[FT・Lex]英国の鉄道スト 在宅勤務で組合の力は低下

[FT・Lex]英国の鉄道スト 在宅勤務で組合の力は低下
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『英国で21日から始まった地下鉄と鉄道のストで大きな影響が出ている。ただ、新型コロナウイルス禍で英国人は在宅勤務の経験を積んだ。このため企業はそれほど混乱せず、生産高も失われず、鉄道労組の影響力は低下している。

英国では賃上げ交渉で折り合いが付かず、大規模な鉄道ストライキに突入した=ロイター

通勤に鉄道を利用している勤労者は全体の1割程度だ。ロンドンの通勤者が鉄道を最も多く利用しているが、在宅勤務を最も得意にしている人々でもある。英経済ビジネス・リサーチ・センター(CEBR)によると、出勤しないことによる経済的打撃は約9100万ポンド(約150億円)と、コロナ禍以前の約半分にとどまる。

賃上げを求めてストに踏み切った労組が、25日の土曜にストを予定していることは示唆に富む。多くの企業は平日の混乱は回避できるが、小売業は、土曜にはたくさんの人に来店してもらう必要がある。

英市場調査会社スプリングボードによると、ストの週には小売店の来客数は9.3%の減少が予想されている。売上高に換算すると1億1300万ポンドの減少で、経済指標のひとつである粗付加価値(GVA)換算では2400万ポンドの減少が見込まれる。

飲食や宿泊などのホスピタリティー業界も大きな打撃を受けるだろう。レストランやホテルなどの業界団体UKホスピタリティーは売上高が5億ポンド減少すると警告している。観光やレジャー、劇場などの業界を含めるとその倍になるという。

収入減で損失被るのは鉄道会社自身

最大の敗者は鉄道会社自身だろう。路線を保有・管理する国有会社「ネットワーク・レール」は最大1億5000万ポンドの損失を予想しており、その3分の2は収入減、残りは工事や保守などの業務中断によるものだ。

鉄道運営会社への影響は、リスクを政府に転嫁する新しいフランチャイズ制度によって軽減されるだろう。例えばテムズリンク、サザン、グレート・ノーザンなどの鉄道を運営するゴー・アヘッド・グループは現在、コストベースの0.5%の固定管理料と、追加の実績報酬最大1.35%を得ている。

今回のストで、実績報酬は削減されるだろう。ただ鉄道運営会社に損失のリスクはない。このように保護されていることから、英国の運輸会社は国際企業や投資家にとって魅力的なものになっている。例えば、ゴー・アヘッドは最近、6億 5000 万ポンドの買収提案を受け入れた。

要約すれば、国有化産業の左翼系労組は、インフレ率が急上昇しているために賃上げを求めてストをしている。対立が激しかった1970年代に育った英国人は、在宅勤務がなければノスタルジーを感じていたことだろう。

(2022年6月22日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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