中国観光業、戻らぬ活況 経営難で相次ぐホテル身売り

中国観光業、戻らぬ活況 経営難で相次ぐホテル身売り
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『中国各地で新型コロナウイルスの感染が再拡大し、観光業の苦境が続いている。上海など高所得者の多い都市が相次ぎ都市封鎖(ロックダウン)に陥り、旅行や出張に出かける人が急減した。なかでも固定費が重荷となるホテルでは身売りも顕著になりつつある。観光インフラの一部である宿泊施設の疲弊はコロナの感染収束した後も、需要回復の足かせになりかねない。

準大手ホテルの浙江君亭酒店管理は3月下旬、リゾート系の浙江君瀾酒店管理など2つのホテル運営会社を買収したと発表した。商標利用権(当局認可待ち)もあわせ、買収額は1億4000万元(約27億円)にのぼる。浙江君亭傘下のホテルは計300軒超になるという。

浙江君亭と浙江君瀾のルーツは同じ創業者だ。ただ2010年代半ば以降、それぞれ別の資本で運営してきた。新型コロナ禍を経て事業環境が悪化し、統合を通じコスト削減や顧客取り込みといった連携が必要と判断したようだ。

全国に6000軒を抱える大手ホテルチェーンの首旅酒店は「軽管理」と呼ぶ緩やかな加盟店網を広げている。20年末に約800店だった軽管理ホテルは、21年末に2倍強の約1700店にまで拡大した。比較的規模の小さな宿泊施設に加盟を呼びかけているとみられる。「単体のホテルはブランド力と運営能力の弱さにより経営危機に直面しており、トップランナーのチェーンに加わる意欲が強まっている」(首旅酒店)と説明する。

コロナ禍でホテル稼働率の低迷を受け、物件や設備を手放そうと考える企業や資産家は増えているようだ。中国ネット通販最大手、アリババ集団系のオークションプラットフォーム「阿里資産」によると、6月上旬段階でホテル関連資産の競売案件(入札開始時期が21年1月以降)は中国全土で8500件超に及んだ。

移動制限を柱とした中国のコロナ感染の封じ込め政策「ゼロコロナ」は観光関連業界に大きな打撃を与えた。中国文化観光省によると、6月上旬の「端午節」の連休で、国内旅行者数はのべ7961万人と前年同期比で11%減少した。端午節だけでなく4月の「清明節」(同26%減)、5月の「労働節」(30%減)も前年水準を割り込んでおり、直近の連休は総崩れだ。

ビジネス渡航の需要も振るわない。広東省広州市で4月に開かれた中国最大級の貿易商談会「中国輸出入商品交易会(広州交易会)」はオンラインのみの開催となった。同様に4月下旬開催予定だった北京国際自動車ショーも延期された。企業関係者の宿泊や渡航を見込んでいたホテルや航空会社にとっては誤算となった。

航空会社にも痛手だ。中国の航空最大手、中国南方航空の1~4月の旅客数はのべ2034万人と前年同期比41%減少した。他の大手、中国国際航空と中国東方航空も4割超の下げ幅で、中国全体で人の移動が停滞していることが分かる。

減便など運航調整でいくらかでもコストを抑制できる航空会社と比べ、土地や物件の賃借料など固定費が大きいホテルは工夫の余地が小さい。中堅はまだしも、地方の小規模・零細では廃業を余儀なくされる施設も出ている。都市部では海外からの渡航者などに一定期間課す「隔離」の需要を拾えるが、地方の民宿などではそうもいかない。地方観光地の宿泊施設が減れば、今後旅行ニーズの回復期に旅行客を受け止めきれず、機会損失となる可能性がある。

一定の体力がある大手も楽観はできない。国家統計局によると21年の国内旅行支出総額は3兆元弱と、20年比3割増えたがコロナ流行前の19年と比べると半分の水準だ。旅先で感染が拡大すればその場で隔離となる恐れもあるため、遠出や長期滞在を避ける人は増えている。こうしたなか都市近郊のキャンプ場が人気をつかむなど、レジャーの変化も起きつつあり、ホテル業界の先行きは不透明だ。

本来、特定産業の業況の変動期はファンドや金融機関にとって投資のチャンスとなる。ただ中国では中央政府の厳しいコロナ対策がいつまで続くか読めず、投資家は身動きが取りにくい。観光の産業比重の大きい地方政府や地銀にとって悩ましいテーマになっている。
(広州=比奈田悠佑)』