サウジ皇太子、後継指名から5年 原油高で外交活発化

サウジ皇太子、後継指名から5年 原油高で外交活発化
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『【ドバイ=福冨隼太郎】サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子がサルマン現国王の後継として指名されてから21日で5年となった。経済改革を進める皇太子への権限委譲はサウジ指導層の若返りを印象づけた一方、2018年の記者殺害事件で国際的なイメージは悪化。ムハンマド皇太子は足元の原油高を背景に活発な外交を進め、影響力の拡大を図る。

「2国間の関係をより高いレベルに引き上げる話し合いの場にする」。トルコのエルドアン大統領は17日にこう述べ、22日にムハンマド皇太子が首都アンカラを訪れると発表した。両者は4月末にサウジで会談したばかり。ロイター通信などによると、ムハンマド皇太子はトルコ訪問に先立ち20日夜にエジプトを訪問した。ヨルダンも訪れる計画だ。

7月には米バイデン大統領をサウジに招いて初会談する。原油増産などについて話し合う見通しだ。バイデン氏は湾岸協力会議(GCC)諸国の首脳会議にも出席する予定で、「アラブの盟主」としてのサウジの立場を誇示する場にもなりそうだ。

18年にトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で起きた在米サウジ人のジャマル・カショギ記者殺害事件を巡っては、バイデン政権発足後の21年2月に米国家情報長官室が「ムハンマド皇太子が記者殺害を承認した」とする報告書を発表。米サウジ関係は冷え込んだ。

だが、ロシアのウクライナ侵攻などによる足元の歴史的な原油高で環境は一変した。原油の国際相場の安定には、世界有数の産油国であるサウジの協力が欠かせない。人権を重視する米バイデン政権としても、ガソリン高で市民の不満が募るなかでは、記者殺害事件の真相究明を「棚上げ」してサウジに原油増産を頼まざるを得ない。

事件の舞台となったトルコでも殺害直後にサウジへの批判が強まったが、22年4月にはトルコの裁判所が政府の意向を反映するかたちで事件の審理を停止しサウジ側に移管すると決めた。通貨リラの下落やインフレが進行するトルコには、経済が好調なサウジとの経済協力の強化を引き出すねらいがあるようだ。

サウジが原油高や好調な経済状況をテコに国際的な影響力の向上を図るのは、外資誘致という理由もある。

同国は中長期の目標として石油収入に依存する経済体質からの脱却を掲げているが、実現には多国籍企業のマネーや技術を積極的に取り込む必要がある。殺害事件後、人権を重視する多国籍企業はなおサウジと距離を置いている。米国や周辺国との関係修復を通じて負のイメージの払拭に努めることで、投資先としての魅力を高めようとしている。

ムハンマド皇太子はサウジで遅れていた女性の社会進出や、映画館での映画上映の解禁などの社会改革も進めてきた。海外からの観光客受け入れも広げ、「閉ざされた国」という印象の刷新に努めている。』