米国、ウクライナに追加軍事支援 1300億円

米国、ウクライナに追加軍事支援 1300億円
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『【ワシントン=坂口幸裕】米政府は15日、ロシアが侵攻を続けるウクライナに追加で10億ドル(約1300億円)相当の武器を供与すると決めた。ロシア軍による黒海封鎖でウクライナからの穀物輸送が滞っている事態を打開するため、地上配備型の対艦ミサイルシステムを新たに送る。食糧価格の高騰を和らげる狙いがある。

バイデン米大統領は15日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議し、追加の軍事支援を説明した。米ホワイトハウスは15日に声明を発表し、首脳協議で「ウクライナの民主主義を守り、ウクライナを守るという約束を改めて確認した」と記した。

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ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降、米政府が決めたウクライナへの軍事支援は総額56億ドルになる。今回の支援では地上配備型対艦ミサイルシステム「ハープーン」2基を盛った。5月下旬にデンマークが提供を決めており、ウクライナが求めてきた。米国による武器支援に含めるのは初めてになるもようだ。

ロシアによるウクライナ侵攻で穀物価格は上昇している。ロシアが黒海に面したウクライナ南部オデッサ港を封鎖し、トウモロコシ輸出が世界4位、小麦が世界5位である同国からの出荷が停滞しているのが一因だ。ウクライナ沿岸に対艦ミサイルを配備し、ロシアに対抗する。

米国務省高官によると、現在ウクライナの食糧貯蔵庫には2億人から4億人を賄える2000万トンの穀物が出荷できないままになっている。アフリカや中東などに向かう予定の穀物が含まれているとみられ、国連などは飢餓の深刻化を懸念している。

ウクライナ東部で戦闘を想定して4月以降から供与してきた155ミリりゅう弾砲をさらに18門送る。すでに約300門の譲渡を決めている最大射程30キロメートルほどのりゅう弾砲を拡充する。弾薬も3万6000発を追加する。

すでに供与を決定した「ハイマース」と呼ばれる高機動ロケット砲システムの弾薬も渡す。射程は最大70キロメートルほどで、平地が多い東部ドンバス地方で攻勢を強めるロシア軍の砲撃に対峙する態勢を増強する。

オースティン米国防長官は15日、ベルギーで開いた米欧など約50カ国の国防相らとの会合でドイツ政府が多連装ロケットシステムと弾薬の提供を申し出たと明かした。米英と足並みをそろえ、長距離ロケット砲を送る。オースティン氏は会合後の記者会見で「ドンバスでロシアを撃退するために不可欠だ」と述べた。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長はロシア軍の砲兵や射程に触れ「数字では明らかにロシア軍が有利で、十分な戦力を持っている」と指摘。一方、ロシアが直面する軍の補給体制や士気低下などの課題を挙げ「戦争は単なる数のゲームではない。どう使うかが重要だ」と訴えた。

バイデン政権はロシアによる攻撃で被害を受けたウクライナ国民を支援するため、追加で2億2500万ドルの人道支援も実施する。飲料水や食糧、医薬品、避難所の設営などを想定する。
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

ウクライナへの地上配備型の対艦ミサイルの供与は、ロシアの黒海艦隊にとっては大きな脅威となるでしょう。特にアメリカがロシア海軍艦艇の位置情報をウクライナと共有することになれば、現在のロシアの黒海封鎖作戦への大きな挑戦となるでしょう。米国はウクライナに対して、過度に攻撃的な武器を供与して、戦争を激化させて長引かせたくないという懸念もありますが、今回は世界的な食糧危機を防ぐという目的を優先して、ウクライナへの軍事援助を強化した形になりました。
2022年6月16日 8:11

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深川由起子
早稲田大学政治経済学術院 教授
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今後の展望

戦争が長引き、世界中にインフレや食糧危機が広がり、その中で米国の中間選挙が近くなり、西側結束力維持へのプレッシャーが増しつつあります。ロシアや中国にとっては「多様な民主主義」を掲げ、「無責任に上から目線の説教を繰り返すだけの西側」と、途上国・新興国に広く存在する心情的反発を刺激する好機。欧米が夏休み入りする前の今月はいろいろなドラマが増えそうです。
2022年6月16日 9:02 』