中・東欧、ドイツ・フランスに不信感 ロシア対話に反発

中・東欧、ドイツ・フランスに不信感 ロシア対話に反発
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『【ブリュッセル=竹内康雄】ウクライナに侵攻するロシアへの対応を巡って、中・東欧諸国が欧州連合(EU)の中核国であるドイツとフランスへの不信感を強めている。EU加盟国間の対立はよくあるが、独仏を表立って批判するのは珍しい。亀裂が深まれば、独仏が域内の意思決定の重しになってきた従来のモデルが揺らぐ。

「ウクライナの主権、領土の一体性、自由を守るため、長期にわたってそばに居続ける」。16日、マクロン仏大統領はショルツ独首相、ドラギ・イタリア首相と共にウクライナの首都キーウ(キエフ)をロシアの侵攻開始後初めて訪れた。ゼレンスキー大統領と会談し、支援姿勢を改めて強調した。

マクロン氏やショルツ氏が意識したとみられるのが、ウクライナ国内や中・東欧諸国の間で広がっていた批判の声だ。

「第2次世界大戦中、ヒトラーとこのように話した者がいただろうか」。ポーランドのドゥダ大統領は9日付の独紙インタビューで、ロシアのプーチン大統領をヒトラーになぞらえ、対話を続ける独仏首脳を非難していた。

独仏首脳は外交的な解決の可能性を保つため対話の窓口を維持する必要性を訴えるが、ウクライナに譲歩を強いる形で和平を実現しようとしているとの疑念を生んだ。

リトアニアのナウセーダ大統領は「21世紀の欧州の地図を塗り替えようとする国家指導者と話をすることは不可能だ」とクギを刺していた。

独仏への不信感は今になって生まれたわけではない。ロシアは2014年、ウクライナのクリミア半島を一方的に併合した。だがその後もドイツはロシア産エネルギーの輸入拡大計画を推し進め、17年から現職のマクロン氏は対ロ関係改善を繰り返し説いた。

そして21年6月、当時のメルケル独首相とマクロン氏はEU加盟国とプーチン氏の首脳会談を提案した。旧ソ連に領土や主権を侵され、いまなおロシアの脅威をじかに受けるバルト諸国やポーランドの反対で実現しなかったが、独仏の親ロ姿勢への警戒が高まった。

風当たりがとりわけ強いのがドイツだ。ショルツ氏はロシアとの新しいガスパイプライン(ノルドストリーム2)の停止と国防費の大幅増額を表明した一方で、ウクライナへの兵器供与には慎重で、ロシア制裁にも消極的な姿勢を見せた。

ショルツ氏は「ロシアが勝ってはならない」と語るものの「ウクライナが勝つ」とは決して言わないと、欧州メディアは批判的に書き立てる。

EUは5月末の首脳会議でロシア産石油の輸入を年内に90%減らす部分的な禁輸で合意した。当初は全面禁輸をめざしたが、ロシアへの依存度が高いハンガリーが抵抗したため内容が後退した。「盟主」ドイツがハンガリーの説得に積極的に動いた形跡はない。他の加盟国からはリーダーシップをとらないドイツに不満の声が漏れる。

広がる亀裂はEUのロシア・ウクライナ政策に影を落とす。例えばウクライナ支援や増大する国防費をまかなうためのEUの共同債券を発行する構想だ。財政規律を重視する北部欧州と、中・東欧の対立は確実だ。

欧州委員会は17日、ウクライナをEU加盟候補国とする勧告を出した。戦争が終わった後、ウクライナを迎え入れるのか、欧州でのロシアをどう位置づけるのか。課題は山積している。EUが難題に直面したとき、誰が主導権を握るのか。

欧州政策研究所のパイキン氏は「メルケル氏が政界を去った今、(4月の大統領選で)再選を決めたマクロン氏がEUの長老格に見える」と言う。一方で「ドイツは強力な指導者の有無にかかわらず、その経済規模から欧州での重みは変わらない」とみる。

中・東欧諸国の信頼をつなぎ留め、司令塔不在といえる状況を打破できるかが問われる。』