、臨時会議でモスクワ総主教庁からの独立を宣言し、独立は教区民が要求したことだと強調した。

教会広報担当のクリメント府主教は「キリル総主教が何も言わなかったら話は別だった。だが、総主教は毎週のように、教会へ通う人を含むウクライナ社会にとって受け入れがたいことを言っていた」と語った。「人々が教会を訪れ、彼の名前を聞くと、祈りの妨げになった」と話す。

戦争を受け、教会内で最も熱心なロシア支持者さえ忠誠心を見直さざるをえなくなった。ロシア系ウクライナ人のオリガルヒ(新興財閥)で、2020年にウクライナ正教会から助祭に任命されたバディム・ノビンスキ氏は何年も前から、プーチン氏が14年にクリミア半島を併合した後でさえ、ウクライナに対してロシアとの関係を修復するよう呼びかけてきた。だが、今ではロシアの「侵略」を非難し、キリル総主教が厄介者になったと認める。

「我々は罪人ではなく罪を非難しなければならない」とノビンスキ氏は語る。それでも「総主教が戦争について何も語らず、状況をありのままに伝えなかったことは非常に悪い。総主教がやったことすべてがここで起きている事態と相まって、我々の不利益になっている」と指摘する。

米フォーダム大学でキリスト教正教研究を専門とするセルゲイ・チャプニン上級研究員によると、ウクライナ正教会内の親ロシア派は今も強い力を持つ。数人の主教はロシア正教会との関係を断絶することに異議を唱えた。ロシアの支援を受けた分離独立派の支配下にあるドネツクは決定に従うことを拒んだ。クリミア半島の司祭らはキリル総主教の管轄下に入った。

それでも「モスクワ総主教の教えの下では、未来がなかった。教会は消滅するしかなかった」とチャプニン氏は話す。「独立は教会を救うためにオヌフリイ府主教が下せた唯一の決定だった」という。

ウクライナでは14年以降、正教会に対する政治的な圧力が強まっていた。その当時、一部の司祭はクリミア併合とロシア国境に近い東部ドンバス地方での戦闘を黙認していたようだった。

ウクライナ政府は教会を国家安全保障上のリスクと呼び、18年にはモスクワ総主教庁の管轄外に新たな「ウクライナ正教会(OCU)」を創設するよう要求した。これが過去500年以上で最大の正教会分裂につながった。

オヌフリイ府主教の教会は今もウクライナ最大の正教会で、教区数は新しいライバル教会OCUの約2倍に上る。だが、戦争が始まると、ウクライナ当局者の間でロシアが破壊工作に教会を利用するとの懸念が強まった。

ウクライナの治安部隊は、ロシア正教会の聖地で黄金のドームが輝くキーウ(キエフ)・ペチェールシク大修道院を何度も強制捜索した。
互いに相手を「異端」扱い

ウクライナのトカチェンコ文化相はキリル総主教との関係を絶つ教会の決定を称賛した。トカチェンコ氏は「人々はウクライナ正教会の司祭が戦争と誰が敵かについてより明確なメッセージを打ち出すのを待っている。これはもはや宗教の問題ではない。非常に政治的な問題だ」と語った。

だが、オヌフリイ府主教のウクライナ正教会と新しいライバル教会の和解を期待できるのは遠い先で、双方の教会の多くの人が相手側を異端と見なしている。

戦争が始まって以来、400以上の教区がOCUへくら替えし、なかには怒る教区民から移行を強要された教区もあった。首都キーウ郊外のファスティフでは、数人の司祭が暴徒を先導して地元の教会に乱入し、モスクワから支持されている修道院長を襲った。

だが、古い方の正教会は新しいOCUが望んでいるように聖地の支配権を明け渡すことには消極的だ。こうした聖地には、最も重要な聖遺物が祀(まつ)られていて真の正教会を名乗る古い方の教会の主張を裏付けるウクライナの修道院が含まれている。

前出のノビンスキ氏はOCUについて「彼らはどこから修道士を連れてくるつもりなのか。ギリシャか。向こうに行きたいと思った人はすでに移った。彼らには修道士もいなければ修道院もない。これは彼らが教会と呼ぶ組織が劣っていることを示す明らかな証拠だ」と語った。

OCUはキーウ・ペチェールシク大修道院内の聖堂の一つで礼拝を行うことを認めるよう政府に働きかけている。今のところ、ウクライナ正教会は施設を共有することを拒んでいる。

クリメント府主教は「彼らは祈りをささげるために大修道院を必要としているわけではない。トロフィーとして必要としている。ウクライナ正教会の何千人もの信者にとって大切で聖なるあらゆるものを見せびらかせることができるからだ」と語った。

