監視社会 中国で「健康コード」を乱用した抗議行動抑圧が物議

監視社会  中国で「健康コード」を乱用した抗議行動抑圧が物議 「幸福な監視社会」の実態 – 孤帆の遠影碧空に尽き
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『【中国人の中には、国家や政府は自分たらを守ってくれる「お父さん」や「お母さん」と考える人が一定数いる】

周知のように中国では個人情報が政府によって管理されており、至るところで「身分証」の提示が求められます。

****怖い?安心?中国の徹底した個人情報管理 生まれた日に18桁の個人番号、至る所で身分証の提示****

日本ではマイナンパーカードについて「個人情報を管理されるのでは」との懸念などから普及が進んでいない。一方、中国では生まれた時から個人番号などで管理される。身分証は様々な場面で求められるが多くの国民は受け入れているのが現状だ。中国が進める個人情報の管理は行き過ぎなのか?FNN北京支局の河村忠徳記者が解説する。

中国の個人情報驚きの実態 
 
FNN北京支局・河村忠徳記者:中国で国民の個人情報がどれほど政府に管理されているかをお伝えします。まずその象徴が身分証です。これは中国の国民全員が16歳になると作るもので、個人番号などの情報が記されています。

そして、登録時には指紋情報と顔写真が撮影されます。この身分証は多くの人が常に携帯していて、実際に至る所で身分証の提示が求められます。

例えば公園に入る際にも「身分証」の提示が必要になります。他にも飛行機や高速鉄道、そして長距離バスの移動、銀行口座の開設、ホテルの宿泊、携帯電話の契約の手続き、学校の入学、就職、結婚届けなど、人生のあらゆる場面で身分証が必要になります。

この「身分証さえ1枚あれば」、ほとんどの手続きができて便利という声もありますが、言い換えると、この身分証によって個人情報が確認されないと、生活できないのが現実とも言えます。

スマホを通じた個人情報管理

さらに、スマートフォンのアプリを使った個人情報の管理も進んでいます。その1つが電子マネーです。中国ではスマホで電子マネーを通じて全ての支払いが完了し、現金を使うことがほぼありません。実際に私も2021年9月に赴任し、今日に至るまで現金を使ったことがありません。こうしたスマホの電子マネーを通じてお金の流れも当局に一目瞭然となっています。

コロナ対策アプリで行動履歴を

また、北京では一般のコロナ対策として、「健康宝」というアプリが導入されています。これはコロナ対策という名目で導入されたアプリですが、人の「健康」だけでなく「行動」まで管理します。

今は、建物などに入るたびにアプリのQRコードの読み取りなどが求められています。ただ、この健康宝には日本のコロナアプリとの大きな違いがあります。それは身分証番号など個人情報と紐付けられていることです。そのため、誰がどの建物に入ったかなど個人の行動履歴が記録され、当局はこれを確認することができるんてす。

生まれた日に18桁の個人番号

このように、中国の国民は徹底した個人情報の管理下に置かれていますが、それは生まれた日から始まっています。中国人は生まれた日に18桁の個人番号が国から与えられ、この番号は一生変わることはありません。そして子どもが生まれた際の「出生届」をどこに提出するかというと、日本では自分が住む最寄りの役所に提出しますが、中国の場合は最寄りの「公安局」、日本でいう「警察署」に提出するんです。

生まれてすぐに個人情報を警察が管理するというのは、日本人にとっては違和感がありますが、これは中国では当たり前のことなんです。ある中国人は、「人間は悪いことをしてしまう生き物で、最初に警察が管理しておけば、悪い事件が起きてもすぐに解決できる」とメリットを語っていました。

確かに、治安の維持という面では役立っているんです。中国では警察が「身分証」の提示を求めた場合、国民は必す応じなけれはいけないと法律で決まっています。

犯罪者の検挙につながることも

これにより、2018年には北京市だけで殺人など様々な犯罪を起こし逃亡していた6000人余りの摘発に繋がったということです。

身分証が捜査に役立った例としては、ほぼ強制的に行われているコロナのPCR検査で、身分証の提示を拒んでいた男がいて、警察が確認すると、実は指名手配中の男だと判明し逮捕されたという例があります。

また、ある女性は、身分証の提出が必要な鉄道に乗る際、偽造した身分証を提示したことで、検挙されました。この女性が、なぜ身分証を偽造する必要かあったのかというと、実は当時交際していた男性に対し、年齢をさば読みしていて、「本当の年齢が分かってしまう正式な身分証を使用できなかった」という事でした。

このように完全に個人のプライバシーが全て筒抜けになる中国の身分証に対して、中国国民はどう感じているのか、街で聞いてみました。

「色々な物を持たなくてよいので便利です。身分証とスマホがあれはどこにも行けます」(中国人女性)

「私は良いと思います。身分証で管理すると、どこかで、事故に遭っても全て判明するので」(中国人男性)

