東ティモールの新ガス田「産業創出の場に」 党首が意欲

東ティモールの新ガス田「産業創出の場に」 党首が意欲
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM307CS0Q2A530C2000000/

『東南アジアの小国、東ティモールの近海で進む液化天然ガス(LNG)の開発を巡り、同国の有力政党党首は日本経済新聞の取材で「雇用の創出だけでなく新産業をつくる多様な効果がある」と述べた。同ガス田から自国にパイプラインを引く方針を堅持する方針を示した。共同開発するオーストラリアとの交渉を進め、2030年までの稼働をめざす。

LNGの生産・輸出に向けて開発するガス田は「グレーター・サンライズ」で、ティモール海の東ティモールと豪州との共同開発区域にあたる。1974年に発見され、埋蔵量はガスが約5兆1300億立方フィート、コンデンセート油(超軽質原油)が約2億2600万バレルと推測される。権益の配分は豪エネルギー大手のウッドサイドが33.44%、東ティモール国営石油のティモール・ギャップが56.56%、大阪ガスが10%。豪との管轄海域にまたがるため開発が難航し、関連施設を両国のどちらに設置するかも折り合っていない。

東ティモールの有力政党「東ティモール再建国民会議(CNRT)」のシャナナ・グスマン党首は日本経済新聞の取材に応じ、ガス田から自国へのパイプライン敷設をめざす考えを改めて示したうえで、雇用や財政の面でも大きな利点があることを訴えた。

東ティモールはガス田からパイプラインを同国南部に引き、プラントなどの関連施設を設けることで、開発が遅れる南部の振興につなげたい構えだ。一方で、豪州はガス田の迅速な稼働に向け、同国北部のダーウィンにある既存施設の活用を主張している。折衷案として洋上浮体式のプラントを建設する案などが浮上したが、東ティモール側が同国陸上案にこだわり、合意に至っていない。

初代大統領のグスマン氏は独立の英雄で政界に絶大な影響力を持つ。23年に予定する議会選の結果次第では首相への返り咲きもささやかれる。これまでにも計画・戦略投資相として豪州側との折衝にあたった経緯があり、同氏の発言は政府の交渉方針を左右するとみられる。

東ティモール政府は交渉を急ぐ必要がある。開発したガス田で豪州との共同開発区域内にある「バユ・ウンダン」が23年にも枯渇すると推測するためだ。石油収入の基金は潤沢にあるが、サンライズの稼働にめどをたてなければ国の財政運営がいずれ立ちゆかなくなる。

サンライズの計画に出資するティモール・ギャップのデ・ソウサ最高経営責任者(CEO)は稼働に関し「28年から30年」と語った。ロシアのウクライナ侵攻に伴う世界的な資源の逼迫が交渉を後押しするとの見方を示したと、ロイター通信が伝えた。

豪紙オーストラリアンによると、ウッドサイドのオニールCEOもこのほど、バユ・ウンダンの枯渇でサンライズを巡る交渉の加速に期待感を示した。東ティモールは交渉を有利に運ぶため、中国の支援を仰いで南部の開発を進め、パイプライン敷設の既成事実化を進めている。18年には中国企業が建設を担い南部を横断する高速道路の第1期工事が完了した。
投資環境の整備支援を
東ティモールがガス田「グレーター・サンライズ」を無事に稼働させても一件落着とは言いがたい。同国政府は周辺海域の石油・天然ガス資源は2030年代にも枯渇すると推測しているからだ。
国家歳入の9割を石油関連収入が占める経済構造からの脱却は喫緊の課題だが、議会では与野党が対立を繰り返し、国政が停滞している。5月20日に就任したホルタ大統領は代替産業の確立に取り組む。
世界銀行によると、20年の同国の1人あたりの国内総生産(GDP)は1442ドルと世界平均の10916ドルの1割強。アジアの最貧国の1つで産業の育成には各国から投資を呼び込む必要がある。
ネックは投資環境だ。金融、通信、法制度など民間企業が進出するうえで欠かせないビジネスの基盤が整っていない。若い人口構成や観光資源などの潜在性はあっても、企業は投資に及び腰になる。
官民一体の中国企業は、現地のビジネス事情はお構いなしに、次々と大型インフラ建設を受注し、本国から労働者を送り込む。中国浸透の末路は安全保障協定を結んだ太平洋のソロモン諸島かもしれない。
日本は安保上の観点からも米国やオーストラリアなどと連携して東ティモールに企業が進出しやすい環境が整うよう官民をあげて協力する必要がある。制度構築などソフトの支援は日本の得意分野だ。
(ジャカルタ=地曳航也)』