中国の若者を襲う就職難、コロナの影響だけではない厳しい現実【洞察☆中国】

中国の若者を襲う就職難、コロナの影響だけではない厳しい現実【洞察☆中国】
https://www.jiji.com/jc/article?k=2022062400732&g=int

※ 今日は、こんなところで…。

『中国教育部(日本の文部科学省に該当)が発表した統計によると、今年秋に中国の大学新卒者数は前年より167万人増え、1076万人となる。史上初めて1000万人を突破。2000年に新卒の数はわずか100万人だった。年々増え、この20年余で約10倍だ。(文 日中福祉プランニング代表・王 青)

 ◆学習塾関連だけで失業者1千万人

 「ゼロコロナ政策」で中国経済が失速している中で、多くの専門家は「新卒者にとってこれからの時代の就職は極めて厳しい状況になる」と指摘している。

 「就職難」の背景には、上述した経済状況が原因であることはいうまでもない。さらに、昨年あたりから政府が繰り出すさまざまな規制が雇用市場に大きな影響を与えている。

 昨年7月に打ち出した小中学校の勉強の負担を減らすという「双減政策」、インターネット関連や不動産関連にも厳しい規制が加えられた。

 大手学習塾運営関連企業だけで、約1000万人の失業者が出たと伝えられている。このほかも、大規模なリストラが行われた。

 特に今年に入り、資本市場の変化で「テンセント」や「EC大手京東」などの人員カットのニュースが大きく注目された。もともと、これらの大手は今まで、一番雇用をつくり出していただけに、雇用市場へのダメージは大きい。

 ◆企業倒産多発の恐れ

 中国国家統計局が5月16日に発表した4月の全国都市部の失業率は6.1%で、20年3月以来、最大となった。16~24歳の失業率は18.2%で、前月の3月より2.2ポイント上昇、統計を始めてから最も高い数値という。

 これら一連のデータを裏付けるように、中国のある教育機関の調査では、5月現在、大学の新卒(今年9月に卒業予定)の内定率が30%以下にとどまった。このうち、教育関連と不動産企業の新卒採用定員数は、前年比でそれぞれ50%減、30%減となった。

 中国教育部が各大学側に「企業との連携を強化して学生の就職率を上げよう」と促し、訪問する企業の数のノルマまで付けている。

 中国では今年、オミクロン株の感染が拡大したため、多くの地域でロックダウン(都市封鎖)が実施された。最大の経済都市、上海では3月下旬から始まった。

 解除後、経済活動の回復には時間がかかり、企業倒産の津波がやってくるのではないか、と専門家たちは危惧する。

 実際、ゴーストタウンになった上海では、飲食店や雑貨店、洋服店など、個人が経営する多くの零細企業が家賃や人件費への資金の枯渇により、閉店に追い込まれた。

 ◆公務員や国有企業に人気

 経済の減速が顕著になった近年、若者の就職志向が大きく変わった。公務員や国有企業などが人気を集めるようになるにつれ、競争も激しくなっている。

 昨年の公務員試験の倍率は約64倍だった。また先頃、中国の名門大学である北京大学核物理専門の博士学位を取った女性が、北京市のある区の都市管理巡回員として就職したことが世間を驚かせた。

 そして、これまで一流大学の卒業生の目に全く入らなかった、地方の無名な市や鎮などの政府機関に、名門校の卒業生が殺到していることも大きく注目された。

 若者が「自身のキャリア」や「将来の夢」より、まず安定した生計を選ぶ、いわば「安全運転」の傾向が強くなってきている。

 中国は9月が新学期であるため、今年の大卒生のほとんどが2000年に生まれた「ミレニアル世代」だ。中国の経済の高度成長を経験し、デジタルネーティブ世代でもある。
 比較的豊かな時代を経験している彼らが、社会人になろうとしている時に、就職氷河期に直撃されるとは、誰にも予測できなかっただろう。

 その影響として、「スロー就活」「フレックス就職」などの言葉も生まれた。また「修士課程に進学して時間を稼ぐ」学生が増えると同時に、「親のすねをかじる」人、「寝そべり族(何も努力しない、最低限の生活をする)」の人も少なくない。

 今後、「多種多様」な就職形態が出てくるだろう。

 (時事通信社「金融財政ビジネス」より)

 【筆者紹介】

 王 青(おう・せい) 日中福祉プランニング代表。中国・上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業。アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞社、ATCの3者で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館 ATCエイジレスセンター」に所属し、 広く福祉に関わる。 (了) 』