しかし、18年に創設されたOCUに所属するトカチェンコ文化相は、国の結束の名の下に、このアイデアにお墨付きを与えた。

「衝突して分裂し続けることは困難だ。国にとって選択肢にならない」とトカチェンコ氏は語る。「これが文明的な解決策であることを説得するには恐らく一定の努力が必要になるが、ウクライナ社会が多くの期待を寄せているので、双方が対話しないわけにはいかない」

By Max Seddon

(2022年7月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

ロシア、「疲れ」狙い長期戦の構え 防衛研の長谷川氏

ロシア、「疲れ」狙い長期戦の構え 防衛研の長谷川氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB0451B0U2A700C2000000/

『2022年7月4日 20:00

防衛省防衛研究所の長谷川雄之研究員の話

防衛研究所の長谷川雄之氏

ロシアはキーウ攻略に失敗し、東部に兵力を集める作戦に転換した後もルガンスク州の制圧に時間がかかった。隣のドネツク州でも一進一退の攻防が続くと予想される。ロシア軍の消耗が指摘されているとはいえ、火力で劣るウクライナ軍が大きく流れを変えられるかは同国への武器支援を米欧が高い水準で続けられるか次第となる。

プーチン政権は当初の短期制圧をにらんだ非合理的な戦術を改めて、長期戦でウクライナを追い詰める姿勢に切り替えている。時間とともに米欧の「ウクライナ支援疲れ」が深まると考えながら分断を図るだろう。エネルギーや食糧供給を材料に西側の世論も含めて揺さぶりをかけているのもその一環だ。

ロシアがどの段階で進軍を止めるかを予測するのは難しい。プーチン大統領が侵攻を強行した背景にはロシアに大国としての「特別な使命」があるとする歴史観や、政治的な遺産(レガシー)として歴史に名を残したい思惑があったと推察される。プーチン氏は10月に70歳を迎える。最高権力者として統治を続けるのに残された時間も意識しながら、米欧の結束やウクライナの政治体制がどれだけ持つかを見極めているだろう。』

トルコ、ロシア貨物船拘束か 盗難穀物運搬とウクライナ

トルコ、ロシア貨物船拘束か 盗難穀物運搬とウクライナ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB049MB0U2A700C2000000/

『【イスタンブール=共同】ウクライナの駐トルコ大使は3日、ウクライナから穀物を運搬していたロシアの貨物船をトルコ税関当局が「拘束した」と述べた。穀物は盗まれたものと訴えている。ウクライナ国営テレビに語った。トルコ当局者は4日、船を停止させ、ウクライナの訴えを調査していると明らかにした。ロイター通信が報じた。

トルコ当局者によると、船は、黒海に面した西部サカルヤ県カラスの港近くで停泊させている。ロイターによると、ロシア軍が制圧したウクライナ南部ベルジャンスクから穀物を積み出したとされる。

ロシアによる黒海封鎖でウクライナからの穀物輸出が停滞している問題では、ロシアが盗んだ穀物を運び出しているとウクライナは非難。ロシアは否定している。』

経産相「ロシアに説明要求」 サハリン2運営新会社巡り

経産相「ロシアに説明要求」 サハリン2運営新会社巡り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA051JY0V00C22A7000000/

『萩生田光一経済産業相は5日の閣議後の記者会見で、ロシアのプーチン大統領が液化天然ガス(LNG)開発事業「サハリン2」の運営を新たに設立する会社に移管する大統領令に署名したことについて、「外交ルートでロシアに説明を求め情報収集している。引き続きLNGの安定供給が守られるよう官民一体で対応したい」と述べた。

現時点では移管手続きの期限も不明瞭で、日本企業にどのような条件を求めてくるか見極める考えという。

萩生田氏は「大統領令によってただちにサハリン2からのLNGの輸入が止まるわけではない。今後、ロシア側から求められる内容を企業とよく精査し慎重に対策を考えたい」と述べた。

サハリン2の今の運営会社サハリンエナジーには、ロシア国営ガス会社ガスプロムが約50%、英シェルが約27.5%、三井物産が12.5%、三菱商事が10%を出資している。日本はLNG輸入量の1割程度をロシアから調達している。

今回の大統領令は、ロシアに運営会社を新たに設立し、外国株主は新会社設立から1カ月以内にロシア側が求める条件で、新会社の株式取得に同意するか回答するよう求めている。』

[FT]改革派エコノミストを逮捕 プーチン体制の息苦しさ

[FT]改革派エコノミストを逮捕 プーチン体制の息苦しさ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB050E70V00C22A7000000/

『ウラジーミル・マウ氏は先週、ロシアの国営ガス会社ガスプロムの取締役に再任された。リベラル派のエコノミストである同氏がロシアの至宝のような独占企業で留任したことは、今もクレムリン(ロシア大統領府)に目をかけられる存在であることを物語るようにみえた。
2017年、プーチン大統領(左)と握手するウラジーミル・マウ氏(提供写真)=ロイター

