米・ロシア、G20舞台に外交戦 新興国の取り込みに躍起

米・ロシア、G20舞台に外交戦 新興国の取り込みに躍起
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『ウクライナ問題で対立する米国とロシアが、中国やインドなど新興国が参加する20カ国・地域(G20)を舞台に、外交戦を展開している。世界の国内総生産(GDP)の約8割を占めるグループで、新興国を中心としたメンバー国を自国の陣営に引きつけることが、国際社会での影響力の確保のために不可欠なためだ。

ロシアのプーチン大統領は6月30日、モスクワのクレムリン(ロシア大統領府)でG20の議長国を務めるインドネシアのジョコ大統領と会談した。11月にインドネシアのバリ島で予定するG20首脳会議(サミット)の開催に向けたジョコ氏の努力への支持を表明した。

プーチン氏はかねてG20サミットに出席する意向を示している。ウクライナ侵攻後も自身の政権基盤は揺るぎないと国際社会にアピールできる利点もあるためだ。G20には中国など友好国も多く、会議や個別会談を通じて米国が主導するロシア包囲網が広がっていないことを示す機会にもなる。

一方、バイデン米政権はG20からのロシアの排除を唱える主戦論者だ。「ロシアの国際社会や国際機関への参加は従来通りとはいかない」(米政府高官)との立場で、ロシアを国際社会から孤立させたい考えだ。インドネシアにもロシアの出席に反対する方針を伝えた。

世界のGDPの約8割、人口の3分の2を占め、国際的影響力のあるG20からロシアを排除すれば、同国の孤立を示す象徴的な動きとなる。2014年のクリミア侵攻後、民主主義国家で価値観を共有する日米欧など主要7カ国(G7)がロシアをG8から追放した経緯もある。

28日までドイツ南部のエルマウで開いたG7サミットでは付属文書に「ロシアは他国を犠牲にして国際規範に明確に違反する限り、世界経済・政治システムの正式なメンバーではあり続けない」と明記した。

ただ、国際社会が一致して圧力をかける構図を演出したいバイデン政権にとり、ロシア排除の主張を強めることはもろ刃の剣にもなる。かえってG20の場でロシアを擁護する声が相次ぐリスクがあるからだ。

実際、G20はロシアへの立場で真っ二つに分かれている。G7や韓国、オーストラリアが厳しい金融・経済制裁で足並みをそろえる一方、中国、インド、インドネシア、ブラジルなどは制裁に加わっていない。

タス通信によると、ロシアのペスコフ大統領報道官は30日、経済の協議体であるG20について「ロシアを抜きにして経済に焦点をあてて話し合うことは不可能だ」と強調した。

G7内ではロシアを巻き込んだ議論が重要だとの見方も出ている。欧州連合(EU)のフォンデアライエン欧州委員長は26日のドイツの公共放送ZDFのインタビューで「プーチン氏が(G20サミットに)来るなら、面と向かって我々の考えを伝える方がいい」と述べた。

G20サミットで議長を務めるジョコ氏はプーチン氏とウクライナのゼレンスキー大統領の双方がオンラインも含めて会議に出席することで米ロの対立に折り合いをつけ、食料やエネルギー危機を協議したいとしている。ゼレンスキー氏の参加はバイデン米大統領が提案した。

ジョコ氏はプーチン氏との会談に先立つ29日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)でゼレンスキー氏と会い、G20サミットへの出席を改めて呼びかけた。

G20は来週、バリ島で外相会議を開く。ロシアのラブロフ外相が対面で出席する方針で、11月のサミットをにらんだ外交の前哨戦となる。

(マドリード=坂口幸裕、ジャカルタ=地曳航也)

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