海外IT、法の網逃れ成長 各国が税・登記巡り対応

海外IT、法の網逃れ成長 各国が税・登記巡り対応
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA202IW0Q2A620C2000000/

『政府は海外IT大手に法人登記を求め、規制や監視を強める。SNS(交流サイト)上での中傷問題や偽情報への対応など、IT大手を巡る課題は多い。しかし海外のIT大手は現地での税負担や規制対応を避けており、各国の当局は課税だけでなく法的な権限すら行使できない状況が続いてきた。海外ITの存在感は日本でも大きく、監督を強める必要に迫られている。

海外IT大手はインターネットを通じて世界中にサービスを提供することができる。従来は法規制や税率の緩やかな国に拠点を置き、ビジネスを成長させてきた。SNSなどは人と人、企業と企業を媒介しているだけだとして、インターネットで起きる様々なトラブルに責任を負ってこなかった面もある。

一方、サービスを使う企業や消費者は、トラブルがあっても自国内で救済を受けにくい状況が続いていた。多くの利用者や広告収入がありながら、各国で見合うだけの税金を払わないことも問題視されていた。

各国は新たな規制のあり方を探ってきた。欧州連合(EU)が制定に動くデジタルサービス法は、ヘイトスピーチや海賊版対策などへの対応をIT大手に義務付ける内容だ。これまでは比較的寛容だった米国でも、偽情報対策などを巡りIT大手に責任を持たせる議員立法が相次ぐ。

政府が登記の徹底を求めたのも世界的な流れに沿ったものだ。日本で継続的にビジネスをする外国企業は日本で法人登記をする必要がある。日本での登記がないと、裁判やトラブルのときに海外に訴状を送ったり連絡したりする手間が生じる。消費者保護の支障になるとの指摘が専門家から出ていた。

政府では2021年施行のデジタルプラットフォーム取引透明化法で、サービスの利用条件などの情報開示を義務付けた。今回の登記要請の根拠となった電気通信事業法も外国法人に事業登録を義務付けており、徐々に規制の網をかけつつある。

海外IT大手については、各国の課税権が及ばないことも問題になっている。

日本の法人税は、事業拠点となる「恒久的施設(PE)」を国内に置いていれば外国企業にも課税できる仕組みを取っている。外国企業が日本で登記をして代表者を置くと、PEの一種の「代理人PE」と税務当局が認定し、課税される可能性がある。

海外IT大手は事業基盤を日本国外に持つ。日本に課税根拠となるPEを持つとの判断を避けることが、法人登記の壁になっていた。

法務省は今回、本社登記を求める一方で、当面の課税リスクを避ける手法は容認する方針だ。会社法は代表者に本社を代表して契約を結ぶなど幅広い権限を与えているが、IT企業が日本の代表者の権限に「制限」をかけるという提案を認める。

企業税務に詳しい平川雄士弁護士は、「制限を守る限りは、税務当局が日本国内で代理人PEを認定して課税することは難しくなるはずだ」と話す。

PEを基本とする課税ルールは、約140カ国・地域が21年に合意した「デジタル課税」で修正が図られる見通しだ。巨大IT企業を念頭に、一定の利益率を超える部分の利益への課税権を各国が分け合う。24年にもデジタル課税が導入されれば、日本にPEがないと主張するIT大手も日本での税負担を迫られる。

一連の問題は、税や登記など異なる分野が結びついた課題だ。グローバルでビジネスを拡大するIT大手のような業種が存在感を増すなか、日本政府も省庁の垣根を越えて課題を共有し、対応する必要に迫られている。

(デジタル政策エディター 八十島綾平)

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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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ひとこと解説

昨年のデジタル課税合意の背景となったのは米大手IT企業によるダブル・アイリッシュ&ダッチ・サンドイッチスキーム等を活用しての市場国・税収なしという税務戦略でした。同戦略のスキームでは、無形資産を軽課税国の子会社に移転し税負担軽減、市場国である日本では物理的拠点がないため課税できないといったことが問題とされてきました。背景は、企業の競争力の源泉が無形資産に転化、サービスがデジタルで提供されていること。ここに市場国に拠点をもたない真因がある。私自身、公正取引委員会・独占禁止懇話会メンバーを務めていますが、日本ではGAFAMに対抗するような企業を育成することと規制の両面が求められていると思います。
2022年6月21日 7:27
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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

ITサービスの現状についてたとえていえば、道路ができたが、信号システムは完成していない状況。事故が起きたら、警察が来て、どうして?と調べる。日本のネットはまだおとなしい。海外のサイトはなんでもあり。それを取り締まるインターポールのような国際機関がない。ましてやハッキング活動の背後に外国政府が見え隠れする。まあ、アメリカの情報機関はEU首脳の電話を盗聴していたぐらいだから、ほんとうになんでもあり。あとは、利用者は自衛するしかない
2022年6月21日 7:31 』