だが、それは間違いだった。

6月30日、再任から数時間後にモスクワの警察当局がマウ氏を詐欺容疑で逮捕したと発表した。ロシアの戦時下の弾圧が、今や忠実な配下にも及んでいることを示す展開だ。

容疑を否認し、8月まで自宅軟禁にされたマウ氏は決して反体制派ではない。同氏はロシア最大の大学である国立経済行政アカデミー(RANEPA)の学長として、プーチン大統領によるウクライナ侵攻後、「大統領の下に結束する」ことを誓う260校の学長の公開書簡に署名していた。

62歳のマウ氏は内側から体制を改革しようとしていた。RANEPAでは2017年から46州の知事を対象に、クレムリンの監督による特別プログラムを開講している。

RANEPAは毎年、テクノクラート(技術官僚)がロシア経済の停滞について問題点を語り合うセミナーも開催している。
建設的批判も許容されず

かつてクレムリンの経済プログラムに関してマウ氏に助言していた政治学者のキリル・ロゴフ氏によると、マウ氏の逮捕劇は非公開の場での建設的な批判も許されなくなったことを意味している。

「体制がいかに容赦ない姿勢になったかを示している」。現在はオーストリアの人間科学研究所の客員研究員であるロゴフ氏は言う。「マウは個人的にプーチンと良好な関係だったが、それは何の意味も持たない」

元当局者や財界幹部の話によると、テクノクラートなどロシアの多くのエリートは本音では戦争に反対しているが、それを人前で口に出そうとはしない。黙って辞職した人もいる。リベラル派として目立っていた人たちの何人かは報復に遭っている。

ウクライナ侵攻後に気候変動問題担当の大統領特別代表を辞任したアナトリー・チュバイス氏は現在、刑事捜査を受けていると報じられている。同氏は1990年代、当時のエリツィン大統領の経済チームでプーチン氏の同僚だった。

「最初の数カ月間、彼らはエリートによるエリートの弾圧を控えた」と話すのは、政治学者のエカテリーナ・シュルマン氏。「明らかに共同の戦線とエリートの団結を、つまり、エリートが逃げ出したり、かみつき合ったりしていないことを示すことが最優先だった。」

それがここにきて、「(マウ氏が)重要人物として(この数年で)初めて逮捕された」とシュルマン氏は言う。同氏は今春、RANEPAでのポストを捨ててドイツのロバート・ボッシュ・アカデミーでの1年間の研究員生活に転じた。「象徴的なのは、彼らが世論の強い反発を恐れなかったことだ」
マウ氏の逮捕はガスプロム取締役再任の直後だった(同社のロゴ)=ロイター

マウ氏の転落は、ウクライナ侵攻と西側の報復制裁後に起きたロシアの経済秩序の転換の大きさをさらにまた示す出来事だ。西側はロシア中央銀行の外貨準備の半分を凍結し、米国が主導する国際金融システムからロシアを遮断して輸入や外国投資に大打撃を与えた。

マウ氏は市場改革を唱道していたが、クレムリンは国有経済における役割を一段と拡大しようとしている。プーチン氏は6月30日、ガスプロムが英シェル、日本企業2社と組んだ極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を国有化(編集注、新たにロシアが設立する会社へ運営を移管する大統領令に署名)した。ウクライナ侵攻開始後、大規模な事業が国の管理下に置かれるのはこれが初めてだ。

同日、ロシアの内閣は政府が企業に軍需契約を強制し、国のための「臨時挙国体制」で従業員に超過勤務をさせることを可能にする法案を提出した。

「彼らは経済を動員体制にしようとしている」とシュルマン氏は説明する。「大統領は、ロシアを孤立させて計画経済に移すことはしたくないと言っていた。面目がつぶれるからだ。それが今、綻び始めた。彼らは非市場経済を制度化しようとしている」

プーチン氏は1990年代の「ショック療法」による改革をトラウマ的な失われた10年と位置付けたが、プーチン体制の最初の10年間はマウ氏のような「体系的リベラル派」も、「シロビキ」と呼ばれる旧ソ連の治安機関出身の実力者たちと同等に安らげる状態にあった。

そうしたリベラル派はプーチン氏の下で主要閣僚や重要な国営企業の経営者となり、同氏は旧ソ連国家保安委員会(KGB)時代の同僚たちの国家統制主義に傾きすぎないよう、バランスを取ることができた。

「10年前のプーチン体制には今よりはるかにたくさんの人たちがいて、完全な進歩派ももっといた。旧来の意味でのリベラル派というほどではないが」と振り返るのは、元RANEPA社会学科長のビクトル・バシュタイン氏だ。

プーチン氏の4年間の首相時代の11年、マウ氏は国立研究大学高等経済学院の学長だったヤロスラフ・クズミノフ氏と共に、ロシアの経済政策の10カ年の道筋を見極めようとする大規模な研究プログラムを率いた。

