G7、ロシアの戦費遮断急ぐ 石油価格に上限・金も禁輸

G7、ロシアの戦費遮断急ぐ 石油価格に上限・金も禁輸
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『主要7カ国首脳会議(G7サミット)は27日、ウクライナに侵攻したロシアの戦費調達を遮断するため、エネルギーの制裁強化を検討した。ロシア産石油の輸入停止措置は、原油高で狙い通りの成果を上げられていない。価格に上限を設ける案で合意したが、今後の制度設計に課題が多い。

G7サミットは同日、エネルギーや気候変動についてインドやインドネシアなど招待国を加えた拡大会合で議論した。G7首脳はロシア産石油価格に上限を設ける仕組みづくりの開始で合意した。

米政府高官は「ロシアの収入を減らし、他国への副作用を抑えるという2つの目的を同時に達成できる」と説明した。

今後は、各国の財務相など関係閣僚がG7以外の国や企業も交えて制度を設計する。G7各国が提供する石油の輸送サービスを通じて、ロシア産石油の取引価格を一定以下に保つことをめざす。一定水準を超える価格で取引したロシア産石油を運ぶタンカーへの保険提供を禁じる案などが念頭にある。

G7は28日、ロシア産の金の輸入禁止を発表する見通し。同国の金の輸出額は2021年に約2兆円と、石油やガスなどエネルギーの30兆円超に次ぐ主力産品だ。

追加制裁に踏み込むのは、侵攻を終わらせるためにロシアの収入源を断ち切るという目的を達成できていないからだ。米欧日の制裁で原油価格が上昇し、むしろロシアの収入が増えている。

米戦略国際問題研究所(CSIS)によると、同国歳入の半分を占める石油・ガス関連は22年1~5月に5兆7000億ルーブル(約14兆円)と前年同期比8割増えた。ロシア政府は1日約5億ドルをエネルギーで稼ぎ、約3億ドルを軍事費にあてている計算になる。

ロシア産石油の輸出低減も半ばだ。G7は5月に輸入禁止を表明。米国は既に止め、欧州連合(EU)も年内に9割を止める予定だが、中国やインドが調達を続ける。国際エネルギー機関(IEA)によると、ロシアの5月の輸出先はインドが12%と、1~2月平均の1%から急拡大した。

一部の国がG7が設定した価格より高くロシア産石油を買えば制裁の効果は落ちる。サミットに招待されたモディ印首相は中立の立場を貫く。今後の制度設計に時間がかかる可能性もある。

ロシアのもう一つの主力収入源である天然ガスでもG7は対応策を探る。ガス価格にも上限を設ければ、ロシアが報復に動き供給をさらに絞る恐れがある。ロシア産ガスに依存する欧州には死活問題になりかねない。

ロシア政府系ガスプロムは15日、パイプライン「ノルドストリーム」を通じたガスの供給量を6割ほど減らすと発表した。欧州では「エネルギー価格を高騰させるための戦略だ」(ハベック独経済・気候相)との受け止めが広がる。欧州メディアによるとイタリア、フランスでもガス供給の削減や停止が起きた。

オランダやデンマーク、ポーランドなどではロシア通貨ルーブルでの支払いを拒否してからロシア産ガスの供給が止まった。ドイツ政府はガス不足で緊急調達計画の3段階中2段階目にあたる「非常警報」を23日に発令した。ガスの配給制に至る警戒も広がる。

ガス業界団体のGIEによると、6月20日時点の欧州のガスの在庫率は55%で、例年の推移と大差ない。需要期の冬までに8~9割に引き上げる目標はメドが立たない。

ロシア産エネルギーからの脱却を進めるには、複合的な対策が欠かせない。バイデン米大統領は7月、サウジアラビアを訪れて原油の増産を働きかける。

欧州では石油や天然ガスの消費量を減らすため、石炭への回帰が進む。ドイツ政府は19日、石炭火力発電への依存度を引き上げる方針を打ち出した。隣国のオーストリアも停止中の予備のガス火力発電所を石炭火力に改造する方針を決めた。

サミット議長国のショルツ独首相は26日「我々は新興国の気候変動対策を支援する」と述べた。だが、短期的には先進国で化石燃料を活用し、温暖化対策を足踏みさせざるを得ないのが実情だ。

(エルマウ=鳳山太成、中島裕介、ロンドン=篠崎健太)

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白井さゆり
慶應義塾大学総合政策学部 教授
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ひとこと解説

G7としては追加制裁を結束して発動しつづけてロシアを追い込みたいし今後もさまざまな措置を工夫されていくとみられます。一方、ウクライナ侵攻から4か月たち、世界でインフレショックと金利ショックが起きており経済的に苦しい状態が続いている中で、制裁に参加しない新興国・途上国によるロシアとの取引が目立ってきた印象があります。欧州によるロシアからのエネルギー輸入の停止・抑制する措置も、一部は迂回して欧州にはいってきているとの見方もあり、制裁効果が弱まっているようにも見えます。EUはロシアの石油輸送船の保険サービスをすでに禁止していると思いますが、石油がほしい他の国が保険を提供しているとの指摘もあります。

2022年6月28日 7:38

渡部恒雄のアバター
渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

ロシア産の石油に価格に上限を設ける案は、ロシアの最大の収入源の石油の輸出を制限して戦費を減らしたいが、一方で世界的な原油高を招いて、アフリカ・アジア・中東・中南米の「グローバルサウス」と呼ばれる途上国からの不興を招かないようにするための苦肉の策です。さらに米国でも現在の1ガロンあたり5ドル超の(安いときは2ドル以下です)ガソリン価格の高騰は、11月の中間選挙で民主党に大きな打撃となるために国内対策でもあります。制度的にうまくいくかはかなり疑問点もあるのですが、他に有効な手がない以上、ロシアへの金の禁輸も含め、試してみるしかないというのがG7の合意なのでしょう。
2022年6月28日 7:53

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福井健策
骨董通り法律事務所 代表パートナー/弁護士
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分析・考察

危険ですね。世界が。
記事中で2度登場した言葉が、「依存」です。輸入依存、石油依存、アルコ―依存・・・ 依存とは、特定の存在について代替手段がなく、それがなければ立ち行かなくなることを言います。反対語は「自立」でしょう。

軍事侵攻を許すことはできませんから、私は痛みを伴っても制裁を支持します。ただ、依存のリスクは何も制裁の足かせやロシアだけの問題にはとどまりません。過度の対外依存は、それが何であれ不安定さを増す世界では危険です。食糧であれ、エネルギーであれ、安全保障であれ、いかに特定の存在への依存を減らして行くかが、日本と世界にとって重要になるように思えます。

2022年6月28日 7:42 』