[FT]中国はザンビアの債務再編に応じるか

[FT]中国はザンビアの債務再編に応じるか
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『アフリカ南部ザンビアのヒチレマ大統領は、2021年の大統領選で当選してから数カ月のうちに、国際通貨基金(IMF)から14億ドル(約1900億円)の金融支援を引き出すことに成功した。だが、債務に苦しむ同国の全債権者、とりわけ中国と合意にこぎ着けるのは、はるかに長い時間がかかりそうだ。

中国人民銀行は不良債権処理を強いられるなどの再編手法を受け入れる余地があるという=ロイター

中国は現在、低所得国向けの2国間融資で最大の貸し手となっている。ザンビアが直面する苦境は、中国がデフォルト(債務不履行)に陥った国の債務再編に率先して取り組むかどうかを測る試金石となる。中国はこれまで、借り手とは秘密裏に1対1で交渉している。
スリランカがデフォルトに陥り、パキスタンがその寸前に至るなど、経済への圧力が高まっているいま、中国に多額の債務がある国は、ザンビアの債務問題の進展に目を光らせている。中国以外の債権者もまたしかりだ。ザンビアの危機はまた、利害の異なるさまざまな中国の政府機関が融資し、それが債務再編に向けた取り組みを必要以上に複雑にしていることも浮き彫りにしている。

パリクラブに加盟していない中国

世界銀行のマルパス総裁は、フィナンシャル・タイムズ(FT)のインタビューで「途上国の債務の割合は、過去10年間で中国および民間部門へと劇的にシフトしている」と語った。「中国は(ザンビアの他の債権者とかかわることが)国際社会と協調する上で重要だと認識している。中国が債務再編における自国の役割を認識しているという点で、これは重要な一歩だ」

ザンビアは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)下でデフォルトに陥った最初の国となり、20年は170億ドル相当の対外債務の返済が滞った。IMFとの金融支援交渉に臨んだ結果、同国は経済成長と開発を再び促進できるよう、債権者と協議して迅速に行動する必要に迫られている。

IMFは資金支援の条件として、他の公的債権者(最大の債権者は推計60億ドルを融資した中国)から債務救済に合意するという「確約」を得るよう求めている。中国がどのような条件で融資しているのか、今後どう対応するのかはほとんど分かっていない。

中国は、欧米諸国が供与した融資の再編を目的に発足したパリクラブ(主要債権国会議)のメンバーではなく、IMFが財政難の債務国に課す緊縮措置に懸念を表明してきた。中国では、政策銀行から商業銀行までさまざまな機関が融資し、それぞれ優先事項は異なる。米ジョンズ・ホプキンス大学中国アフリカ研究所(CARI)のデボラ・ブローティガム所長によると、中国の権威主義はここでは「一本化」されておらず、むしろ「断片化」していると理解することが重要だという。

ザンビアの場合、貸し手には中国国家国際発展協力署のほか、中国輸出入銀行や中国国家開発銀行が率いるグループが含まれる。CARIによれば、融資の条件は異なるという。

ザンビアの債務整理は長期戦になる公算が大きいが、これはソブリン債(国債や政府機関債など)のデフォルトに世界がうまく対応できていないことも物語っている。世界銀行は、ソブリン債のデフォルトが近いうちに1980年代の水準まで急増する可能性があると警鐘を鳴らしている。

債務減免したがらない中国の貸し手

ザンビアに助言する仏系投資銀行ラザードは6月、主要20カ国・地域(G20)が迅速な債務再編を実現するためにパンデミック下で設けた共通の枠組みは曖昧すぎると指摘した。調整に関する指針が欠如しているため「(民間であれ公的であれ)債権者だけでなく、債務国にも多くの不満が生じる」という。

中国のかたくなな姿勢をたびたび批判してきたマルパス氏は、枠組みの見直しを呼びかけている。債務再編にあたっては、民間債権者が後から既成事実を一方的に提示されるのではなく、公的債権者と一緒に交渉に臨むべきだという。

だが、1兆ドル規模にのぼる広域経済圏構想「一帯一路」を背景に、中国は今世紀に入って最も重要な2国間融資の貸し手となっており、同国政府の同意なくして改革は実現しそうにない。

英資産運用大手Abrdn(旧スタンダード・ライフ・アバディーン)で新興国債券の投資責任者を務め、ザンビアの債権者を代表する委員会のメンバーでもあるケビン・デーリー氏は「中国には、共通の枠組みの推進を遅らせたり、場合によっては阻止したりする影響力がある」と話す。「枠組みの成否はザンビアにかかっているといっても過言ではない」

中国の貸し手は、他の民間債権者とは異なるアプローチをとっている。返済に苦しむ債務者に対し、返済期限の延長や支払い猶予を認めることはいとわないが、国内の政治的反発を恐れ、債務の減額を受け入れることには消極的だと観測筋はいう。この姿勢は債券保有者などの民間債権者とは相いれない。

中国は、新たな解決策を見いだすよう求める圧力にさらされていることを認識している。ある政府顧問は「融資の延長や(主に無利子融資の)債務救済を中心とする既存の方法は、続けるのがますます難しくなっている」と明かす。

ただ、中国財政省と中国人民銀行(中央銀行)は、解決策を巡って意見が対立している。「財政省は一般的に、譲歩すれば財政負担が膨らむため、慎重姿勢に徹している。同省は国家開発銀行や輸出入銀行といった政策銀行の筆頭株主であるため、無利子融資や低利融資の再編に伴う損失を負担することになるからだ」と政府顧問は語った。

また「それと対照的に、人民銀行の規制を受けている中国工商銀行(ICBC)などの商業銀行、ひいては人民銀自体も、損失の早期穴埋めにつながるが、貸し手側が不良債権処理を強いられる可能性のあるさまざまな再編手法を受け入れる余地がある」とし、各行は協調して損失を最小限に抑えることに前向きだと付け加えた。
実行に移すかどうかに注目

注意を促す声もある。米ブルッキングス研究所のダグラス・レディカー上級研究員は「中国が歩み寄るということかといえば、決してそうではない」とし、「中国の協力的な一面が、別の事例でも発揮されるというのは甘い考え」だと強調した。

ヒチレマ大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が最近実施した電話会談が突破口となり、6月にはパリで中国が共同主導する協議が実現した。フランスの当局者は、協議はうまく運び、今後も話し合いは続けられると述べた。仏財務省国庫局長で、パリクラブの議長を務めるエマニュエル・ムーラン氏は「中国は約束をした」とし、「今後は実行に移す必要がある」と語った。

ザンビアの当局者は、そうしたかすかな希望を胸に、債務交渉で合意にこぎ着けられると楽観視している。ザンビア政府のある高官は「中国がようやく乗り気になり、IMFの迅速な対応の必要性を声高に主張しているという事実を考慮すると、いまこそもう少し忍耐強く事を進めるべきときだ」との考えを示した。

By Jonathan Wheatley, Joseph Cotteril and Sun Yu

(2022年6月28日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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