「経済に関する意見が必要とされる政策会議には必ず、マウ氏かクズミノフ氏が出席するような習わしだった。彼がロシアの経済政策を主導する双頭の1人であることは非常にはっきりしていた」。ロシア経済学院の学長を務めながら、プーチン氏と入れ替わったメドベージェフ前大統領の顧問を務めたセルゲイ・グリエフ氏の述懐だ。

だが、マウ氏とクズミノフ氏の影響力はそこまでだった。両氏は提言の中心に、国の支出を軍と警察から慢性的な予算不足の教育と医療へ移すことを据えた。

だが、プーチン氏は14年にウクライナ南部クリミア半島を併合し、同国東部ドンバス地方での分離独立派による代理戦争を主導。これとともに弾圧と軍事化、経済的孤立が進んでいき、22年の全面侵攻に至った。

それでもクレムリンとの一時的な妥協を模索していたマウ氏は、ウクライナ侵攻を強く批判する友人たちとの関係がこじれる状況となった。

「リベラル派である必要はあったが、行き過ぎるのは禁物だった。彼は採用する人材も見極めていた。14年以降はとても慎重になり、おびえていた」と14年にRANEPAを離れたロゴフ氏は振り返る。

「私はかなり強い言葉で言い放つこともあったが、ウラジーミル(・マウ氏)は人前でそうするのを恐れていた。自分の身に跳ね返ってくると思っていた」

圧力をかけられたのは学者だけではなかった。
学生活動家らにも圧力

反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が主導する抗議デモに学生が大挙して加わった19年、クレムリンは大学内の反体制派の弾圧に乗り出した。一部の学生活動家は退学させられ、職を失う教員も出た。

プーチン批判の余地が狭まる一方となり、クズミノフ氏の高等経済学院など他の大学で弾圧が始まるなか、RANEPAはなおも自由な思想のオアシスのように映っていた。

RANEPAの現役・元教員らによると、クレムリンと治安機関のロシア連邦保安局(FSB)は何度もマウ氏を呼び出し、好ましからざる教授たちについて厳しく問いただしていたという。

だが、マウ氏は圧力をかけられても「問題視される教授を解任しようとしなかった」とバシュタイン氏は話す。「ロシアのほとんどの大学では、フェイスブックに不穏当なことを書けばクビにされる。教師としていかに優秀で、英語の論文をどれだけ多く発表していようともだ。私たちはそうではなかった」

検察当局はマウ氏に対し、反体制派寄りの学生のリストをまとめるよう要求した。最終的にRANEPA側はリストをまとめたが、それでも何もなかったと教員らは言う。マウ氏が前述の書簡に署名したのも公表の1週間後、地元メディアが同氏の補佐役の1人が代わりに署名していたことに気づいてからのことだ。

マウ氏の逮捕は、ロシアの自由思想の教育に終わりを告げるものかもしれない。

クズミノフ氏は21年夏に高等経済学院を辞職した。その数カ月後にモスクワ社会経済科学学校のセルゲイ・ズエフ学長が、マウ氏にかけられた嫌疑と関係する詐欺容疑で逮捕された。

ウクライナ侵攻開始後、多くの学者が戦争批判に対する報復を恐れてロシアを離れている。ロシア政府は、標準化された欧州式の高等教育を「国益」を反映するシステムに置き換えるとしている。

だがグリエフ氏によると、最も影響を受けているのは今も政府機関で働いているリベラル派かもしれない。

リベラル派を脅威と感じるシロビキが、プーチン氏に「あいつらはあなたに反抗している。そんな連中が政府機関で働いていると訴えている」と、13年に迫害を恐れてロシアを離れたグリエフ氏は言う。

「私が彼らの立場だったら今のうちに逃げる。この先、逃げるのははるかに難しくなるだろう」

By Max Seddon

(2022年7月4日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

【関連記事】

・経産相「ロシアに説明要求」 サハリン2運営新会社巡り
・プーチン氏、ルガンスク州の「解放」宣言  作戦継続指示
・LNGルーブル払い、実現なら日本も影響 ロシア国営ガス
・高度人材、国境越え争奪 ロシア「頭脳流出」30万人超
・トルコ、ロシア貨物船拘束か 盗難穀物運搬とウクライナ
・[FT]ウクライナ正教会、侵攻祝福のロシア正教会から独立
・ロシア軍、ルガンスク州制圧 ウクライナ軍が撤退表明
・英国、ロシア第2の富豪に制裁 プーチン氏の親戚も対象 』

