スマホによる脳の「過労」 自覚し適切な処置を早稲田大教授 枝川義邦氏

スマホによる脳の「過労」 自覚し適切な処置を
早稲田大教授 枝川義邦氏
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC20C660Q2A620C2000000/

 ※ 『スマホのせいで脳は朝から晩まで大量の文字や映像といった過度な情報処理を迫られる。情報を一時的に記憶し処理する脳の部位がひっきりなしに稼働している状態で、物事への対処が遅くなったり脳が疲労したりしてしまう』…。

 ※ それほど「脳」を酷使して、一体何を「手に入れる」「達成する」つもりなのか、ということを考えないとな…。

 ※ 「情報」を脳に流しているだけでは、「ものを考えた」ことには、ならない…。

 ※ 「取得した情報」を、「有機的に連結させて」「いつでも、使える状態」にしておかないとな…。

 ※ それが、「考える」ということだ…。

 ※ そういうことは、「考え続ける」ことでしか、達成できない…。

 ※ 情報取得 → 情報の連結 → 連結させた「情報群」を使って、さらなる情報の取得→ さらなる、情報の連結…、そういうサイクルだ…。

 ※ 人工知能や、機械学習と違って、その「連結の組み合わせ」は、ほぼ「無限に」ある…。

 ※ 幸い、そういう「作業」にも、「脳の報酬系」は反応する仕組みになっているようだ…。

 ※ よく聞く「ドーパミン」がドバドバ出たり、するんだろうか…。

『スマートフォンの過剰使用による弊害が指摘されている。スマホを使いすぎて「過労」状態になった脳は日常生活やその人の性格にまで影響を及ぼしかねない。職場でも家でも手放せない存在となったスマホとどう付き合うべきか。脳科学者の枝川義邦・早稲田大理工学術院教授に聞いた。

枝川義邦・早稲田大学理工学術院教授

――スマホの日常的な使用は脳にどんな影響を与えていますか。

「脳への影響から見たスマホの一番の問題点はいつでもどこでも簡単に使える点にある。スマホのせいで脳は朝から晩まで大量の文字や映像といった過度な情報処理を迫られる。情報を一時的に記憶し処理する脳の部位がひっきりなしに稼働している状態で、物事への対処が遅くなったり脳が疲労したりしてしまう」

「怒りっぽくなるなど、社会生活にも様々な影響が出る。脳が疲れていると何かを『やめる』判断をすることが難しくなる。長時間漫然とネットサーフィンをしたり買い物をしたりしてしまうことにつながる」

「物忘れが増えたと実感する人もいるかもしれない。会議中に浮かんだアイデアなどを、いざ後で発言しようとすると思い出せなかったりする。脳の『過労』を招いている状態だ」

――若年層への影響を強く懸念する声があります。

「若者のように時間や気持ちに比較的余裕がある年代はスマホの過剰使用に陥りやすい。動画を見ながらSNS(交流サイト)に投稿するなど、デジタル上で複数のことを同時にこなす『マルチタスキング』を好む若者もいる。料理などの能動的な行為によるマルチタスキングとは異なり、脳には大きな負担になる」

――なぜ脳が疲労するのにスマホをやめられないのでしょうか。

「脳の『報酬系』と呼ばれる回路を刺激するためだ。スマホは脳にとって魅力的に設計されており、ドーパミンなどの快楽物質を放出させて簡単にはやめられなくなる。『FOMO(取り残される恐怖)』を感じやすい人もスマホの使用をやめられない傾向が強い」

――うまく付き合うにはどうすればいいですか。

「何も考えずぼーっとする時間をつくることがまず効果的だ。その場で目をつぶるだけでもよい。スマホを1時間使ったら5~10分休むなど、休息をこまめに取ることもポイントになる。意外に効果があったのはスマホの画面を白黒表示にすることだ。スマホを脳にとって『つまらない』ものに変えてしまえばいい」

「重要な連絡以外は通知が来ないようにしたり、スマホを別の部屋に置いたりするなど、簡単に手に取れない環境に自らを置く必要がある。疲労して判断力が落ちた脳には『疲れ』を自覚することさえ容易ではない。まずは脳の仕組みを知るなどして、スマホが引き起こす心身の不調に耳を傾けることが重要だろう」
提供側に変化促す必要も

スマートフォンが浸透して久しいが、IT(情報技術)企業は常に便利なアプリやゲームをそろえたり、使い勝手を高めたりしてその魅力を磨いてきた。生活は圧倒的に便利になったが、弊害も広く知られるようになった。

深刻なのは中高生などの若年層に広がる依存の問題だ。世界保健機関(WHO)は2019年、ギャンブルなどと並ぶ依存症として「ゲーム障害」を認定した。ゲームを含むネット依存の疑いがある若年層は世界的に増えており、学校生活や健康にも支障をきたしている。低年齢化は近年さらに進んでおり、自制する力が弱い若者がのめり込む設計を続けてきた提供者側にも変化を促す必要がある。

今後もスマホの使用は避けられず、何より受けてきた恩恵は大きい。だからこそスマホとの付き合い方を見つめ直し、過度に依存しない使い方を意識していきたい。

(水口二季)

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