[FT]英国、サウジアラビアなど湾岸6産油国と通商協議

[FT]英国、サウジアラビアなど湾岸6産油国と通商協議
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB225MB0S2A620C2000000/

『英国がサウジアラビアなどで構成する湾岸協力会議(GCC)6カ国との貿易を大幅に拡大しようとしている。貿易協定の締結に向け、論争を招く人権問題を避けて通る協議を開始する。

協議はGCCが本部を構えるサウジアラビアの首都リヤドで実施する=ロイター

英国のトレベリアン国際貿易相は、GCCとまとめようとしている協定を通じて、工業製品や農産物、金融サービス、デジタルサービスの輸出増加によって英国経済に年間16億ポンド(約2600億円)の上乗せを目指すと語った。

「我々は包括的で野心的、近代的、かつ将来を見据えたFTA(自由貿易協定)の実現を目指している」と述べた。「対象をモノだけに制限したくない。英国のすべての産業のために道筋を定める」

英国の農家、製造業者に恩恵

交渉では、GCC側も関税その他の貿易障壁の削減を求めることで、英国市場への優先的なアクセスを要求すると見られている。

交渉は22日、GCCが本部を構えるサウジアラビアの首都リヤドで始まる。湾岸のアラブ諸国で構成するGCCには、サウジのほか、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)が加盟している。

GCC全体で英国にとって7番目に大きな輸出市場を形成しており、相互の貿易額は年間331億ポンドに上る。英国によると、同地域のモノとサービス需要は2035年までに35%増加して8000億ポンドに達する見通しだ。

UAEのゼユーディー対外貿易担当相は、協議は英国とGCCの貿易を拡大し、「信頼される貿易相手との関係を強化し、サプライチェーン(供給網)をさらに多角化し、知識移転を加速させる」協定を結ぶ「大きなチャンス」になると語った。

英国は、協定が英国の農家と製造業者に「大きな恩恵」をもたらすと考えている。モノの輸入に対するGCCの関税は一般に5%に設定されているが、穀物は最大で25%、チョコレートは最大で15%など、格段に高い品目もある。

貿易関係強化で「人権問題により効果的に関与」

交渉では、機微を要する湾岸諸国の人権をめぐる議論は避ける。湾岸諸国は反体制派のサウジ人記者ジャマル・カショギ氏が殺害された事件や、英国人学生のマシュー・ヘッジス氏がスパイ容疑でUAEに拘束された事件を含め、各国が抑圧的な政策を批判している。

旧態依然とした法制度に巻き込まれた英国人はしばしば、公正な裁きを確保する政府の支援がないと不満を訴える。

人権に対する英国の「懸念」を表明することは今後も英外務省の責任だとトレベリアン氏は述べた。だが、貿易関係が強化されると、英国はより効果的に人権問題に関与できるようになると付け加えた。

湾岸諸国は大勢の出稼ぎ労働者に対する緩い基準とお粗末な労働条件についても厳しい目を向けられる。こうした出稼ぎ労働者の多くは債務を抱えた状態で湾岸諸国を訪れ、強制労働に似た状況に置かれる。

トレベリアン氏は、貿易協定の一環として、英国は必ず湾岸諸国に対し、国際労働機関(ILO)によって定められた労働基準と温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」に盛り込まれた環境基準へのコミットメントを再確認することを求めると語った。

同氏はさらに、湾岸諸国は英国企業へのアクセスが拡大することによる恩恵を受けると話している。GCC加盟国が莫大な二酸化炭素排出量の削減に向けて取り組むなか、例えば英国企業が持つクリーンエネルギー技術などが導入しやすくなるという。

UAEやカタールといったGCC加盟国は最近、英国と大型投資協定を結んでいる。ジョンソン英首相は引き続き、欧州連合(EU)離脱後の英経済に湾岸諸国からの投資を呼び込んでおり、最近、サウジの事実上の最高権力者であるムハンマド皇太子をはじめとした湾岸諸国首脳と会談した。

政府関係者は、どのような貿易協定であっても、締結に要する時間はGCCが実りある協定を交渉する意思があるかどうかにかかっていると述べた。なお、同関係者は英国はオーストラリア、ニュージーランドと先に協定をまとめた際に迅速に動く能力を発揮したと指摘している。

踏み込んだ国家間の話し合いへの布石

GCC加盟国の国家関係は近年、緊張をはらんでいる。昨年終了したサウジ主導のカタール封鎖がその一例だ。またサウジ政府はその後、自国経済を守るために幅広い製品について関税を引き上げている。

GCC内で妥協点を見つけるのが困難なことから、UAEを含む一部加盟国は内々に、英国と2国間協定を締結する可能性を口にしていた。

トレベリアン氏は、まずはGCCとの協定締結に全力を尽くすと語った。それほど野心的な内容でなくても、「もっと踏み込みたい」国との話し合いに先駆けて「一つの起点」の役割を果たすかもしれない。

「これについては、いずれ非常に前向きに検討したい」と話している。

By Simeon Kerr

(2022年6月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』