キリンがミャンマー撤退決定 全保有株、合弁企業に売却

キリンがミャンマー撤退決定 全保有株、合弁企業に売却
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『キリンホールディングス(HD)はミャンマー国軍系企業と合弁で運営するビール会社「ミャンマー・ブルワリー(MBL)」の全保有株式をMBLに売却する。2月にミャンマー撤退を表明して以降、国軍と関係ない第三者の企業への売却を探ったが、有力な買い手を見つけられずにいた。批判の高まりを避けるため早期撤退を優先する。

29日にMBLが株式譲渡を決議した。キリンHDは30日午後に記者会見を開く。

MBLはキリンHDが51%、ミャンマー国軍系企業のミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)が49%をそれぞれ出資している。キリンHDは2021年2月の軍クーデター直後に国軍系企業に合弁解消を要求。22年2月に保有する全ての株式を6月末までに売却する方針を明らかにしていた。

欧米企業を含め売却先を探したが、人権弾圧を続けるミャンマー国軍への国際的な批判が強まるなか、国軍系企業以外の有望な買い手は現れなかった。国軍系企業に直接売却するとキリンに批判が集まるリスクも考慮し、MBLに買い取らせる仕組みを整えた。売却先選びが長引けば、従業員や取引先への影響も大きくなると判断した。

キリンHDは15年にシンガポールの飲料大手フレイザー・アンド・ニーブからMBL株を697億円で取得し、ミャンマー市場に参入した。キリンHDが国軍系企業に合弁解消を申し入れたことで両社の関係は悪化。21年11月に国軍系企業が現地の裁判所にMBLの清算を申し立てた。

キリンHDも21年12月にシンガポール国際仲裁センター(SIAC)に商事仲裁を提起して対抗するなどし、国軍系企業との交渉は一時途絶えた。22年1月下旬に両社の交渉は再開し、2月に入ってキリンHDがMBL株の売却とミャンマーからの撤退を表明した。

MBLはミャンマーのビール市場で8割のシェアを持つ。クーデター前の20年12月期にはキリンHDの事業利益の約1割を稼いでいた。クーデター後に事業環境が悪くなったことが響き、21年12月期に680億円の減損損失を計上した。

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

人権問題はここ最近アジアでもかなり意識されるようになっていたところに、ウクライナ問題もかさなって一段と重視されるようになっています。人権侵害がある国でビジネスをする場合に、どのようなラインを超えると企業にとって撤退を検討すべきか、はっきりしていません。またロシア制裁でも制裁対象になっていなくても撤退する企業もあれば、継続する企業もあるかと思います。このため企業は進出先でESG観点からの課題をつねに意識して情報収集を行って、リスク管理の一環と位置付けていくことが必要になっています。現地で、日本企業だけでなく、様々な国の多国籍企業とのネットワークを形成して情報交換を増やすことも重要でしょう。
2022年6月30日 12:00
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高橋徹
日本経済新聞社 編集委員・論説委員
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ひとこと解説

合弁パートナーの国軍系企業に売るよりは、国軍系企業下の合弁企業に「自社株」として買ってもらうほうがまし、という判断です。他に買い手が見つからない以上、やむを得ない措置と思います。ミャンマー国軍は外貨の強制両替、輸入ライセンスの復活など、経済統制を強めており、外資の企業活動はますます困難になっています。あるゼネコン関係者は「建設現場で工事が中断したら、我慢できるのはせいぜい3年」と言っていました。現場の資機材のメンテナンス費用ばかりが積み上がるためです。政情の袋小路が長引けば、いまは様子見の日系企業も、次第に撤退例が増えると思われます。
2022年6月30日 12:08 』