NATO首脳会議、北欧2カ国の加盟で合意

NATO首脳会議、北欧2カ国の加盟で合意
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『【マドリード=竹内康雄】北大西洋条約機構(NATO)は29日、マドリードで開いた首脳会議で、北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟を認めることで合意した。2023年までに加盟が実現する可能性がある。欧州の防衛能力が向上し財政面の貢献も期待できる一方で、ロシアとの緩衝地帯がなくなり、短期的には緊張が高まる懸念がある。

「加盟で両国はより安全になり、NATOはより強くなる」。29日採択の首脳宣言は、加盟に向けた進展を歓迎した。

ストルテンベルグ事務総長は29日の記者会見で「(両国の加盟に必要な)批准をなるべく早くできるようにしたいという意思が共有されている」と強調した。

今後、詳細を交渉した上で具体的な文書を作成。全30カ国が批准して加盟が実現する。手続きには数カ月から1年程度かかるとみられている。

ロシアのウクライナ侵攻が北欧2カ国の加盟申請につながったことから「プーチン大統領によるNATO加盟国を増やさないようにしようとする試みは失敗した」とも述べた。

北欧2カ国の加盟がNATO強化に貢献するのは主に3つの側面がある。

ひとつはNATO全体の防衛力の底上げだ。人口550万人のフィンランドは戦時兵力が28万人にのぼる。NATO加盟国全体の兵士数の1割弱に相当する。

同国は兵役もあるほか、2月には米国の最新鋭ステルス戦闘機F35を64機購入すると決めた。スウェーデンは戦闘機を製造するサーブを擁するなど、両国とも最新鋭の兵器をそろえる。

2カ国は長年、NATO加盟国と共同訓練を実施しているため、部隊の運用上も大きな問題は生じない見通しだ。

ふたつ目は、加盟国のデンマークとノルウェーに新たに2カ国が加わることで北欧を面として防衛することが可能になる。スウェーデンはゴットランド島、フィンランドはオーランド諸島というバルト海の要衝を領有している。

シーレーンの確保でロシアは不利な立場を意識せざるを得ない。ロシアの飛び地カリーニングラードに拠点を置くバルト艦隊などににらみをきかせられる。

何より高度な民主主義国で、財政が豊かな両国が加わる意義は大きい。フィンランド国防省によると、同国の国防予算は22年には51億ユーロ(約7300億円)となり、5年前の2倍弱になる。国内総生産(GDP)比では1.96%となり、NATOの目標である2%に近づく。

近年のNATO拡大は十分に民主主義が根付いているとはいえないバルカン諸国などが中心で、NATOは人材育成と装備向上の両面に資源を割いてきた。

一方で、フィンランドは西側と東側の間に位置する「緩衝地帯」の役割もあったが、それが消滅することになる。NATOとロシアの間で倍増することになる陸上の境界やバルト海などで緊張が高まる恐れもある。

北欧2カ国がNATOに加盟申請したのは5月半ばだが、加盟国のトルコが反対を示し続けていた。28日にエルドアン大統領が2カ国首脳、ストルテンベルグ氏と会談し、加盟支持で合意した。

北欧2カ国による武器禁輸の解除、トルコがクルド系武装組織「クルド労働者党」(PKK)と同一視する組織への支援停止などを3カ国の合意文書に明記した。28日にはエルドアン氏との会談に消極的だったバイデン米大統領とも電話協議し、トルコが求めるF16戦闘機売却を巡ってマドリードで会談する約束を取り付けた。

これらを「成果」にトルコが反対を取り下げた格好だが、米政府高官は「(米国は)トルコにいかなる譲歩もしなかった」と述べた。

合意文書は「覚書」にとどまり、法的拘束力はない。トルコの要求のうち、在北欧のクルド系活動家の引き渡しなどは検討課題として残った。履行状況によっては、批准手続きの段階でトルコが再び異を唱える可能性は残る。

ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、NATO首脳らを前にオンラインで演説した。ウクライナ大統領府によると、ゼレンスキー氏は自国を守るために高度な兵器や財政支援が必要と主張。「毎月50億ドル(約6800億円)が必要だ」と力説した。ロシアとの戦いは「将来の世界秩序がどうなるかを決める戦争だ」と支援の拡充を求めた。』