[FT]制裁下のロシア経済フォーラム、士気高揚の場に

[FT]制裁下のロシア経済フォーラム、士気高揚の場に
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『ロシアのサンクトペテルブルクで毎年開催されている「国際経済フォーラム」は、国内企業をアピールし、世界の投資家をロシアに呼び込むためにプーチン大統領が企画した会議だ。だが、欧米諸国の制裁を受けてロシアが経済危機に陥るなか、今年のフォーラムは士気高揚を図る場と化している。
16日、国際経済フォーラムでの議論を聞く参加者=ロイター

「現在起きている出来事や、政府、企業、国民の経済動向への反応状況をみれば、ロシアがこの事態を切り抜けたことがわかる。ロシアは強大な国だ」。プーチン氏の経済顧問、マクシム・オレシキン氏は16日、公開討論会でこう語った。

もっと強気な出席者もいる。ロシア政府とつながりがある実業家コンスタンチン・マロフェーエフ氏は「ソ連崩壊以降、今年はロシア経済にとって最高の年だ」とぶち上げた。

表面的には威勢がいいが、18日まで開催されるフォーラムはこれまでと比べて明らかに盛り上がりに欠ける。以前はオリガルヒ(新興財閥)や国営企業が大型契約に次々と調印し、海外から出席する多数の有力経営者や政治家のために豪華なパーティーも開かれていた。

今年はウクライナ戦争を受けて国際的な対立が深まるなか、欧米各国の代表やその友好国は総じて姿を見せていない。

欧米の制裁対象になっているオリガルヒの1人は「毎年、イタリア人や日本人などと契約を交わしていたが、今年は契約案件もなければ契約相手もいない」と語った。

そこで運営団体は、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席やエジプトのシシ大統領などロシアの友好国首脳に17日の基調イベントへの出席を求めた。だが、両者ともプーチン氏とともに登壇するのではなく、ビデオ演説を選んだ。プーチン氏はウクライナからの独立を主張する親ロシア派勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の指導者を伴って演説する予定だ。
タリバン代表が参加

フォーラムに出席している外国要人は他にもいる。カザフスタンやアルメニアの大統領、中央アフリカ共和国の首相、キューバ、ベネズエラ、ミャンマーの政府関係者、アフガニスタンの実権を握るタリバンの代表などだ。

16日に開かれた目玉の経済討論会では、ウクライナにも戦争にも触れられなかった代わりに、ロシアがいかに経済的影響を乗り越えるべきかが話し合われた。

欧米の制裁を受けてロシア企業の多くは資本市場から切り離され、輸入品のサプライチェーン(供給網)が寸断された。外資系企業はロシアから大挙撤退し、ロシア政府は国際的に流通するハード・カレンシーへの国民のアクセスを制限せざるをえなくなった。

ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は16日の目玉の経済討論会で「外部環境が変わってしまった。永遠にこのままではないにしても、長期的にこの状況が続くだろう」と述べ、企業に対して輸出重視の戦略を手放し、国内市場に注力するよう求めた。

一方、ロシアのオリガルヒは国内での報復を恐れてプーチン氏のウクライナ侵攻を非難することに消極的で、目立った言動を避けている。中には、まったく姿を見せない人物もいる。制裁対象になっている産業界の重鎮オレグ・デリパスカ氏は先週、オンライン上にサクランボ園の動画を投稿し、フォーラムに出席するより「収穫する時期だ」とコメントした。
会議場にはアフガニスタンからの参加者も顔をみせた=ロイター

その他にも身元を伏せたままフォーラムに出席しようとして、名札に名前を表記しないよう主催者に求める出席者もいた。

ロシアの大手製造企業の幹部は「出席者は多くない。今年は明らかに減っている。誰もかれもが『この制裁下でどうしている』と尋ね回っている」と言う。「悲しい情景だ」

フォーラムに出席した欧米企業の幹部は、ロシアより欧米のほうが制裁の痛手を負っているのではないかと懸念している。制裁を受けて、グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)がロシアと好条件で取引するようになった一方で、ウクライナ戦争をきっかけにエネルギー価格が高騰して欧米はインフレ高進に苦しんでいるというのだ。

フォーラムに出席した欧米企業の幹部は「(ロシアという)輸出市場を失い、エネルギー費用が30%上昇して自社製品の単位製造原価の半分をエネルギーが占めるようになれば 、お手上げだ」と話す。「一方で中国の競合企業に対してはエネルギー価格が40%値引きされている。取引条件はそういう風に変化している」

ウクライナ侵攻開始から数週間で企業がロシアから相次いで撤退するなかで、資産をロシアに残すことを憂慮する声もある。

「数十億を売り上げるビジネスをなぜロシアに贈り物として差し出さなければならないのか」。イタリア金融大手ウニクレディトのロシア子会社の売却計画を巡る討論で、イタリア・ロシア商工会議所のビンチェンツォ・トラニ会頭はそう問いかけた。「それが間違いなくイタリアの利益になるのか」

欧米企業の撤退が今後続いたとしても、新しい海外パートナーを呼び込むとロシアは表明している。

プーチン氏の側近で、ロシア政府系のハイテク複合企業ロステックを率いるセルゲイ・チェメゾフ 氏はロシア紙RBCの取材に対し「欧米の裏切りのために窓を閉じ、扉を閉めるのではない。我々は制裁を発動した国と別の道を行くが、世界の他の地域には一貫して理念に基づいて行動しているパートナーがいる」と語った。

マロフェーエフ氏は欧米の制裁で受ける経済的な痛みはロシアより欧米のほうが大きいという。

同氏は「欧米の企業や国々はエネルギー価格の上昇に苦しんでいる。一方でロシア企業は成果を上げている。夢にも獲得できると思わなかった特定市場を手に入れているのだ」と述べた。「唯一残念なのは、(当局が)いち早く欧米を切り離すのではなく欧米が手を引くのを見ていたことだ」

一方で、意気軒高なロシアとは意見を異にする海外の出席者もいる。欧米企業のある幹部は「世界的大手企業が欠席し、その代わりにタリバンの代表が出席している状況で説得力はない」と切り捨てた。

By Max Seddon and Nastassia Astrasheuskaya

(2022年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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