図録▽ウクライナの地域別人口・民族・産業・所得水準

図録▽ウクライナの地域別人口・民族・産業・所得水準
https://honkawa2.sakura.ne.jp/8990.html

 ※ なんか、前にも貼ったような気がする…。

 ※ まあ、いいや…。

 ※ また、貼っておこう…。

 ※ 今調べたら、やっぱり貼っていた…(4月14日版だ)。ロシア支配地域の図が、ちょっと違うようなんで、再度貼っておく…。

『プーチン大統領は侵攻前、ウクライナ東部のドンバス地域にあるドネツク、ルガンスク2州で親ロシア派武装勢力が実効支配する地域を「独立国家」として承認し、2つの「国家」のトップと「友好相互援助条約」も結んだ。条約には両地域にロシア軍の軍事基地を設けることができる項目が含まれている。

 プーチン大統領は、ウクライナへの軍事作戦は自らが管理下に置く「国家」の「平和維持」が目的だとして侵攻を開始した。

 侵攻の名目がウクライナ国内の地域問題であるということもあって、クリミヤ半島併合時に作成したウクライナの地域構造についての当図録へのアクセスも増えている。とりあえず、以前に作成したままの資料とコメントを以下に掲げる。

 なお、軍事侵攻を受けたウクライナのゼレンスキー大統領は、ドニプエロペトロフスク州クルィヴィーイ・リーフ市にユダヤ系ウクライナ人として生まれた。「東部出身のために母語はロシア語。元々ウクライナ語は苦手で俳優業やメディアではこれまでロシア語を使用してきた。大統領当選以降はウクライナ語の特訓を受け、会見等ではほぼウクライナ語のみでこなしている」という(ウィキペディアによる)。』

『ウクライナでは、2014年2月の政権崩壊以降、首都キエフを含む親EUの西部とロシア人が多く親ロの傾向の強い東部の地域性の違いを背景に、欧米やロシアの対立を含んで国内の政治混乱が続き、クリミア半島の地方政府が行った住民投票で決まったロシアへの編入をロシアが了承したことから世界の関心を集めている。ここでは、ウクライナの地域構造について、基本的な指標(人口、民族構成、産業、所得水準)についてまとめた。

 ウクライナの地域区分は、24の州、2つの特別市、1つの自治共和国の27区分が基本になっている。公式統計上は東西に区分されていないが、多数政党の色分けから、キエフ市と16州は西部、8州とクリミア半島のクリミア自治共和国とセヴァストポリ市は東部に区分することができる。東西区分、及び西部のクリミア半島の指標を整理すると以下の通りである。』

『人口は、4,543万人のうち、西部が2,405万人、東部が2,138万人(うちクリミア半島235万人)であり、東西ほぼ同規模である。27区分別には、ドネツク州が434万人で最大となっているが、首都キエフ市とキエフ州を合計すると460万人であり、これを上回っている。中心都市としてもほぼ東西同規模と見てよいであろう。州別の人口は東部は100万人台が多く、200~300万人台が多い西部と比べ総じて規模が小さくなっている。

 都市化の程度を都市人口比率で見ると、西部は60.2%、と東部の78.8%と比べて、かなり低く、農村部的性格は西部の方が強いことがうかがわれる。これは、下に述べる産業の地域分布の影響であろう。

 民族構成としては、ロシア人の比率がまず問題となる。西部の各地区では、首都キエフが13.1%とややロシア人比率が1割を越えているのを除くと、いずれの州も1割以下であり、ロシア人は少ない。これとは対照的に、東部諸州ではクリミア半島(クリミア自治共和国とセヴァストポリ市)の60.4%、ドネツク州の38.2%をはじめ、どの地域でもかなりロシア人が多くなっている。西部と東部のロシア人比率はそれぞれ5.4%、30.3%と大きく異なっているのである。

 次に産業配置を、工業製品の販売額分布と穀物生産量の分布とから見ると、前者は東部、特にドネツク州とドニエプロペトロフスク州に集中しているのに対して、後者は全国的に分布している点が目立っている。

 ウクライナの主要産業は農業と鉄鋼業である。

 資源立地の性格の強い鉄鋼業については、「石炭は、ドニエプロペトロフスク州、ドネツク州、ルガンスク州にまたがって広がるドネツ炭田で産出される。また、鉄鉱石は、ドニエプロペトロフスク州、ザポロジエ州、ポルタヴァ州が主たる産地である。そして、これらの資源基盤に隣接する形で、鉄鋼業が東ウクライナの各都市に集積している」(服部倫卓(2008)「ウクライナ鉄鋼産業の鳥瞰図」ロシアNIS調査月報2008年4月号)。

 ソ連の崩壊前、ロシア語で「結合」を意味するコンビナートとしてソ連の中で代表的だった2地域が、ウラル地方の鉄鉱石とクズネツク炭田が結合した「ウラル・クズネツク・コンビナート」とウクライナのドネツ炭田とクリボイログ鉄山(ドニエプロペトロフスク州)が結合した「ドニエプル工業地域」だった。

