中国、パキスタンに自国警備会社の受け入れ要請

中国、パキスタンに自国警備会社の受け入れ要請
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『中国が、自国の警備会社のパキスタンにおける活動の容認を同国に求めていることがわかった。パキスタンは中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」の要の一つだが、中国人や同国の資産に対するテロが相次いでいるためだ。パキスタン側は拒否しているが、中国側は多額の経済支援をテコに、受け入れを迫る構えだとみられている。

2人のパキスタン政府関係者によると、中国の国家安全省は6月上旬、パキスタンに対し、中国の警備会社がパキスタン国内で仕事をする許可を求めた。だが、パキスタン内務省はこれを拒み、同国の治安部隊が中国の利益を守ると保証した。

中国の要求の背景には、パキスタン側に対する不信感がある。

パキスタン南部のシンド州カラチでは4月、中国語教育機関「孔子学院」の関係者が乗った自動車を爆破するテロがあり、中国人を含む多数が死傷した。パキスタンの反政府武装組織「バルチ解放軍」が犯行声明を出した。バルチ解放軍はシンド州に接するバルチスタン州の分離独立を主張。同州でインフラ整備を進める中国を敵視する。

2021年7月にはパキスタン北部で、水力発電所の工事現場に向かうバスが爆発して峡谷に転落し、ここでも中国人を含む多数が死傷していた。イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(TTP)」の関与が疑われている。

パキスタンでは4月、シャリフ首相への政権交代があった。同国のブット外相が5月に中国を訪問した際に出した声明で、両国は「中国は中国人の安全に関するパキスタンの貢献を評価する」ことで一致した。「テロ対策と治安維持で協力を強化する」ことでも合意した。中国外務省が明らかにした。

ドイツの調査機関「メルカトル中国研究所」の報告書によると、中国には民間の警備会社が5000社以上あり、このうち20社が国外でも活動している。

シンガポールの南洋工科大の専門家は、仮に中国の警備会社がパキスタン領内で中国の利益を守る活動を始めれば、パキスタンにおける反中感情は高まると推定する。

バルチ解放軍は、中国がバルチスタン州を植民地化し、一帯一路の事業である中国・パキスタン経済回廊(CPEC)を進めながらパキスタンの資源を搾取していると非難している。

南洋工科大の専門家は「パキスタンにおける中国の利益は、南部でバルチ解放軍、北部ではTTPの脅威にさらされている。中国がパキスタン治安当局を信用できないのは当然だ」と指摘する。「中国政府は自国民が海外で殺害された場合、中国の市民らが反発する事態を懸念している」というわけだ。
一帯一路に関して記者会見するパキスタンのイクバル計画・開発・改革相(左)と中国の姚敬駐パキスタン大使(イスラマバード、2017年12月当時)=ロイター

ワルシャワにある戦争研究大学アジア研究所の所長は「パキスタンにとっては主権に関わる話だ」と指摘する。だが、同国は経済が危機に陥っており、中国の支援を求めている。パキスタンは6月後半、外貨準備を積み増すため、中国の銀行団から23億ドル(約3100億円)の融資を受けたと発表した。

米シンクタンク、ウィルソンセンターの専門家は、圧力をかけ続ければパキスタンが軟化すると中国は考えているかもしれないとの観測を示した。

(寄稿 イスラマバード=アドナン・アーミル)

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