[FT]アジア太平洋4カ国、中国への懸念でNATOに接近

[FT]アジア太平洋4カ国、中国への懸念でNATOに接近
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『マドリードで6月最終週に開かれた北大西洋条約機構(NATO)の首脳会議には、軍事同盟の通常の地理的範囲のはるかかなたにある日本、韓国、オーストラリアとニュージーランドの首脳が招待された。

岸田首相㊧ら日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドの首脳は、NATO首脳会議に初めて参加した=ロイター

米国と同盟を結ぶ4カ国が初めて参加しサイバー防衛や海洋安全保障における協力でNATOと合意したことは、各国がロシアのウクライナ侵攻や威圧的行動を強める中国の台頭への警戒感を裏付けている。

「欧州とインド太平洋の安全保障は不可分」

重要な参院選の選挙戦を中断して首脳会議に出席した岸田首相は、この動きは各国首脳が欧州とインド太平洋の安全保障は「不可分」であることを理解したことを示していると述べた。

また岸田氏は「ウクライナは明日の東アジアかもしれないと強い危機感を抱いている」とも述べ、将来はアジア太平洋のパートナー国がNATO首脳会議に「定期的に」参加すべきだと主張した。

NATO加盟国も中国の意図への懸念を共有している。首脳会議で採択された今後10年の行動指針となる「戦略概念」で、初めて中国を「体制上の挑戦」と明記した。

一方、中国はNATOと4カ国との関係強化を警戒している。

中国外務省の趙立堅副報道局長は「NATOがアジア太平洋に触手を伸ばしてきた」と批判し、地域の平和と安定を脅かす試みは「失敗する運命にある」と述べた。

中国はアジア版NATOの結成に繰り返し反対を表明してきた。安全保障の専門家は、域内各国の利害が大きく異なるうえ、中国との経済的結びつきが強いので結成の可能性は非常に低いと考えている。

だが、NATOと4カ国の関係強化の背後には、米国との個別の同盟だけでは安全保障面で不十分だとの懸念がある。日本と韓国から米軍を撤退させると脅したトランプ前大統領の「米国第一主義」で各国の米国への信頼は低下した。

中国への抑止力強化のための選択肢を拡大

さらにロシアのウクライナ侵攻と、中国が台湾に侵攻するのではないかとの恐れが、抑止力強化のため複数の選択肢を持つ必要があることを示唆している。

広瀬佳一防衛大学校教授(国際政治学)は「米国との同盟だけでなく、NATO加盟30カ国についても考慮する必要が出てくると、中国にとっては計算が複雑になる」と指摘した。

ある米政府関係者は、米国が日本など4カ国のNATO首脳会議への参加を働きかけたと明らかにした。中国に対抗するため価値観を共有する国との同盟関係の構築や拡大を目指すバイデン政権の戦略の一環だという。

またこの関係者は、2024年の米大統領選で自国との同盟を重視しない候補者が当選した場合に備え、日本が中国から身を守る保険として安全保障関係の拡大と多角化を望んでいるとも指摘した。「日本は米国との関係以外で安全保障能力を構築しようとしている」

米戦略国際問題研究所(CSIS)の日本専門家クリストファー・ジョンストン氏は、岸田氏がロシアのウクライナ侵攻にとりわけ危機感を覚えており、欧州とNATOに中国からの挑発にもっと気を配ってくれるよう望んでいると述べた。

また最近まで米国家安全保障会議で対日政策を担当していたジョンストン氏によると岸田氏は昨年来、英国とドイツにインド太平洋への海軍の展開を働きかけており、「関係の多角化という大きな考え方に合致する」という。

5月に就任したオーストラリアのアルバニージー首相はマドリードの首脳会談で、NATOとパートナー国が中国を「仮想敵」とみなしているとの非難を一蹴した。

「中国は現実を直視し、ロシアの行動の非難を」

同氏は中国がロシアと「無限の」友好関係を持ち、ウクライナ侵攻を非難していないと指摘し、「中国は起きていることと世界中で表明されている決意を直視し、ロシアの行動を非難しなければならない」と述べた。

首脳会議が国際舞台デビューとなった韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は、同国が安全保障でより大きな役割を果たすと約束し、「韓国とNATOの協力関係は連帯の礎となる」と述べた。

また首脳会議に合わせて尹氏、岸田氏とバイデン氏がほぼ5年ぶりとなる3カ国首脳会談を行った。尹氏は歴史認識や貿易をめぐり大幅に悪化した日本との関係を改善する意欲を示した。

ロシアのウクライナ侵攻前から、中国の軍事的野心の封じ込め方法について懸念が存在し、アジアでは日米豪印4カ国でつくる「クアッド」などいくつもの安全保障枠組みが生まれていた。米英豪3カ国の「AUKUS(オーカス)」のもとでは英米がオーストラリアの原子力潜水艦配備に協力する。

これらの多国間安全保障枠組みや既存の二国間防衛協定は、最近バイデン氏が発表した「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」などの経済圏構想によって補完される。

国際基督教大学のスティーブン・ナギ上級准教授は、NATOと新たなパートナー間の協力には限界があると指摘した。

「NATOはロシアを押し返すためのあらゆる外交的、経済的また資源開発への投資を歓迎するだろう」と同氏は話した。「だが加盟国が韓国、日本、オーストラリアやニュージーランドを仲間に入れ、同等の立場で席に着きたいと思うだろうか。確信は持てない」

By Kana Inagaki, Nic Fildes and Demetri Sevastopulo

(2022年7月3日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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