岸田首相、NATO会議に初出席 アジア安保枠組み重層に

岸田首相、NATO会議に初出席 アジア安保枠組み重層に
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『【マドリード=竹内悠介】岸田文雄首相は29日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に日本の首相として初めて出席した。インド太平洋地域の韓国、オーストラリア、ニュージーランドの3カ国との首脳会議も開いた。東アジアの安全保障体制を強化するため多国間の枠組みを広げ日米同盟を補強する。

中国にらみ、協力文書改定へ

首相はNATO首脳会議で「欧州とインド太平洋の安全保障は切り離せない」と訴えた。中国が海洋進出する東・南シナ海を例示し「力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続されている」と強調した。

首相はNATOのストルテンベルグ事務総長と会談し、サイバーや海洋安保の取り組みを強化する協力文書を改定すると確認した。自衛隊とNATO軍がそれぞれの演習にオブザーバー参加できる枠組みも整える。

日本はNATO加盟国ではない。アジア太平洋の「パートナー国」として招待を受けた。NATOは加盟国が攻撃された場合、全体への攻撃とみなして自衛権を発動する「集団安全保障」を敷く。アジアは本来、NATOが防衛する対象には含まれない。

軍備増強を進める中国の存在とウクライナ侵攻が重なりNATOの考え方が変わり始めた。

アジアにはNATOのような集団安保の体制がない。米国の抑止力に委ねる「ハブ・アンド・スポーク型」をとっており、日本も日米同盟を東アジアの安保の軸に据えてきた。

東アジアの安保環境は厳しさを増す。中国は核弾頭が搭載できる中距離ミサイルを1250発ほど保有し日本は射程圏内にある。北朝鮮も大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの開発を急ぐ。

仮に台湾有事が起これば自衛隊基地も攻撃対象になる可能性がある。日本は危機に対処するためこれまで協力が少なかった地域との関係づくりが一段と欠かせなくなった。欧州各国も重要な協力先と位置づける。

具体的な分野としては、自衛隊を交えた多国間訓練や防衛装備品の開発などを見据える。

インド太平洋では海上自衛隊が加わる多国間での訓練が2017年度から21年度までの4年で2倍に増えた。英国やフランスなど欧州諸国の参加が目立つ。

防衛分野の研究開発も進める。35年に自衛隊への配備を目指す次期戦闘機は英国との共同開発を調整する。これまで防衛装備の開発は米国頼みが顕著だったが、協力先が欧州に広がる。
「韓豪NZ」とも協力拡大

首相はNATO首脳会議にあわせ日韓豪NZの首脳会議を1時間ほど開いた。4カ国はNATOのアジア太平洋のパートナー国で「AP4」と呼ばれる。

4カ国が主導しインド太平洋諸国とNATOとの協力を強化すると確認した。ともに中国への脅威の認識は共通だ。

韓国は核・ミサイル開発を進める北朝鮮と中国の連携を警戒する。

豪州やNZと関係が深い太平洋地域では中国が基地の建設計画を進める場所があるとされ、ソロモン諸島とは4月に安保協定を結んだ。

日米豪印4カ国の枠組み「Quad(クアッド)」は21年に初の首脳会議を開き、22年に定例とした。協力分野は経済の域を超え、2年続けてベンガル湾で共同の軍事訓練を実施した。

米国が主導し、太平洋島しょ国を気候変動対策や海洋安保で支援する日米英豪NZの新たな枠組みも今月できた。

慶大の鶴岡路人准教授は「中国の動きがアジア以外でも広がっており、米国の相対的な地位が低下しつつある」と指摘する。「日米同盟だけでは対処しきれない問題も増え、日本は他の国との枠組みで補う必要が出てきた」と語った。

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詫摩佳代
東京都立大学 法学部教授
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分析・考察

国際社会の分断に伴い、様々なグローバルイシューに関し、対処の枠組みが重層化しています。

国際社会の平和の維持もその一つです。露の侵攻に対する国連安保理の動きに代表されるように、グローバルなレベルでの対処枠組みが機能不全に陥る中、国レベル、地域レベル、有志国による対処枠組みが実質的に強化されています。

日本についても、日米同盟を基軸としつつも、多様な脅威のシナリオに備えて、重層的なレベルでの対応能力の強化が不可欠です。

参院選に向けて、反撃能力や改憲に向けた議論も進んでいますが、こうした重層化する安保枠組みを見据えて、国レベルで何をどう補えば良いのかといった具体的な議論が展開されることを願います。

2022年6月30日 9:34 』