習指導部、新疆前トップを「左遷」

習指導部、新疆前トップを「左遷」 米国へのシグナルか
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM182GP0Y2A610C2000000/

※ この他にも、楽玉成氏の外相への昇格見送り(全くの畑違いの、メディア関係のポストへと「左遷」した)という人事案件がある(記事でも、書いている)…。

※ 米国側でも、折からの「物価高騰」を受けて、「中国製品に対する高関税の一部適用除外」の声が出てきている…。

※ お互い、「カード」を切って、「距離を縮めて」、「落としどころ」を探っている感じだな…。

『【北京=羽田野主】中国の習近平(シー・ジンピン)指導部は新疆ウイグル自治区で人権を抑圧する政策を進めたとして米国が非難していた前自治区トップの陳全国氏を農業担当の幹部に異動させた。事実上の左遷とみられる。2022年秋の共産党大会を前に習指導部が米国との緊張緩和を探っているとの見方がでている。

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陳氏は16年から21年まで新疆ウイグル自治区のトップを務めた。17年に共産党序列25位以内の政治局員に就いており、22年秋の党大会で最高指導部の政治局常務委員になりうる「有資格者」の一人でもあった。陳氏がウイグル自治区のトップを外れてから担当が発表されず、処遇が注目されていた。

中国国営の新華社通信は、6月14日の農業政策を巡る党の会議で、党中央農村工作指導小組の副組長として陳氏が出席したと報じた。組長は同じ政治局員の胡春華(フー・チュンホア)副首相で、その格下に置かれたことになる。中国メディア関係者は「党大会の直前に事実上の降格に近い。陳氏の66歳という年齢からみても再浮上は難しい」と指摘する。政治局員として残れるかも微妙な情勢だ。

このタイミングで陳氏を「左遷」したのは米国との摩擦を和らげる思惑がありそうだ。

米国はトランプ前政権時に陳氏をウイグル自治区での人権侵害を理由に制裁を科していた。多数のウイグル族の市民が施設に「強制収容」されていたとする問題を巡り、陳氏が「数歩でも逃げれば射殺しろ」と発言した記録が米非営利団体によって今年5月に公開された。米欧で非難の声が強まっていた矢先の人事だった。

じつは陳氏の処遇が明らかになった6月14日に中国国務院(政府)も重要な人事を発表している。王毅(ワン・イー)国務委員兼外相の後継の有力候補と目されていた楽玉成外務次官が中国メディアを管理する国家ラジオテレビ総局の副局長に異動になった。

楽氏は中国外務省で敵対的とみた相手国を威嚇する「戦狼外交」を立案し、推進してきた幹部とみられている。楽氏の人事を巡っても対米緊張緩和のシグナルとの観測がでている。

習指導部にとって党大会前の対米関係の安定は最大の課題だ。バイデン政権が武器売却などを通じて関与を強める台湾問題を巡っても中国は猛反発しているが、有効な対応策を打ち出せていない。人権問題を巡り欧州との亀裂も深まった。

中国では経済減速が深刻化する中で、米欧と貿易を増やし投資を呼び込むことで経済浮揚につなげるべきだとの声も多い。経済の低迷が続けば、習氏の政治的な失点になりかねないリスクがある。

バイデン大統領は18日、習氏と近く首脳協議をすると明らかにした。米国は対中関税の一部撤廃を検討しているとされ、中国側のシグナルを受け入れた可能性がある。

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益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 准教授
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別の視点

楽玉成は戦狼外交の立案者というより、習近平=プーチンの蜜月関係の紐帯としての機能が重要だったのではと思います。ロシアでの駐在経験が長いロシア語使いで、習近平がカザフスタンで「一帯一路」を提唱したときに同国で大使をやっていました。
彼の異動は、中露関係の多少の調整を意味すると考えられています。中国は基本的にはロシアを支持するが、全てを歓迎するわけではない、必要に応じて米国とも対話する、というのが新たなポジションです。
ただ、彼が異動した国家ラジオテレビ総局は習近平が国際的な「話語権」(相手を説得する発言力)強化のために設立した組織。非西側諸国で人々の「マインド」をめぐる戦いが激化しそうです。
2022年6月20日 9:15

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

中国政治を研究する政治学者にとって悩みの一つは中国政治に含まれるメカニズムがわからないこと。多くの政治学者は共産党幹部の出身母体で太子党か青年団派かに色分けする。最近、米ブルキングス研究所の研究者は中央政府に抜擢される共産党幹部の出身地を細かく調べた。人事の基本は適材適所だが、適しいかどうかの判断基準はわからない。なかには仕事の能力はいまいちだが、指導者に迎合することに長けている人が抜擢される傾向がある。また、指導者に忖度して、人民に対する締め付けに奔走する幹部も。40余年前、毛沢東が死去したあと、夫人の江青女史が裁判にかけられ、彼女の証言:私は毛主席の飼い犬でいわれるがままに人を咬んだだけ
2022年6月20日 8:23』