 ウクライナの粗鋼生産量は、日本鉄鋼連盟の調べでは2013年に32,824トンと、中国、日本、米国、インド、ロシア、韓国、ドイツ、トルコ、ブラジルに次ぎ、イタリア、台湾を上回る世界第10位である(2014.3.16HP)。鉄鋼・鉄鋼製品の輸出先は、ロシアとトルコが上位2位を占めており、そうした意味からもロシアとのつながりが深い。

 ウクライナ中部から南部にかけては肥沃な黒土地帯が広がっており、ウクライナは昔からヨーロッパの穀倉地帯として小麦の生産で有名だった。近年は小麦の他、とくにとうもろこしの生産拡大が目覚ましくなっている。ウクライナは消費量の割に生産量が多いため、世界の主要穀物輸出国の1つとなっている。小麦は、世界第6~8位程度の輸出国、ともろこしは、米国、アルゼンチン、ブラジルに次ぐ主要輸出国となっている。

 こうした産業配置から、所得水準も東部が西部より1割以上高くなっている。首都キエフ市は国内で最も所得水準が高い。そこでキエフ市を除く西部の所得水準を計算すると2699米ドルとなり、これと比較すると東部の所得水準は約4分の1高い。

 州別に所得水準を見ると、ほぼ、工業シェアが高いほど所得水準も高くなっている傾向が認められる。例外として目立っているの工業シェアはそう高くないのに、所得水準はキエフ市に次ぐレベルとなっているザポロジエ州であるが、これは、欧州最大の原子力発電所といわれるザポロジエ原子力発電所が立地しているためだと思われる。なお、国内第3位の所得水準はポルタヴァ州であるが、これは、この州が石油、天然ガスの資源に恵まれ、自動車産業、石油精製業などの工業立地も進んでいるからである。そして、これら3地域に次いで所得水準が高いのが工業シェアが高いドネツク州とドニエプロペトロフスク州のドニエプル工業地域である。

 ウクライナの人口ピラミッドのロシアとの比較は図録8979参照。ウクライナ以外のロシア周辺国との比較は図録8975参照。ウクライナ人の平均寿命の推移については図録8985参照。意識や価値観の推移については図録8973、図録9458参照。』

『【コラム】地域差の大きい政治意識

 政治意識についてもウクライナでは地域別に大きな違いがあることを示す意識調査結果を掲げた。

 2013年6~7月に行われたギャラップ調査(Gallup Poll)によると、理想の政治体制として、ウクライナ国民の28%は西欧スタイルの民主共和制を望んでいるが、他方、以前ののソビエト体制およびソビエトに近いが民主的市場主義的な体制が、それぞれ、19%、29%と合計して48%となっており、国内に異なる政治意識が並存していたことが分かる。

 地域別は、本文と異なり、西部、中部、東部の3区分である。所属地域は明確ではないが、中部には首都キエフを含むとされているので、本文のキエフ州からスムィ州まであたりではないかと想像される。

 地域別には、キエフ市を含む中部は、ほぼ国全体の意識に近い。西欧に近い西部では、西欧スタイルの民主的共和制を望む者が57%と多数派を占めているのに対して、ロシアに近い東部(クリミアを含む)では、以前ののソビエト体制およびソビエトに近いが民主的市場主義的な体制が、それぞれ、23%、34%と合計して同じく57%と多数派を占めており、国内が地域別に2分されていたことが明瞭である。

 こうした中では、政治運動としての親EU派と親ロシア派のいずれかが強引に自らの純化した考え方の政権を樹立するとすれば、どうしても無理が生じる状況だったことが分かる。あいまいで妥協的な政権の下で時間が経過するうちに国民意識がどちらかに大きく傾いてから純化した政治体制を決めるというのが大人の路線だったのではと思われる。親EU派が国内の民族主義的過激派と組んで純化した形の政権をかなり強引に打ち建てようとし、EU指導部がそれを黙認あるいはウラでそそのかしたところに、今回、虎の尾を踏むようなかたちで、ロシアによるクリミア編入の事態を招いた原因があるのではなかろうか。

 こうした地域的な意識差をウクライナの現政権が埋め損なっている状況を英エコノミスト誌は次のように指摘している。

「現政権はロシアのプロパガンダに対抗できていない。例えば、ヤヌコビッチの狙撃手たちに独立広場で撃ち殺された者の多くはロシア語を話す東部出身者だったという事実はあまり広く認識されていない。一般に、ソビエト連邦へのノスタルジーがなお残る産業地帯の東部地域と個人主義的でEUへのあこがれが強い農業地帯の西部地域との融和を図るのに失敗している場合が多いが、これもその一例である。首相であるアルセニー・ヤツェニュクが、テレビを通したアピールで、南部、東部でロシア語を話す人々に彼らのロシア語使用を保証し、地方政府の自治強化を約束するのに3週間もかかった。政権を成立させる交渉団に東部や南部の政治的リーダーを最初から参加させていたら事態は大きく改善されていたであろう」(The Economist March 22nd 2014)。

