[FT]バイデン米政権、イエメンでのサウジ停戦を評価

[FT]バイデン米政権、イエメンでのサウジ停戦を評価
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『バイデン米大統領は2020年の大統領選のさなか、イエメンで親イラン武装組織フーシ派との内戦を主導するサウジアラビアに対し「子供たちを殺害している」と非難した。だがサウジ訪問を数週間後に控え、同氏は驚くべき方向転換を図った。イエメン内戦で「勇気あるリーダーシップ」を示したとサウジをたたえたのだ。

サウジ主導の連合軍による住宅や学校、市場への空爆で民間人数千人が死亡したとして、全米で非難の声が広がっていた=ロイター

米国がエネルギー価格の高騰や高インフレに見舞われ、世界最大のエネルギー輸出国サウジとの関係修復に努めるなかで、バイデン氏は7月に同国を訪問する。訪問時にはサウジ工作員によるジャーナリストのジャマル・カショギ氏殺害を指図したとして接触を拒んできたムハンマド皇太子とも会談する予定だ。皇太子は事件への関与を否定している。

バイデン氏とムハンマド氏の関係はカショギ氏殺害とイエメン内戦により険悪化していた。バイデン氏は大統領就任直後にサウジ向けの武器支援の一部停止とフーシ派のテロ組織指定の解除を決定したが、いまや状況は一変した。イエメンで4月に停戦合意が発効し、6月にさらに2カ月間延長され、バイデン氏は停戦に貢献したとしてムハンマド氏を称賛したのだ。
停戦合意が7月のサウジ訪問後押し
3月、フーシ派の攻撃で被災したサウジアラムコの石油貯蔵施設=ロイター

レンダーキング米イエメン担当特使は「イエメン情勢の変化が両者の関係改善を促し、7月のサウジ訪問を後押ししたのは間違いない」と語る。「停戦したからこそ大統領の訪問が実現した。停戦していなければ、ほぼ不可能だった」

サウジは社会・経済改革に乗り出しているため、イエメン内戦から手を引きたがっていると米政府は考えている。「ムハンマド皇太子は国内経済を発展させ、そこに若者の参加を促そうとしているが、イエメン内戦は紛れもなくその目標の足かせになっている」とレンダーキング氏は指摘する。

イエメン内戦は7年に及ぶ間に病気や栄養失調で数十万人が死亡し、国連が「世界最悪の人道危機」と呼ぶ状況をもたらしたが、停戦合意によってつかの間の安らぎを得ている。国連の報告によると、サウジ主導の連合軍による住宅や学校、市場への空爆で民間人数千人が死亡し、全米で非難の声が広がっていた。

欧米の外交筋によれば、連合軍は標的の絞り込みが次第に改善しており、誤爆した際の透明性も高まっているという。一方、イエメン北部の首都サヌアを支配するフーシ派は、サウジやアラブ首長国連邦(UAE)の石油施設や空港を攻撃したり、イエメン国内で無差別爆撃をしたりして非難を浴びている。

バイデン氏はサウジ訪問を機に、米国や国連が仲介した停戦合意をさらに前進させようとしており、サウジ側は聞く耳を持つだろうとあるサウジ当局者が明かした。「わが国はイエメンにおける国連特使の努力を引き続き支持する」


険しい政治対話への道
バイデン氏がフーシ派のテロ組織指定を解除したことについて、支援団体は救援活動しやすくなると歓迎している=ロイター

だが、停戦が正式な休戦になり、最終的に政治的対話へとつながる可能性は低いと欧米やサウジ、イエメンの当局者はみている。イエメン南部を拠点としサウジとUAEが支援する新政府は、北部発の航空便の再開やホデイダ港の利用、反政府勢力が発行するパスポートの受け入れといったフーシ派の要求に応じている。しかし、フーシ派は譲歩を拒んでいると、あるイエメン政府関係者は語った。

イエメンのアル・エルヤニ情報相は「政府側は国民の利益を考えて譲歩に譲歩を重ねているのに、フーシ派武装勢力は合意の一部を守らず、停戦違反や(南部都市)タイズの包囲を続けている」と主張し、フーシ派がタイズに通じる道路の開放を拒否していることに苦言を呈した。一方、レンダーキング氏は歩み寄りに「希望」を抱いているという。

国際監視団がフーシ派の最高指導部に接触する機会はほとんどなく、ある外交官は彼らを「ブラックボックス」と表現する。フーシ派の当局者はコメントを拒否した。サウジとイエメンの当局者は内戦から手を引きたいサウジの意向や、戦況の泥沼化に対する米国のいらだちを踏まえ、フーシ派が自ら歩み寄る必要などないと考えているのではないかと懸念を募らせる。

サウジへの武器売却の一部停止や迎撃ミサイル供給の遅れなど、バイデン氏の決断がフーシ派をつけあがらせたとサウジ当局者は強調する。トランプ前政権が決定したフーシ派のテロ組織指定をバイデン氏が解除したことも同様の影響をもたらしたが、テロ指定したままではイエメンでの救援活動に支障が出るため、支援団体からは歓迎されている。
バイデン氏の意図を読み違えたフーシ派

サウジ当局者の1人は「フーシ派は米国の姿勢を誤解したからこそ(当初は)停戦拒否を主張した。彼らは米国が内戦を無条件かつフーシ派に有利な形で終わらせるようサウジに圧力をかけているとみていた」と語った。だが、フーシ派はイエメン中部シャブワ州で敗北を喫し、停戦を受け入れるしかなくなった。「連合軍の首都サヌアへの進攻を恐れた」からだ。

レンダーキング氏も同様に「フーシ派はバイデン氏の就任当初の意図を読み違えた」との見方を示した。「大統領のサウジ訪問は米国が同国を守るだけでなく、地域の危機を外交的に解決しようという決意を明確に示すものだ」

とはいえ、停戦交渉は行き詰まったままだ。サウジとイエメンの当局者は、敗北を重ねたフーシ派が軍を立て直すために停戦を利用していると非難する。サウジと米国、イエメンの政府関係者によると、フーシ派によるサウジやUAEへの攻撃を後押ししたイランはいまだに武器供与を続けているという。

一方、イエメン人アナリストのライマン・アルハムダニ氏によれば、連合軍が後押しする政府内には分離派の「南部暫定評議会」など独自に兵員を招集する勢力もあるため、交渉が進展しない場合に政府がどの程度まとまりを維持できるか疑問視する向きもあるという。

交渉に大きな進展がない場合、政治的解決を見ないまま停戦を継続するしかないだろうとあるアナリストは指摘する。

サヌア戦略研究センターのメイサー・シュジャ・アルディーン氏は「停戦が延長され、恒久的な休戦になったとしても問題は解決しない」と強調する。「曲がりなりにも『未解決のまま地域紛争を凍結する』というのがほとんどの関係当事国の常とう手段だ」

By Samer Al-Atrush and Felicia Schwartz i

(2022年6月27日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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