米政権、政策実現に最高裁の壁 保守寄り判断相次ぐ

米政権、政策実現に最高裁の壁 保守寄り判断相次ぐ
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『【ワシントン=芦塚智子】米連邦最高裁で共和党の考えに近い保守寄りの判断が相次いでいる。人工妊娠中絶の権利を認めた判決が覆っただけでなく銃保有の権利を拡大したり、連邦政府の温暖化対策規制を制限したりした。民主党のバイデン政権の政策実現を阻み、政権運営を揺るがす。

最高裁は6月30日、2021年度の会期(21年10月から22年6月)を終えた。判事9人で構成し、トランプ前大統領が保守派3人を指名したことで保守派6人、リベラル派3人と保守に大きく傾斜した。リベラル派のブライヤー判事が30日に正式に引退したが、後任のジャクソン判事もリベラル派と位置づけられて構成は変わらない。

今会期は米世論を二分する重要案件で保守派判事6人が多数派意見を支持し、リベラル派3人が反対に回る党派の色分けが鮮明な判断が目立った。

30日には発電所の温暖化ガス排出について、連邦政府による規制を制限する判断を示した。南部ウェストバージニアなど共和党の支持者が多い州の司法長官らが、米環境保護局(EPA)には規制の権限がないと訴えていた。バイデン大統領は声明で「米国を後退させようとするもう一つのひどい判断」と批判した。

最高裁は24日、中絶の権利を憲法上の権利と認めた1973年の「ロー対ウェード判決」を覆したばかりだ。バイデン政権は女性の権利拡大を訴えており、中絶の権利維持はその柱になっていた。このときもバイデン氏は「最高裁の極端なイデオロギーと悲惨な誤りの表れ」と糾弾。11月の中間選挙で中絶の権利を争点にした。

政策停滞に焦るバイデン氏は禁じ手にも言及する。30日、訪問先のスペインの首都マドリードで開いた記者会見で「フィリバスター」と呼ばれる議会規則の適用除外に触れた。フィリバスターとは上院(定数100)で法案採決に向けて審議を打ち切るには60人の賛成を必要とするルールだ。

民主党は50議席(無所属を含む)にとどまり、共和党の協力が得られないと重要法案の採決ができない。中絶や温暖化対策など世論を二分する分野では超党派合意が望みにくい。

バイデン氏は中絶の権利維持を定めた連邦法制定に関してはフィリバスターの適用を除外すべきだと訴えた。いまよりも政策を推進しやすくなるが、与野党対立に拍車をかける公算が大きく、2020年の大統領選で公約とした国の分断修復と明らかに逆行する。

三権分立の揺らぎを指摘する意見も出てきた。サムフォード大学のロス教授(法律・倫理学)は、バイデン氏が中絶に関する判断を批判した演説を「異例」と指摘。「最高裁自体への批判は避けたものの、特に中間選挙に結びつけ、法的議論に触れず政治の問題としたのは不適切だ。大統領は三権分立の侵害につながるような発言は避けるべきだ」と指摘する。

米ギャラップ社が6月1~20日に実施した世論調査によると、米国民の最高裁への信頼度は前年から11ポイント下がり25%と過去最低に落ち込んだ。民主党左派からは、リベラル派判事を増やすための最高裁判事の増員を求める声だけでなく、保守派判事の罷免を要求する動きもある。

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