NATO会議「力の均衡」への転換点に 日韓も異例の出席

NATO会議「力の均衡」への転換点に 日韓も異例の出席 
欧州総局長 赤川省吾
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGR1409B0U2A610C2000000/

『ロシアのウクライナ侵攻が続くなか、6月29~30日にスペインのマドリードで北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開かれる。非加盟の日本や韓国、オーストラリアの首脳も異例で出席。民主主義陣営の結束を示す。「新・冷戦」の誕生で分断が深まる世界を象徴する会議となる。

欧州では6月にウクライナを巡る重要な国際会議が相次ぐ。欧州連合(EU)がウクライナのEU加盟を話し合い、主要7カ国(G7)は経済支援策を詰める。その締めくくりがNATO首脳会議となる。非加盟の日韓、豪州などを招くのは、NATOが単なる軍事同盟でなく、「価値観」を共有する同盟であることをアピールするためだ。ウクライナへの連帯感を示す一方、ロシアや中国をけん制するだろう。

世界秩序は歴史的転換点に

NATO会議は世界秩序が2つの点で歴史的な転換点にあることをあらわす。

ロシアのウクライナ侵攻を受けて、3月に開かれたNATO緊急首脳会議(ブリュッセル)=ロイター

まず外交・安全保障の重心が「対話」から「力の均衡」に移る。スウェーデンとフィンランドは伝統的な中立策を放棄し、NATO加盟へと舵を切った。ドイツは軍縮を転換し、国防費を増やす。対話路線を棚上げした欧州は軍拡でロシアに対峙し、消滅したはずの「鉄のカーテン」が復活する。

2つ目は「20世紀型戦争」の再燃だ。近年は対テロやサイバー戦が続いてきたが、一転して国家同士の武力衝突が現実に起きた。各国は戦車や戦闘機などでの戦争に再び備える。
グローバル化からブロック化へ

冷戦終結後、国境を越えたヒト・カネ・モノの移動が世界中で活発になった。流れは逆転し、グローバル化からブロック化に移行する兆しがある。政治・経済はもちろん、文化・スポーツでもロシア排除が広がる。

ウクライナは「20世紀型戦争」の舞台となった(写真は親ロシア派武装勢力の戦車)=ロイター

ロシアが加盟する欧州安保協力機構(OSCE)もなんとか歯止めをかけようとしている。中立国オーストリアの重鎮政治家、ロパトカ議員を特別代表に選び、ウクライナとロシアの仲介を探る。ロパトカ氏は日本経済新聞の取材に対し、両国の議員らと接触したことを認めたうえで「停戦交渉にはほど遠い。まだ条件すら話せていない」と漏らした。

留意すべきはロシアが孤立していないという点だ。中国は経済制裁に加わらず、中東・アフリカ諸国も様子見だ。一方、日米欧はロシア制裁の副作用といえる物価高におびえる。欧州ハイブリッド脅威対策センターのヒンドレン国際局長(元フィンランド国防省幹部)は確信する。「ロシアとの長い対立になる」

冷戦時代に西側諸国が設けた貿易制限「対共産圏輸出統制委員会(ココム)規制」は40年かけて旧ソ連を経済崩壊に追い込んだ。民主主義陣営と強権国家による我慢比べは始まったばかりだ。民主主義陣営は足並みをそろえ、毅然とした態度を貫くのが望ましい。

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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ひとこと解説

ポストウクライナ戦争の新冷戦というのはこういうものだろう。民主主義陣営は結束を強化しようとしている。これはロシアの誤算といってよかろう。課題はアメリカがもっとしっかりしないといけない。当面は中間選挙後のアメリカの政策トレンド。そして、次期大統領選でトランプが戻ってくるかどうか。その結果次第で世界はまだ変わる
2022年6月17日 10:57 』