ちぐはぐ目立つ中国のゼロコロナ政策、北京現地ルポ

ちぐはぐ目立つ中国のゼロコロナ政策、北京現地ルポ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM177580X10C22A6000000/

『中国経済が春先から悪化した。新型コロナウイルスの封じ込めを狙う「ゼロコロナ」政策が主因だ。中小企業の収益や雇用を犠牲にした規制は、感染者が出たマンションを1棟ごと封鎖するほどの徹底ぶりだ。ただ、個別の対応を見るとちぐはぐで、一貫性に欠ける。

15日深夜3時頃、北京に駐在する記者のスマートフォンが鳴った。相手は自宅エリアの行政組織の担当者だ。「あなたが7日夜に訪れた飲食店が入るホテルにコロナ感染者が滞在していました。濃厚接触者と判断されましたので隔離が必要です」。
北京駐在の記者、「濃厚接触者」に

突然の通告に驚いた。当日会食したのは、ホテル本館から数十メートルも離れた別館の個室だ。会話などをしたのは、会食の参加者のほか2~3人の店員のみだ。「なぜ濃厚接触者になるんだ」。記者の問いを無視して、担当者は続けた。「ホテルでの集中隔離に同意しますか」

「強制かも」と思いつつ、とりあえず拒否すると、担当者の反応に拍子抜けした。「それでは在宅隔離の手続きをします」。後に分かったが、会食した外国人4人は在宅の隔離措置で済み、中国人3人は郊外のホテルでの隔離を強いられた。外国人の反発への配慮とみられる。

家族を巻き込んだ自宅隔離では、白い防護服の係員がほぼ毎日、玄関前でPCR検査を行う。喉の奥ではなく、舌の上などを少し触れる程度の検査だ。抗原検査はキットをもらい、結果はスマホで画像を送るだけ。結果をごまかせるのではとの疑念も浮かぶ。

北京市では4月下旬に市中感染が広がった。公式発表では1日の新規感染者数は数十人にとどまったが、習近平(シー・ジンピン)指導部のお膝元なだけに、5月1日から飲食店の店内営業を止めた。小中学校や幼稚園への登校・通園も禁じた。ロックダウン(都市封鎖)となった上海市の二の舞いは避けたいとの焦りもあっただろう。

だが、対策の根幹を成すデータは不可解だ。オミクロン型が中心である今の感染者は上海市など他都市では7割以上が無症状感染者なのに、北京市はなぜか2割程度で極端に低い。

新規感染者が1ケタまで減った6月5日、北京市は翌6日から飲食店の店内営業を認めると発表した。小中学生の登校は13日、幼稚園児の通園は20日から可能にするとした。だが、感染は再拡大し、9日までに市内有数の繁華街、三里屯近くのバーで集団感染が見つかった。市当局は地下のバーやカラオケなどの営業を止めたが、多くの飲食店には店内営業の継続を認めた。経済的打撃を懸念し、柔軟な対応に切り替えたと言える。
外食可なのに学校には行けず

全てが柔軟な対応になったわけではない。11日の記者会見では、13日に予定した小中学校の対面授業は高校受験を控える中学3年生を除き、再開を遅らせると発表した。27日にようやく再開したが、当初は7月の夏休み入りまでオンライン授業しか認めないのではないかとの臆測も広がった。

「外食はできて、学校には行けない。こんな対応に合理性なんてないわよ」。2児を育てる中国人女性(34)は吐き捨てた。登校・通園の延期は子供の安全のためという声もある。しかし夫婦共働きが当たり前の中国都市部で、小中学校のオンライン授業の継続は、両親らが家で子どもを見守り続けないといけないことを意味する。家計の所得にも影響しかねない。

世界各国が「ウィズコロナ」にかじを切る中、かたくなにゼロコロナにこだわる習政権。そのツケは庶民にのしかかる。

(北京=川手伊織)』