BRICS、同床異夢でも前進 スリーラム・チャウリア氏

BRICS、同床異夢でも前進 スリーラム・チャウリア氏
印O.P.ジンダル・グローバル大教授
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCD271YP0X20C22A6000000/

『ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカによるBRICSの第14回首脳会議が、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席の主宰で6月23日に開かれた。BRICSはロシアのウクライナ侵攻を巡る意見の相違などにもかかわらず、前進を続けている。この枠組みが存続している背景として、参加国それぞれの国益に合致している点は見逃せない。

中国の立場からすると、BRICSは欧米抜きの国際秩序が可能であると示す有益な手段だ。中国は近年、習氏肝煎りの広域経済圏構想「一帯一路」を、欧米の国際システムを覆すための戦略として優先している。ただ中国は一帯一路が覇権主義的であるという批判に敏感でもある。

中国が一帯一路よりも先に始まったBRICSに関与しているのはこのためだ。貧しい国々に冷たい米国と比べ、自らを温和なチームプレーヤーと描く一助になると中国は考えている。今回はアジアやアフリカ数カ国の首脳を招いた拡大会合も開いた。中国は発展途上国における指導的存在であることを証明し、西側の国際秩序に挑戦できる「BRICSプラス」を結成しようとしている。

Sreeram Chaulia 米シラキュース大博士。専門は外交政策や比較政治で著書多数。インド内外のメディアで発信を続ける

インドも途上国の発言力を高めることを目指しているが、中国の拡張主義には幻滅している。2006年にBRICSが考案された当初の中国は新興国の一角だったが、現在は米国と並び立つ大国になった。その外交政策はアジアの近隣諸国に対して強引で好戦的でもある。20年に起きた小競り合いを経て、中国軍とインド軍はヒマラヤ国境でのにらみ合いを続けている。いまやインドは中国を主要な敵国であると確信している。

そのような状況下でもインドがBRICSにとどまる理由は、多国間プロセスにより中国の拡張主義をけん制するためである。過去15年のBRICSの制度設計は、中国が他の加盟4カ国を無視できないようにするものだった。例えばBRICSが運営する新開発銀行(NDB)は全世界で250億ドル(約3.4兆円)以上の融資を行っているが、中国を補佐するのが役割ではない。インドはBRICSカードにより、中国とバランスをとるための行動ができると考えている。

ロシアはBRICSを、ウクライナ侵攻による孤立を拒むための場とみなしている。侵攻の結果、中ロの同盟の緊密化が言いはやされているが、ロシアは中国に比べて劣勢であると痛感している。ロシアのプーチン大統領は中国だけに頼らず、パートナーシップを多様化するためにもBRICSに価値を見いだしている。

ブラジルと南アフリカがBRICS内で協力するのは、自らの地位を確認できるからだ。両国はBRICSの一員であることにより、それぞれの大陸で正統性を認められている。ブラジルは中南米の指導者であり、南アフリカはアフリカの主要国であるという考え方がBRICSへの参加によって強化されている。

BRICSの首脳はSDGs(持続可能な開発目標)や誰もが金融サービスを受けられる「金融包摂」、デジタル公共財について語ることが多い。これら官僚的な語句の根底にあるのは、BRICS諸国の立場が異なっても、各加盟国の特定の利益には合致しているという計算だ。BRICSはこの論理が成り立つ限り、華々しくはないにしても実用的な枠組みであり続けるだろう。

関連英文はNikkei Asiaサイト(https://s.nikkei.com/3HUrFgo)に
中ロけん制の機能も

「BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)」の名付け親であるエコノミストのジム・オニール氏は、「中国は欧米のようになりたいのだと思っていた」と自らの誤算をふり返った。現実には世界2位の経済大国に上りつめた中国は、やはり民主主義と異なる価値観を持つロシアとともに、地政学リスクを増幅し世界を揺さぶり続ける。

4カ国に南アフリカが加わり「BRICS」として首脳が集うようになった意義は小さくない。民主主義の考え方を共有しうる国々が、有力新興国グループのなかで存在感を高めたからだ。6月の主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)にはインドと南アも招待された。使いようによってBRICSは、先進国が中ロをけん制する有力な枠組みになりうるだろう。

(編集委員 小平龍四郎)』