 ここで、ロシア語使用の保証とは、ヤヌコビッチ政権崩壊後の新しい暫定政権が2月23日にロシア語を準公用語とする言語法を廃止し、ウクライナ語のみを公用語とした結果、ロシア系住民から猛反発を受け、これがロシアの介入に大義名分を与えたことを指す。エコノミスト誌は、こうした意識の地域差の存在を指摘しながら、一方で、ウクライナの国としての独立意識も高まってきている意識変化についても強調し、国がばらばらになることはないだろうという期待の下に記事を締めくくっている。

 なお、ここで引用したような世論調査の結果は、ロシアのプーチン大統領などの政策決定者も活用しているようだ。「モスクワ郊外で支持者らとの会合に出席したプーチン大統領は、クリミアの編入について「このような成り行きは想定していなかった。住民の意向は想像できたが確信はなかった」と説明。実施時期は明かさなかったが、最初の世論調査で編入賛成がクリミアで80%、セバストポリ市ではそれ以上になったため編入を決意したという」(毎日新聞2014年4月12日)。

 ウクライナ国民は、自国民としての誇りを抱きにくい状況にある点については図録9465参照。また、ソ連崩壊を結局良くなかったと思っている者が良かったと思っている者の2倍以上にのぼっている点については図録8973参照。とはいえ価値観がヨーロッパ化している点については図録9458参照。

 2022年2月のロシア軍によるウクライナ侵攻に関しては、AERA.dotの記事(2022.2.27)によると、取材を受けたハバロフスク出身の父ウクライナ人、母ロシア人の国籍ロシアの女性(38)は、プーチン大統領がウクライナ侵攻に踏み切った理由を、彼女なりに解釈して、こう表現したという。「アメリカやヨーロッパが、お金をウクライナの玄関にわざといっぱい置いて、ウクライナとロシアの兄弟の国同士を喧嘩させようとあおっている」。案外こんなところが真実ではないかという気がしている。欧米諸国はみずからの価値観に対して自信過剰なのだ。』

『図で取り上げたウクライナの地域名は、図の順番で、ザカルパチア州、リヴォフ州、ヴォルィニ州、リヴネ州、テルノポリ州、イワノフランコフスク州、チェルノフツィ州、フメリニツキー州、ジトミル州、ヴィンニツァ州、キエフ州、キエフ市、チェルニゴフ州、チェルカッスィ州、キロヴォグラード州、ポルタヴァ州、スムィ州、ハリコフ州、ルガンスク州、ドネツク州、ドニエプロペトロフスク州、ザポロジエ州、ニコラエフ州、オデッサ州、ヘルソン州、クリミア自治共和国、セヴァストポリ市である。

(2014年3月17日収録、3月22日コラム追加、3月23日所得水準追加、州並び順変更、3月25日若干コラムのコメント改訂、3月31日コラムコメントにエコノミスト記事を引用、4月3日地域並びj順及びコメント改訂、4月12日プーチン大統領の世論調査活用という記事を追加、2022年2月27日ロシアのウクライナ侵攻の頭出し、3月7日ゼレンスキー大統領の出身、4月3日戦況図更新)』

ウクライナ南部ヘルソンに「州政府」 ロシア側が宣言

ウクライナ南部ヘルソンに「州政府」 ロシア側が宣言
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB05DU50V00C22A7000000/

『【キーウ=共同】ロシア軍が制圧したウクライナ南部ヘルソン州でロシア側が一方的に設置した同州「軍民行政府」幹部は4日、ロシアの行政関係者や親ロ派住民らで構成される「州政府」を置くと宣言した。5日から活動を始めるとしている。タス通信が伝えた。

州政府トップにはロシア連邦保安局(FSB)元職員で、ロシアの飛び地カリーニングラード州の幹部セルゲイ・エリセエフ氏が任命された。

軍民行政府幹部は「州政府」について通信アプリで「れっきとした政府機関」であり、臨時的・軍事的なものではないと説明した。州の政府が創設されても軍民行政府は残り、同行政府のトップ、ウラジーミル・サリド氏が州の最高の役職を保持するという。

ロシア側はヘルソン州のロシア編入を狙い、住民投票を準備しているとされる。州政府の創設によりロシアの実効支配がより強まった形だ。』

英国、財務相・保健相が辞任 不祥事続く政権に反旗

英国、財務相・保健相が辞任 不祥事続く政権に反旗
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR05E6A0V00C22A7000000/

『【ロンドン=中島裕介】ジョンソン英政権のスナク財務相とジャビド保健相は5日、相次いで辞任を表明した。不祥事が続く政権運営では、国民の支持を取り戻すのが難しいと判断した。新型コロナウイルスの行動規制下でパーティーを開いた問題への不信感が払拭できないなか、直近では過去に痴漢行為の疑いがある議員を党幹部に起用した件で批判されていた。

