防衛費「2%」縦割りで定義狭く 細る研究開発指標で読む参院選争点

防衛費「2%」縦割りで定義狭く 細る研究開発
指標で読む参院選争点
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2173K0R20C22A6000000/

『ウクライナ侵攻により参院選は防衛政策の転換を問う選挙となった。与野党の議論は防衛費を欧州並みの国内総生産(GDP)比2%に増やすかに集まる。日本の防衛費は科学技術予算をあまり投じず海外と比べて範囲が狭い。規模だけでなく、どこにお金を投じるかが重要となる。

2022年度当初予算の防衛費は5.4兆円とGDP比で0.96%にとどまる。1976年に三木内閣が「1%」の枠を設けてから半世紀近く、目安が維持されてきた。

同年に新設されたのが防衛計画の大綱だった。冷戦期の緊張緩和(デタント)を背景に防衛力の上限を定める「基盤的防衛力構想」を提起した。軍事的脅威への対抗を想定しない態勢が長期にわたって続き、防衛費の拡大が政治課題にあがることはほとんどなかった。

ウクライナ侵攻で環境は変わった。日本経済新聞の6月の世論調査で参院選で重視する項目を聞いたところ「外交・安全保障」が28%と3番目に多かった。前回の19年参院選前の調査は20%で6番目だった。

与野党は公約で防衛力の転換をうたった。自民党は北大西洋条約機構(NATO)が2%を掲げていることを踏まえ「GDP比2%以上も念頭に必要な防衛費を積み上げ、5年以内に達成する」と書いた。日本維新の会も「防衛費はGDP比2%を目安として増額する」と触れた。

立憲民主党は必要な装備品などを積み上げれば「防衛費の増額はありうる」との立場をとる。公明、国民民主両党とも防衛力強化を唱える。

規模に照準を合わせるあまり、お金を費やす対象についての議論が深まっていない。

岸田文雄首相(自民党総裁)は日本記者クラブの討論会で使途について「ミサイルなどの科学技術の進歩の中で必要な装備はしっかり用意する」とだけ語った。立民の泉健太代表も宇宙、サイバー、電磁波などの新領域の例示にとどめた。

長年、抑制してきた防衛費を実用的なものにするには、防衛費の構造そのものを見直す必要がある。日本の防衛費は防衛省が所管する予算を指す。防衛費を増やしても縦割りが続けば、国防に不可欠な措置はとれない。

代表的なのは研究開発費だ。政府の科学技術の研究開発費は4兆円と防衛費の8割程度にあたる。大学を所管する文部科学省の色彩が強く、防衛に使われるのは1600億円規模と4%ほどだ。安全保障を重視し、科学技術予算の46%を国防用が占める米国とは差がある。

ウクライナの戦場で有用性が示されたのは、無人機やサイバーだった。こうした装備品は宇宙や通信、画像認識などの先端技術が土台となっている。

国土交通省が所管する公共事業にも縦割りの弊害がある。6兆円を上回る公共投資の関係費はGDP比で米国や英国よりも5割ほど多いが、防衛上の視点を欠く。

台湾有事といった危機では、南西方面の民間の空港や港湾施設などは戦闘機や艦船の発着拠点となる可能性がある。住民の避難にも不可欠だが、整備は十分に進んでいるといえない。対する米国は防衛上に必要なインフラを国防費でつくる。

NATOのように海上保安庁などの他省庁の予算を含めると、1%未満だった日本の防衛費はGDP比1.2%を超える。GDP比2%目標は定義をどう定めるかによるところが大きい。

政府は日本の防衛の指針を決める国家安全保障戦略を年末に策定する。GDP比2%なら新たに年6兆円の使途を決めることになる。(三木理恵子)

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