トランプ派候補の勝率9割 米共和予備選、半数州で終了

『【ワシントン=坂口幸裕】11月の米中間選挙に立候補する候補者を決める予備選は全米の半数超の州で投開票を終えた。野党・共和党の予備選では上下両院と州知事選の合計でトランプ前大統領が推薦する候補の9割超が勝利した。2024年の次期大統領選出馬をにらむトランプ氏が根強い人気を維持している。

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予備選がある全米50州と首都ワシントンDCのうち、22日までに26で終えた。中間選挙は4年に1回で、今年は11月8日が投票日になる。連邦議会は上院の3分の1と下院の全ての議席が改選で、多くの知事選も同日に実施される。

米選挙分析サイト「バロットペディア」のデータをもとに、トランプ氏が上院選、下院選、知事選の予備選で推薦した候補者の勝敗を集計した。

トランプ氏が支援する候補は全米に計163人いる。これまでに、現職と非現職(新人・元職)を含む候補者117人のうち108人が勝利した。勝率は92%に達する。有利とされる現職に挑むケースの多い非現職候補に限っても勝率が7割に達した。

高い勝率には、歴史的なインフレが追い風になっている可能性がある。もともとトランプ氏の支持者が多いとされる低所得の白人労働者層らの生活を物価高が直撃しているためだ。バイデン民主党政権だけでなく、共和現職を含む既存政治への不満をすくいとっている。

支持基盤としてきたラストベルト(さびた工業地帯)の一角、東部ペンシルベニア州の上院選の予備選ではトランプ氏が推す医師でテレビ司会者のメフメト・オズ氏が勝利した。

トランプ氏の人気を測る試金石となったのが南部サウスカロライナ州の下院選の予備選だ。支援したラッセル・フライ氏が、21年1月の米連邦議会占拠事件を巡るトランプ氏の弾劾訴追に賛成した現職のトム・ライス氏を破った。弾劾訴追で賛成に回った議員の敗北は初めてとなる。

米CNNによると、フライ氏の得票率は51%で、ライス氏の25%を大きく上回った。フライ氏は「共和党の保守派が勝利した。ドナルド・トランプが勝った」と訴えた。

トランプ氏は3月にサウスカロライナで集会を開き、ライス氏を「愚かもの」「災害」などとこき下ろした。ライス氏は予備選直前にNBCのインタビューで「勝っても負けても私は正しいことをした」と話した。

下院で弾劾訴追に賛成した10人のうち、6人が予備選に臨む。ライス氏だけでなく、8月に予備選がある西部ワイオミング州のリズ・チェイニー氏らにもトランプ氏は「刺客」候補を擁立した。チェイニー氏らは苦戦が伝えられており、予備選終盤にかけての焦点になる。

一方、南部ジョージア州知事選の予備選ではトランプ氏が推薦したデビッド・パーデュー氏が現職のブライアン・ケンプ氏に敗北した。ペンス前副大統領らがケンプ氏を支援、得票率で約5割もの大差でパーデュー氏を退けた。

ジョージア州は20年大統領選でバイデン大統領が1万票あまりの僅差でトランプ氏に競り勝った激戦州だった。ケンプ氏は同州でのトランプ氏の敗北を認定した。ケンプ氏に不満を募らせたトランプ氏が対立候補を送った因縁の州だった。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

トランプの言動を精査すると、過激だけではなくて、刺激的でもある。トランプ支持者は彼の言葉の中身ではなくて、その言動に刺激され、熱烈のファンになっている。ちなみに中国系アメリカ人の多くはトランプ支持者のようである。彼らにとって冷静に発言するトランプ(めったにないことだが)は何の魅力がない。刺激的なトランプ発言はたとえて言えば、四川料理の火鍋を食べるような感じ。鬱憤を放つのに最適。このままいくと、トランプは中間選挙で大勝を収めるかもしれない。ただし、アメリカは不安定になり、世界も不安定になる
2022年6月24日 7:56
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

トランプ前大統領が支持する候補が勝って意味があるのは、2020年の大統領選で「接戦州」だったジョージアなどの州知事選。ここでトランプ派が勝つと2020年の選挙結果を知事(日本流に言えば選挙管理委員長)の権限でひっくり返すことが出来る、とトランプが信じており、それを推し進めようとしている。共和党はトランプ派と反トランプ派に分裂する様相を呈しており、さらに言えば、トランプ派が本選で勝てるとも限らない。バイデンに対して不満を持つ層がトランプが支持する候補を支持するとも限らない。中間選挙の棄権がどのくらい出るかが重要なポイントとなるだろう。
2022年6月24日 3:11

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前嶋和弘
上智大学総合グローバル学部 教授
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ひとこと解説

そもそもトランプ氏は勝てそうな候補を応援しています(自宅のマールアラーゴに呼びつける「面接」の大きなポイントは、「20年選挙の勝利者がトランプ」であることと、勝てそうな世論調査の数字)。また、下院の方が顕著ですが、分極化の時代の党内の予備選というのは、より過激で分かりやすい方が有利。「トランプ派」の方が圧倒的に予備選通過には追い風です。ただ、激戦州や選挙区では本選挙がどうなるかは話は全く別。
2022年6月24日 2:33 (2022年6月24日 2:36更新) 』