[FT]フランスの極右、議席数過去最高 単独政党で2番目

[FT]フランスの極右、議席数過去最高 単独政党で2番目
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『フランスの極右政党「国民連合」を率いるマリーヌ・ルペン党首は、過去10年以上にわたり、同党を国内政治の主流に食い込ませようとしてきた。その成功の度合いを測る重要な尺度は大統領選での支持率で、同氏は過去3回出馬し、そのたびに敗れつつも支持を増やしてきた。

ルペン氏は10年かけて国民連合を生まれ変わらせた=ロイター

6月19日に実施された仏国民議会選挙の決選投票で、国民連合は勢力を飛躍的に拡大させた。議席数を改選前の10倍の89に伸ばし、過去最高だった1986年の35議席を上回った。これにより、同党とルペン党首はフランスの日常的な政治の中心に参画することが可能となった。

国民議会(定数577)の過半数にはあと200議席足りないものの、その躍進ぶりは党内をも驚かせた。国民連合は、2回投票制でさえない結果に終わることが多かったからだ。これにより、同党は移民または安全保障といった課題について、より強い発言権を得ることになる。

長年かけて負のイメージ払拭へ尽力

国民連合の前身であり、ルペン現党首の父であるジャンマリー・ルペン氏が創設した国民戦線は、移民の受け入れに反対し、欧州連合(EU)に懐疑的な人種差別主義的政党というイメージがつきまとってきた。だが4月に実施された大統領選の決選投票では、敗れたとはいえ、中道派のマクロン現大統領との得票差をかつてない水準まで縮めた。今回の国民議会選挙の結果も、そうした負のイメージを払拭しようとする努力が実を結んだと言えるだろう。

国立パリ政治学院の政治学者であるパスカル・ペリノー教授は「この躍進により、ルペン党首は表舞台に戻ってきた」と述べ、「彼女は討論で存在感を発揮し、野党のリーダーとなるだろう」と指摘した。

少数野党である国民連合には、単独で法案を推し進める力はない。同党にとっての今後5年間の課題は、過激な反対勢力ではなく、議会で建設的な議論ができる政党であることを証明することだろう、とペリノー氏は言う。

ジャン=リュック・メランション氏が率いる急進左派「不服従のフランス」が緑の党などと結成した左派連合「環境・社会新人民連合(NUPES)」は、国民連合を上回る131議席を獲得した。だが単体でみると、国民連合の当選者数はマクロン氏率いる中道の与党連合アンサンブルに次ぐ2番目となった。与党連合の議席数は過半数に届かなかった。

前回2017年の総選挙でわずか8議席にとどまったルペン氏は、今回はその数倍獲得できれば満足だと話していた。そのため世間の注目は、ルペン氏よりも積極的な選挙活動を繰り広げ、マクロン氏が掲げる定年退職年齢の引き上げ計画などの不人気政策を批判していたメランション氏に移った。

しかし何年もかけて伝統的な支持基盤である北部の工業地帯や南仏マルセイユ付近以外の地域にも支持層を広げたことや、棄権率の高さが国民連合の追い風となった。ルペン氏が10年かけて同党を生まれ変わらせ、多くの有権者の受け皿となるべく、移民や犯罪問題だけでなく経済問題にも注力する政党へと作り変えたことは正しかったと言えるだろう。

崩壊した「共和戦線」

ぶどう畑が点在する風光明媚(めいび)な土地だが、貧困問題に悩まされている南西部ジロンド県のボルドー近郊から出馬し、当選を決めた国民連合のエドウィージュ・ディアズ氏(34歳)は、「これは偶然ではない」と話す。「私たちは地元で徐々に存在感を高めてきた」

ディアズ氏はさらにこう説明する。「父ルペン氏が党首だったころの国民戦線は、与党に抵抗することが目的の政党だった。だがマリーヌ氏に交代してからの国民連合は真剣に政治に取り組む野党へと進化した。今や私たちは与党になる一歩手前まで来ている」

これまでの選挙では、極右候補に勝てそうな候補者を有権者が支持する、いわゆる「共和戦線」が結成され、極右政党の勢力拡大を阻止してきた。4月の大統領選挙の決選投票でもそれは変わらず、左派を支持する有権者らは最終的にマクロン氏に投票した。

しかし19日の決選投票ではこの共和戦線が崩壊した。世論調査のデータやアナリストらの分析によれば、反マクロン派の有権者らは、国民連合とアンサンブルが競合する選挙区でアンサンブルの候補者を支持しようとせず、または投票の棄権を選択した。またマクロン氏の支持者らは決選投票でNUPESと国民連合の候補者が争った選挙区でNUPESを支持しなかった。

仏世論会社イプソスのリサーチ・ディレクターを務めるマチュー・ガラール氏は、「地方レベルでは共和戦線はもはや存在しない」と説明する。「主要3陣営は互いに争っており、一つの政党をけん制するために残りの2党が手を組むことはない」

選挙当日の夜にNUPESが開いたパーティーでは、参加者の間からマクロン氏に対する不満の声があがった。マクロン氏が、国民連合を破るためにNUPESを支持するよう、支持者に呼びかけなかったためだ。

「マクロン氏が2017年に大統領に当選したのも、22年に再選できたのも、我々の協力があったからだ。それなのに我々が国民連合と戦うことになると、マクロン氏は我々への投票の呼びかけを拒んだだけでなく、我々と対立し、議席を奪いさえした」と、NUPESを構成する緑の党のバイユー代表は批判する。

選挙結果からは、ルペン氏が従来の政治的な境界線を曖昧にさせたこともうかがえる。世論調査会社ハリス・インタラクティブの調査によると、第1回投票で左派連合NUPESを支持した有権者の3分の1は決選投票で中道のアンサンブルを選んだものの、4分の1近くは国民連合の候補者に投票した。

資金難も軽減

また予想外に多くの議席を獲得できたことで、国民連合の資金難は軽減される見通しだ。仏国内の銀行はルペン氏や同氏の政党に対する融資を拒んでいたため、同党は長い間資金不足に苦しんできた。14年の統一地方選挙ではロシアの銀行からの融資に頼らざるを得ず、またルペン氏が4月に大統領選に出馬した際は、ハンガリーのオルバン首相に近い同国の銀行から個人として借り入れなければならなかった。

フランスの政党は、第1回投票での得票数に基づいた資金と、当選議員1人当たり3万7000ユーロ(約530万円)の資金を支給される。国民連合は今後5年間の任期中に年間約1000万ユーロを受給できる見込みだ。同党への支給額としては過去最多であり、同党のある職員は、これによって債務を返済できるだけでなく、スタッフを増員して議会活動の専門性を高められるだろうと語った。

自身も仏北部のパドカレー選挙区から立候補して当選したルペン氏は、党の影響力を可能な限り広げようとすでに画策している。国民議会の財政委員長は野党の党首が務める重要なポジションだが、メランション氏率いる左派連合ではなく、自身がその地位に就こうとしているのだ。

ルペン氏は決選投票後の演説の中で、「極めて不公平な」選挙システムにもかかわらず、国民連合が大いに健闘したことを称え、議会では移民や安全保障問題に関する党の懸念事項を取り上げていくと約束した。

「皆さんがこれから会う新しい当選者たちは熱意と活気にあふれ、型にはまらない、新しい政治エリートだ。マクロン大統領が退任すれば、彼らが代わりにこの国のかじ取りを担うことになるだろう」とルペン氏は語った。

By Sarah White and Leila Abboud

(2022年6月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

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