これまでも保守党内の反ジョンソン派からの批判は高まっていたが、2人の重要閣僚の辞任はジョンソン政権にとって今までにない打撃となる。英BBCはジョンソン氏が「非常に不安定な立場になった」と指摘。「1人の閣僚の辞任なら生き残れるが、2人の重要閣僚では難しいかもしれない」と分析した。ジョンソン氏は財務相の後任にザハウィ教育相を、保健相にはバークレイ首相首席補佐官を充てた。

ジャビド氏は5日のジョンソン氏への書簡で相次ぐ不祥事を受けて「良心を持って、この政府に仕えることはできない」と辞任理由を表明した。「この状況はあなたの指導下では変わらない。私の信任も失っている」とも述べ、ジョンソン氏に辞任を促した。

スナク氏も「国民は適切に、有能に、真剣に政権運営が行われることを期待している」と記した書簡をジョンソン氏に送り、相次ぐ不祥事が辞任理由だと示唆した。スナク氏は次期首相候補として名が挙がっていた。

スキャンダル続きのジョンソン政権では、直近でも党幹部人事を巡る不祥事があった。

与党・保守党のピンチャー副幹事長が泥酔して男性2人に痴漢した件で6月30日に辞任した。ピンチャー氏を巡っては2019年の外務担当の閣外相時代にも似た事例の苦情がジョンソン氏に寄せられていたが、それでも22年2月に副幹事長に起用した。当初、首相官邸はジョンソン氏がこの苦情を知らなかったと説明したが、5日になってジョンソン氏本人が「間違いを犯した」と発言を翻した。

6月にはコロナ規制下でのパーティー開催問題をきっかけに、ジョンソン氏の辞任を求める保守党議員が一定数に達して信任投票が行われ、4割超の議員が「不信任票」を投じた。トラス外相やウォレス国防相など他の閣僚は首相を支持する構えだが、ジョンソン政権の屋台骨が急速に揺らぎ始めている。
多様な観点からニュースを考える

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

伊藤さゆりのアバター
伊藤さゆり
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究理事
コメントメニュー

ひとこと解説

ユーガブの最新の世論調査では、「ジョンソン首相は辞任すべき」との回答が69%とパーティーゲートのスキャンダルが影響した今年1月時点の63%を超えて過去最高を更新した。保守党の支持者でも「辞任すべき」という回答が54%と初めて過半数を超えた。
同調査によれば、不支持率が圧倒的多数を占める状況にあっても、「首相が自ら辞任する」という回答は21%で、およそ3分の2が「生き残りを図ろうとする」と見ている。
保守党の政治家の人気に関するユーガブの別の調査、辞任したスナク財務相とジャビド保険相は、第1位のメイ前首相に続く、2位と3位。第4位のジョンソン首相を上回るが、全体に僅差、30%前後と低調だ。
2022年7月6日 8:53 』

カリーニングラード州知事、リトアニアに警告 制裁巡り

カリーニングラード州知事、リトアニアに警告 制裁巡り
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN060790W2A700C2000000/

『バルト3国の一つリトアニアがロシア本土から同国西部の飛び地カリーニングラード州に向けた欧州連合(EU)制裁対象の貨物を積んだ列車の通過を禁じた問題で、アリハノフ・カリーニングラード州知事は5日、同州以外のロシア領とバルト3国との間の貨物通過を全面禁止する対抗措置も検討されていると述べた。リトアニア側への警告とみられる。タス通信が伝えた。

アリハノフ氏は、現在はアジアなどからバルト3国の港を経由してロシアや欧州諸国などへ送られている物資の輸送が完全にストップされる可能性があると指摘した。

その一方で「これは最も極端な場合だ」とも述べ、リトアニア側に暗に譲歩を促した。

リトアニアは先月中旬から、ロシア本土からカリーニングラード州への輸送制限を実施。EU欧州委員会と協議した結果の措置だとし、EUの対ロ制裁基準に沿ったものだと説明している。(共同)』

中国情報収集艦が日本一周 防衛省発表

中国情報収集艦が日本一周 防衛省発表
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA05D0M0V00C22A7000000/

『防衛省は5日、中国海軍の情報収集艦1隻が沖縄本島と宮古島の間の海域を北西方向に通過し、東シナ海に向かったと発表した。3週間ほどかけて日本列島を一周した。海上自衛隊の護衛艦「せとぎり」などが警戒監視にあたった。

この情報収集艦は6月中旬に日本海から津軽海峡を抜けて太平洋に入っていた。日本列島を一回りするような動きは6月15~21日にロシア海軍の艦艇5隻、12~30日に中国海軍の艦艇3隻についても確認した。

岸信夫防衛相は中ロ両軍の艦艇の活動について「両国による日本周辺における軍事プレゼンスの誇示で、日本への示威行動とも考えられる」と言明した。』