中国ゼロコロナ失業、大都市に打撃 格差是正の妨げに

中国ゼロコロナ失業、大都市に打撃 格差是正の妨げに
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『【北京=川手伊織】新型コロナウイルスのまん延を受け、中国で大都市ほど雇用環境が悪化しやすくなっている。中小都市の失業率が高かった従来の構造は、2020年半ばに逆転した。大都市で比重が大きいサービス業が、感染封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策で打撃を受けたためだ。しわ寄せは出稼ぎ労働者や若者に向かい、格差是正が進まない要因となっている。

今年5月の都市部失業率は5.9%と、過去2番目に高かった4月から0.2ポイント下がった。上海市のロックダウン(都市封鎖)などで急失速した景気も「最悪期は過ぎた」との見方が広がった。

ただ大都市に限ると、雇用環境の悪化はなお続いた。北京市や上海市の直轄市、省都、自治区の区都など主要31都市の失業率は6.9%と4月を0.2ポイント上回り、3カ月連続で最高を更新した。

5月の悪化は上海のロックダウンに加えて、北京市や天津市といった大都市でも行動規制が厳しくなったためだ。全体の失業率と比較すると、20年6月以降、31都市限定の失業率が上回るようになった。大都市は中小都市より失業率が低いという構図が、新型コロナの感染拡大で反転したことを意味する。

中国の投資銀行、中金公司の彭文生チーフエコノミストは「感染拡大の影響が大きかった業種は接触型のサービス業」と語る。厳格な行動制限で外食や娯楽、宿泊などは需要が消えた。勤務先が突然、営業停止に追い込まれ、従業員が職を失う例も多い。

サービス業は大都市ほど存在感が大きい。域内総生産(GDP)に占める第3次産業の比率は、北京が8割、上海、広東省広州市、浙江省杭州市、四川省成都市が7割前後と、中国全体の比率(5割)より高い。

大都市で目立つ「ゼロコロナ失業」のあおりは、若者や「農民工」と呼ばれる農村からの出稼ぎ労働者が受けやすい。

16~24歳の失業率をみると、5月は18.4%で4月から0.2ポイント上昇した。主要31都市の失業率と同じように過去最悪の更新が続く。

ゼロコロナ規制で収益が悪化したサービス業は「新型コロナ後の即戦力となる今の従業員を解雇するより、まずは新規採用の抑制などで雇用コストを減らしている」(彭氏)。

人材会社の智聯招聘によると、22年6月卒業の学生の内定率は4月中旬時点で47%と、21年同時期より16ポイント低い。学生が内定を得ずに卒業して労働市場に参入すると、若年失業率は一段と高まる可能性もある。

希望の職につけなかった大卒の若者がネット通販の配達員などの仕事でなんとか生計を維持することも少なくない。出前アプリの美団の調査では、新型コロナの感染が広がる前の18年時点で出前配達員の約15%が大学卒業生だった。

農民工を取り巻く環境も厳しい。都市部における域外出身者の失業率は5月が6.6%だった。域内出身者の失業率より1.1ポイント高い。

出身地別の失業率は21年1月に調査が始まった。ほぼ一貫して、域外出身者の失業率は域内出身者より低かった。ただ吉林省長春市や広東省深圳市がロックダウンに踏み切るなどゼロコロナ規制が強まった22年3月以降、域外出身者の失業が大幅に増加した。

21年時点で農民工の51%は第3次産業で働く。高齢化などで、この割合は13年の43%から8ポイント上がった。サービス業の経営悪化が農民工ら出稼ぎ労働者を直撃した。

都市部では家賃など生活コストが高い。「より良い待遇の仕事に就きやすい」という大都市の魅力が薄れ、相対的に給与が安い若年層や出稼ぎ労働者の雇用が一段と不安定になれば、所得格差という社会問題が大きくなりかねない。

都市内の格差は広がったままだ。21年の世帯ごとの1人当たり可処分所得を多い順に並べると、上位20%の平均は下位20%の平均の6.1倍だった。20年の6.2倍とほぼ変わらず、5.3倍だった15年から拡大傾向にある。

習近平(シー・ジンピン)指導部は昨夏から、格差縮小に向けて分配を重視する「共同富裕(共に豊かになる)」路線を強調してきた。しかし、指導部が徹底するゼロコロナ政策は若者らの失業を増やし、格差是正が進みにくい状況を生み出している。』