北朝鮮ミサイル、22年は既に28発 迎撃対応難しく指標で読む参院選争点 「反撃能力」で抑止案

北朝鮮ミサイル、22年は既に28発 迎撃対応難しく
指標で読む参院選争点 「反撃能力」で抑止案
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『北朝鮮が2022年に撃った弾道ミサイルは過去最多の28発となった。低空を変速軌道で飛行する新型などは従来の迎撃システムによる対応が難しい。日本を攻撃する国への「反撃能力」を保有し、抑止力を高める手段の是非が参院選の争点に浮上する。

北朝鮮は6月上旬、短時間に複数拠点から計8発を撃つ異例の行動に出た。これまで1日あたりで最も多かった7発の記録を更新した。相手の対処能力を量で上回る「飽和攻撃」の練度を上げる狙いとみられる。

技術の進化も著しい。北朝鮮が3月24日に発射した大陸間弾道ミサイル(ICBM)は通常の角度なら米国全土が射程に入る。1月には北朝鮮が「極超音速型」と主張するミサイル発射もあった。

日本はミサイル防衛で海上のイージス艦と地上の地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)の二段構えで撃ち落とす体制をとってきた。放物線軌道で飛来する弾道ミサイルを主に想定していた。

レーダーで探知しにくい低空や変則軌道で飛ぶミサイルになると迎撃の難易度は高まる。大量に撃ち込む飽和攻撃も迎撃の精度が落ちる要因となりうる。

与野党の一部には従来の迎撃能力を拡充するだけでなく、日本を攻撃すれば反撃されると思わせる能力を身につけるべきだといった意見が広がる。自民党は公約で弾道ミサイル攻撃などの武力攻撃への反撃能力保有を提起した。

「総合政策集」には反撃の対象について「相手国のミサイル基地に限定されるものではなく相手国の指揮統制機能なども含む」と掲げた。発射を指示する司令部なども含めれば抑止力が増すとみる。

野党にも反撃能力に理解を示す政党がある。日本維新の会は「積極防衛能力」を提唱し、反撃能力の手段の一つとなる中距離ミサイルの整備を検討する。国民民主党は「打撃力(反撃力)」を主張した。

立憲民主党は抑止力と対処能力の強化など「着実な防衛力整備」を訴えるものの、反撃能力には慎重だ。西村智奈美幹事長は「保有、行使すれば敵国からさらに大きな反撃を受ける可能性が極めて高い」と発言した。

反撃能力はどうあるべきなのか。論点のひとつが「専守防衛」との関係だ。専守防衛は憲法9条に基づく防衛の基本方針で、防衛力を自衛のための必要最小限度に限っている。

攻撃の兆候が明白な場合は事前の反撃も許容されるのか。反撃の対象に政府の中枢機能などを含めるのか。検討すべき課題は多い。

神保謙慶大教授は「相手がどういう攻撃をしかけてくるかによって必要最小限の解釈は変わる」と話す。「各党はどういう種類の能力を持つのがよいかをパッケージで分かりやすく示すべきだ」と提起する。

現実の脅威に即してどうすれば実効性を高められるのかといった視点も重要だ。政府は相手と離れた位置から攻撃できる国産の長射程ミサイル開発を始めている。各党は現時点でどんな装備なら対処可能なのかを明示していない。

実際に反撃するならば、自衛隊の態勢も点検する必要がある。

東日本大震災の際は、統合幕僚長が首相官邸への報告などに時間を割かれ部隊運用に目が行き届かなかった。自衛隊の指揮と政府との調整を統幕長が兼務するままでは、反撃を巡り米軍との擦り合わせが滞る可能性がある。(根本涼)

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