軍装備の近代化急ぐインド 人件費圧縮で新兵候補が暴動

軍装備の近代化急ぐインド 人件費圧縮で新兵候補が暴動
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『新兵の採用を巡るインド軍の改革が、若者たちの反発を招いている。隣国の中国やパキスタンに対抗するため人件費を圧縮し、装備の近代化を目指す。だが、新型コロナウイルスの流行による景気低迷を経て職を求める新兵候補は、軍務期間の短縮や年金の見直しに不満だ。軍は防衛予算の有効利用を迫られる一方、新たな採用制度で士気が低下しかねないジレンマに陥っている。

インド政府は6月中旬、17歳6カ月から21歳までの新兵の採用を巡る改革を発表した。新制度では、入隊後にまず4年間、軍務に従事する。このうち4分の1は軍にとどまれる。だが、ほかの要員は117万ルピー(約200万円)の一時金を受け取って除隊となり、年金が受け取れない。

政府は若く健康な兵士による部隊を維持するためには改革が必要だと主張する。昨年のインドの防衛費は760億ドル(約10兆円)前後と推定される。インドの政策研究センターの今年の報告書では、退役軍人のシニアフェローが「国防省予算の52%」が人件費だと指摘する。「ここ数年、極めて重要な課題になっていた」と記している。

このシニアフェローは「インド軍(の将兵)は装備や兵器の3分の2以上が年代物だと嘆いている」と指摘する。

複数の専門家は、インド軍が給与や年金を含む兵士の人件費を圧縮し、軍装備の更新や近代化に配分する予算の割合を高める必要があると主張している。

過去の複数の政府報告書は、戦争が勃発した場合、インド軍の弾薬は10日で尽きると警告してきた。インドと中国の部隊は2020年、ヒマラヤの係争地で衝突し、両国の緊張は高まっている。インドはパキスタンとも対立してきたが、同国と中国は軍事面での協力と相互運用を強化しようとしている。

インド北部を担当する部隊の元司令官は、改革後の新兵とほかの兵士との間で士気の差が生じる可能性を指摘する。軍が若者にとって魅力的な職場でなくなり、優秀な人材を確保できなくなるかもしれないとの見方も示した。
インド軍の新兵採用方針の変更に反発し、暴徒化した若者らに放火された鉄道車両(17日、同国中南部ハイデラバード)=AP

新型コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)などで就職の機会が制限されるインドの若者にとって、軍は安定した就職先の一つだった。だが、改革が実行されれば、軍で働ける期間は期待より短くなり、年金も受け取れない可能性がある。入隊を目指していた若者の多くが各地で抗議活動に乗り出し、一部は暴徒化した。電車を燃やし、幹線道路を封鎖し、数百人が治安当局に拘束された。少なくとも1人が死亡した。

(寄稿 ニューデリー=アカシ・ハッサン)
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