[FT]北米レアアース採掘を妨げる偽情報 親中勢力が関与

[FT]北米レアアース採掘を妨げる偽情報 親中勢力が関与
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB304N70Q2A630C2000000/

『中国政府を支持するグループがSNS(交流サイト)上で環境活動家を装い、米国やカナダのレアアース(希土類)生産者の事業を妨害しようとしている。サイバーセキュリティーに関するコンサルティング会社、米マンディアントがリポートを公表した。

フェイスブック・ツイッターの偽アカウント使用

マンディアントによると、攻撃を仕掛けているのは「ドラゴンブリッジ」と呼ばれるグループだ。フェイスブックやツイッターの偽アカウントを使い、米政府の支援を受けて豪ライナス・レアアースが米テキサス州に建設中の精製設備が「周辺地域を取り返しのつかない環境ダメージにさらす」だけでなく「放射能汚染」ももたらすとの主張を展開している。

マンディアントはドラゴンブリッジを「中国寄りのネットワーク」と評したが、それ以上詳しくは説明していない。シンクタンクのオーストラリア戦略政策研究所(ASPI)はフィナンシャル・タイムズ(FT)に対し、同研究所がマンディアントのリポートを裏付けたとしている。

米国だけでなく、欧州、アジアの同盟国はリチウムやレアアース、コバルトなどの重要鉱物の調達先を中国以外にも確保するためにサプライチェーン(供給網)の構築を進めている。これらの鉱物は再生可能エネルギー技術や電気自動車(EV)、ハイテク兵器に欠かせない。

重要鉱物の加工は中国が世界的にほぼ独占しており、中国との外交・通商関係が悪化する近年は米国で懸念が高まっている。

コロナ、米国政治でも情報工作

マンディアントの調査結果は、ASPIで2019年からドラゴンブリッジを追跡しているサイバーセキュリティー政策の専門家アルバート・チャン氏のお墨付きを得ている。

同氏は29日に公表したリポートの中で「中国共産党の支援を受け、しつこく活動しているネットワークは今回初めて戦略的な目的のために民間企業を標的にしている」と述べた。
同氏によると、この情報操作は「広範囲にわたる組織的な活動の一環であり、中国が輸出するレアアースへの依存軽減を目指す民主主義国家の試みを妨害するものだ」という。

マンディアントがドラゴンブリッジに初めて注目したのは、19年に香港の反政府抗議運動を非難する情報キャンペーンがフェイスブックやツイッター、ユーチューブ上で展開されたときだった。ドラゴンブリッジはその後、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)や米国政治など幅広い領域で活動を展開するようになった。

マンディアントはブログ記事で「最近では、ドラゴンブリッジの仕業と思われる情報操作をSNS上で幅広く確認し調査している」と述べている。

マンディアントはカナダのアッピア・レアアース・ウラニウムや米USAレアアースに対するドラゴンブリッジによる情報操作も検知したという。また、バイデン米大統領が重要鉱物の国産強化に向けて朝鮮戦争下で成立した「国防生産法」を発動したことに対する工作も確認した。

マンディアントによると、情報操作で使用されていたのは「SNSやオンラインフォーラム上の偽アカウントで、テキサス州の住民を装ってプラント周辺の環境や健康問題への懸念をかき立てようとしたものもある」という。

フェイスブック上では「私は友人とともに、ライナスがテキサスに建設しているレアアースの精製設備に反対している。何も策を講じなければ、ライナスの排出物は直接的・間接的に周辺住民の健康に影響を及ぼす。この汚染は取り返しがつかない」という投稿も見られた。これはコックス・テリと名乗る人物の投稿だが、マンディアントはドラゴンブリッジによるものと判断している。

標的対象はマレーシアで環境対策を問題視

ライナスは声明で「この数年間、わが社はマレーシアで情報工作の標的になってきたが、偽情報を拡散しているSNSの偽アカウントと政治的思惑が直接結びついていることが証明されたのはこれが初めてだ」と述べた。同社は14年に環境団体グリーンピースの報告書でマレーシアの事業での環境対策が問題視されたが、その点について同社は自社を弁護した。

米国防総省は「調査の結果、この情報操作を明らかにしたマンディアントに感謝の意を表したい。我々は今後もパートナーとともに、この件だけでなく他のサプライチェーンへの投資に関しても引き続き正確な情報を提供していく」と語った。

By James Fernyhough

(2022年6月29日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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