ミャンマー、外貨不足で輸入制限 我慢の「縮小均衡」

ミャンマー、外貨不足で輸入制限 我慢の「縮小均衡」
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM21E4A0R20C22A6000000/

『ミャンマーの国軍当局が輸入制限を強めている。2021年2月のクーデター以後、外国投資や海外援助が減り外貨不足に陥ったためだ。当局は無理やりにでも輸入を減らし、貿易収支の均衡を目指す構えだ。内需拡大を見込んでミャンマーに進出した日系企業は、出口のみえない泥沼にはまっている。

国軍統制下にある運輸・通信省は16日、ベトナムで先月開かれた「東南アジア競技大会」で活躍した自国選手に「自動車を輸入するライセンス(権利)」をプレゼントすると発表した。自動車そのものではない。輸入ライセンスにそれだけの希少価値があるということだ。

なぜかといえば、国軍当局が21年10月から自動車の輸入ライセンスの発給を停止しているからだ。自動車の輸入ライセンスは、過去の軍事政権でも軍関係者への報奨に利用されたことがある。クーデターで、再び当時のような手法に逆戻りしているかのようだ。

商業省は「自家用車のようなぜいたく品の輸入は(外貨不足で)一時的に制限される」と説明する。新車輸入を手掛ける日系企業関係者は「当局が輸入再開を認めるという情報も流れたが、当面はその気配がない」と肩を落とす。

輸入制限の対象は自動車だけではない。国軍は、貿易収支の均衡に躍起になっている。輸出は簡単に増やせないため、輸入を減らして貿易赤字の解消を急ぐ。クーデター以前、輸入ライセンスが必要な品目は3931品目(貿易品目全体の35%)だったが、国軍当局は22年5月に9099品目(同81%)にまで対象品目を増やした。家電や衣料品など対象は多岐にわたる。

現状は順調とはいえない。21年10月~22年3月は輸出が81億ドル、輸入が79億ドルとなり、国軍は貿易黒字達成をアピールした。だが輸入の内訳をみると、大きく減ったのは国内外企業の設備投資に伴う資本財で、消費財は前年同期比で8%増えた。燃油価格の高騰などで4月以降も輸入超過が続く。

国軍は22年4月、貿易統制の強化を打ち出した。「外国為替監督委員会」の判断で、必要不可欠な物品の輸入に優先的に外貨を割り当てることにした。この結果、以前は1週間程度だった輸入ライセンス取得の手続きは複雑化し、最近の事例では1カ月以上かかるようになった。

原材料などの輸入代金の支払いに必要な外貨の確保も難しくなってきた。実勢レートよりも約10%チャット高の公式レートでしか外貨売買が認められず、市場から調達できる外貨は限られているからだ。日系企業はいまのところ我慢して踏みとどまっているが、先行きは見通せない。(ヤンゴン=新田裕一)』