NYダウ反落、3万ドル割れ 景気後退懸念で741ドル安

NYダウ反落、3万ドル割れ 景気後退懸念で741ドル安
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『【ニューヨーク=宮本岳則】16日の米株式市場では、ダウ工業株30種平均が前日比で一時900ドル超下落し、2021年1月以来1年5カ月ぶりに3万ドルを下回った。インフレ抑制を目指す米連邦準備理事会(FRB)が15日に利上げ加速を決め、英国やスイスの中央銀行も政策金利引き上げを決めた。急激な引き締めで景気後退に陥るリスクが改めて意識され、株売りが広がった。

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16日の米株相場は欧州株安の流れを引き継ぎ、朝方から売り優勢で始まった。ダウ平均は前日比741 ドル46セント(2%)安の2万9927ドル07セントで終えた。アップルが同4%安になるなど、大型ハイテク株の下げが目立った。米連邦公開市場委員会(FOMC)最終日を迎えた15日、米国株はいったん買い戻しされたが、勢いは続かなかった。

ダウ平均が初めて3万ドルを上回ったのは2020年11月だった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けた財政出動と金融緩和によって、株式市場にマネーが流れ込んだ。ハイテク株をけん引役に主要指数も連日のように最高値を更新した。こうした流れは逆回転し、ダウ平均の水準はコロナ直撃前の水準に近づきつつある。ナスダック総合株価指数はすでに20年9月以来の安値圏だ。多くの機関投資家が運用指標にするS&P500種株価指数も年初来安値を更新した。

投資家の警戒を高めたのは、欧州中銀の相次ぐ利上げだった。英中銀のイングランド銀行は16日、5会合連続の利上げを決めた。スイス国立銀行(中央銀行)は同日、政策金利を従来のマイナス0.75%からマイナス0.25%に引き上げると決めた。利上げに踏み切るのは約15年ぶりだ。据え置き予想も多く「サプライズとなった」(米ゴールドマン・サックスのクリスティアン・シュニットカー氏)という。

スイス中銀が同日公表した金融政策報告書では「さらなる利上げが必要になることは否定できない」と指摘した。国内総生産(GDP)成長率の見通しは据え置いたものの、エネルギー価格のさらなる上昇など下振れリスクが並んだ。

スイス中銀の方針転換は市場に先行き警戒サインを送った。ハト派の代表格さえも、インフレ退治優先を迫られる局面となり、物価高と景気減速が併存する「スタグフレーション」リスクを改めて意識させたからだ。米運用会社ナベリアのルイス・ナベリア氏は「スイス中銀による0.5%のサプライズ利上げによって、FOMC通過後の安堵ラリーは突然終わりを迎えた」と語る。

サプライズをいとわない姿勢はFRBにも通じる。前日のFOMCで1994年ぶりとなる0.75%の利上げを決めた。5月のFOMCでは「積極的に検討していない」と述べていたが、直近のインフレ指標が上振れしたことで、大幅利上げに踏み切った。

パウエルFRB議長は15日、データ次第で柔軟に政策を決める考えを強調した。従来は利上げ幅も含めて事前に市場に織り込ませる手法をとったが、方針を変えた形だ。インフレ対策の機動性を確保したが、「パウエル氏の話すフォーワードガイダンス(先行き見通し)の重要性は低下した」(米国野村証券の雨宮愛知氏)。経済指標に一喜一憂しやすくなり、相場のボラティリティー(変動性)を高める。

16日に公表された経済指標は経済活動の鈍化を示している。米商務省が16日発表した5月の住宅着工件数は154万9000戸(季節調整済み、年率換算)で、前月の改定値から14.4%減った。6月のフィラデルフィア連銀景況指数はマイナス3.3となり、20年5月以来のマイナスとなった。経済指標の悪化はスタグフレーション懸念を高め、投資家にリスク回避の株売りを促した。

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滝田洋一
日本経済新聞社 特任編集委員
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景気後退を懸念した米国株の急落? 米景気後退は遠い先の話ではありません。アトランタ連銀のGDP Now(足元景気予測)を見てください。4~6月期の実質成長率見通しが15日の時点でついに0.0%まで低下し、16日も0.0%のままでした。つまり、1~3月期の▲1.5%に続き、4~6月期もマイナス成長の土俵際に立たされているのです。2四半期連続のマイナス成長に陥れば、定義によりリセッション(景気後退)です。そのさなかでも、インフレ高進に対処するために、FRBは金融引き締めを強化せざるを得ない。景気後退下のインフレとなると、スラグフレーションが現実味を帯びてくる。株価の急落はそのリスクの反映です。
2022年6月17日 7:05 (2022年6月17日 7:39更新)
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永浜利広
第一生命経済研究所 首席エコノミスト
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今週のFOMCで注目された「ドットチャート」では、今年末の政策金利の誘導目標の中央値が3カ月前の前回1・875%から一気に3・375%と引き上がりました。
一方、FOMC参加者は、景気に対して引き締めでも緩和でもない中立的な政策金利の水準を2・5%程度と推計しています。
このため、ドットチャートの結果は、FOMCの参加者は年内にも過熱しすぎた景気や労働市場を意図的に冷ますまで金融を引き締めてインフレ率を抑え込もうとしていることを意味します。
こうしたことからすれば、景気後退懸念が高まるのは当然の帰結と言えるでしょう。
2022年6月17日 7:23
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田中道昭
立教大学ビジネススクール 教授
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株価の日々の乱高下に一喜一憂するよりは、大きな変化が起きていないか見極めることが重要な局面だと思います。2008年頃からの低金利・低インフレの時代が終わり、高金利・高インフレの時代へのレジームチェンジが起きているという見方をする大物市場関係者が増えています。世界最大のヘッジファンドのブリッジウォター創業者レイダリオ氏もファンダメンタルズの変化や新たな世界秩序と表現。現在の市場関係者の見方の違いの重要点はインフレ懸念が短期的なもので収束するか否か。5月末にイエレン財務長官が見通しの間違いを認める発言をする中、サマーズ氏やダリオ氏等の重鎮がより大きな変化が起きていると見ていることに要注意です。https://www.bloomberg.com/news/articles/2022-05-31/yellen-says-i-was-wrong-last-year-on-the-path-of-us-inflation
2022年6月17日 6:54 (2022年6月17日 7:04更新)

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