韓国、国産ロケット打ち上げ初成功 宇宙事業の道開く

韓国、国産ロケット打ち上げ初成功 宇宙事業の道開く
高度700キロ軌道に人工衛星、北朝鮮が反発の可能性も
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM20AP80Q2A620C2000000/

『【ソウル=細川幸太郎】韓国の国産大型ロケットが21日、初めて打ち上げに成功した。初号機での失敗を修正し、性能検証用の人工衛星を高度700キロメートルの軌道に乗せた。今後の自国の測位システム整備や他国の衛星打ち上げの請け負い事業につなげる。ロケット技術は弾道ミサイルへの軍事転用も可能なため、北朝鮮の反発を招く可能性もある。

21日午後4時に韓国南西部の全羅南道高興郡の「羅老(ナロ)宇宙センター」から南南東の方向に3段エンジンのロケット「ヌリ号」を打ち上げた。ロケットは約13分後に高度700キロに到達して目標軌道に乗った。当初は15日に打ち上げ予定だったが、天候とエンジントラブルで2度発射を延期していた。

ソウル市の大統領府で打ち上げを見守った尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は「韓国の地から宇宙への道が開かれた。今後は『航空宇宙庁』を設置して航空宇宙産業を体系的に支援していく」とコメントした。今回の衛星は通信装備や太陽光パネルなど衛星の基本性能を検証するほか、有力4大学の研究に役立てるという。

韓国の古語で「世界」の意味を持つヌリ号は、全長47.2メートルで総重量200トンの3段ロケット。政府機関の航空宇宙研究院が主体となって防衛装備大手の韓国航空宇宙産業(KAI)が設計と製作を担当。エンジンは財閥系のハンファ・エアロスペース、発射台は現代重工業が手掛けた。総事業費は1兆9572億ウォン(約2千億円)にのぼる。

韓国は2013年にロシアのエンジン技術を使ったロケットを打ち上げた。ヌリ号は韓国企業約300社の技術を結集した純国産ロケットとなる。21年10月に打ち上げた初号機は3段目エンジンのタンクに亀裂が生じて燃焼時間が46秒足りず、目標軌道に乗せられなかった。タンク強度を高めるなど設計変更して成功につなげた。

今回打ち上げた高度700キロは国際宇宙ステーションの軌道(約400キロ)より高い。韓国政府によると、1トン以上の衛星をロケットで打ち上げられる国としてはロシア、米国、フランス、日本、中国、インドに続いて7番目に技術を得たという。

韓国政府には35年までに3兆7000億ウォンを投じて「韓国版GPS(全地球測位システム)」を整備する計画がある。韓国上空に通信衛星を配備し、自動運転車や都市航空システム(空飛ぶタクシー)などの技術革新と社会実装を促す。

発射台に移送されるヌリ号(20日、全羅南道高興郡)

東南アジア諸国など衛星打ち上げ能力を持たない国から打ち上げを受託する事業を推進する。ヌリ号の開発に加わったKAIなど民間企業が主導する形で事業開始を目指す。

一方、ロケットの打ち上げ技術は弾道ミサイルなど軍事転用も可能だ。韓国はこれまで「米韓ミサイル指針」で射程800キロメートルを超える中長距離ミサイルの開発を制限されていた。21年5月の米韓首脳会談で同指針が撤廃され、韓国はミサイル技術においても防衛力の強化を打ち出した。

弾道ミサイルの発射実験を続ける北朝鮮が反発する可能性もある。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、在日・在韓米軍や自衛隊などの情報収集のために偵察衛星を開発・運用すると表明。21年策定の国防5カ年計画で、多数の偵察衛星を配置する計画を国家宇宙開発局が進めていることを明らかにしている。』