男性が話したように、先月、中国の広西チワン族自治区で起きた旅客機の墜落事故の際、乗客はこの身分証を提示していたことから、すぐに特定に繋がり、家族への連絡もできたと言います。

実際に話を聞いた中国の人たちは個人情報を政府が管理することに抵抗はありませんでした。それはなせかというと、中国人の中には、国家や政府は自分たらを守ってくれる「お父さん」や「お母さん」と考える人が一定数いるからです。

中国では街の至る場所に防犯カメラがあり、地下鉄に乗る時でさえ、持ち物検査がされます。こうした中国の徹底した個人情報管理は、私たち日本人や欧米諸国から見るとマイナスに見える部分がありますが、多くの中国人はこれを社会の安全にとって、「必要なこと」として受け入れています。

では日本は国民の個人情報をどう扱っていくのか。治安の維持や、便利さの一方で、プライバシーが犠牲になることをどこまで許容するのか、日本と中国の政治や社会の体制は違いますが、色々と考える必要があると思います。

加藤綾子キャスター:中国では、徹底した個人情報管理とかが、便利だとか、安全だという認識につながっているんですね。

キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・宮家邦彦氏:僕は、この間、マイナンバーカードのアプリを初めてやったんだが、それは便利ですよ、色んなものが、情報があってね。だけどね、今の話を聞いてたら、どっちがいいのかなと思いますよね。こういうカードを見た時に、思い出すのは、エストニア。全員がこういうカードを持っていて、色んな情報が入ってるんですよ。

だけど、エストニアは、面倒な行政手続きから、国民をどうやって解放するか、という観点で作られている。だけど、中国の話を見ると、どうも個人を解放するというよりは、行政が、個人をどこまでコントロールするか、そのために使われているような気がする。そうであれば困るなと思います。

中国人は勝手な人も多いけど、本当の自由を知らないんじゃないですか。本当の自由を知ったら、そんなことは言えませんよ。(イット!4月5日放送分より)【4月5日 FNNプライムオンライン】
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【個人情報を使用した“行政による個人のコントロール”】
個人情報を使用した“行政による個人のコントロール”の実例が問題にもなっています。

****中国当局、コロナ対策名目で抗議活動封じ スマホアプリを悪用か****
中国メディアは15日までに、河南省で預金の引き出し停止が続く地元銀行に抗議する多くの利用者が、新型コロナウイルス対策の名目で行動を制限される事態が起きたと伝えた。

中国で利用が事実上義務付けられている「健康コード」と呼ばれるスマートフォンのアプリを悪用した可能性がある。中国国内からも「防疫措置への市民の支持を損なう」と批判が出ている。

河南省では複数の金融機関が違法に資金を集め、計400億元(約8千億円)規模の預金が今春から引き出せなくなり、利用者らが抗議活動を展開している。

中国メディアによると、このほど抗議のため河南省入りしたとみられる省外の預金者の健康コードが、「感染リスクが高い」ことを意味する「赤」の表示に変化。他の多くの預金者のコードも同様に変化し、専用施設に閉じ込められたり、省外に追い返されたりしたもようだ。

健康コードは、PCR検査の結果や感染拡大地域への滞在歴などから利用者の感染リスクを緑、黄、赤の3段階で表示するスマホのアプリ。自宅や商業施設、公共交通機関に入る際に提示を求められることが一般的だ。「赤」の場合は隔離が求められる。河南省の地元当局は抗議活動を止めるため、利用者のコードの表示を意図的に変えた疑いが指摘されている。

共産党機関紙、人民日報系の環球時報は15日付で「健康コードの科学性、厳粛性を絶対に守らなければならない」と題した論評を掲載。この中で「乱用された可能性があるかどうかは、決して小さな問題ではない」とし、地元当局に早急な調査を求めた。

健康コードは、中国政府のコロナ対策の主要な柱となっている。習近平政権は「ゼロコロナ」政策を堅持しており、対策の正当性に疑念が生じかねないと警戒しているとみられる。【6月15日 産経】
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以前から「健康コード」の緑、黄、赤判断がどのように行われているのか・・・その曖昧さを懸念する声がありましたが、今回は行政によって抗議行動封じ込めに悪用(活用?)された事例のようです。

国家による情報管理のあり方、監視社会の実態を問う非常に憂慮すべき事件で、さすがに政府系メディアが「決して小さな問題ではない」としているように、「乱用」に対する批判はあるようで安心しました。

一方で、当局が積極的に個人情報管理の在り様を個々人に見せつけて、社会コントロールをしようという動きも。

****IP情報を中国SNSへ公開した目的とは?「お前はもう知っている」****
省や直轄市、国名で表示
中国の主要SNSでIP情報が公開されるようになって1か月半が経った。IPといっても、198.51…のようにアドレスとして表示されるのではなく、広東省や北京など省や直轄市単位で表示され、中国国外だと日本などと国名で表示される。

IP情報公開は、4月28日に微博(ウェイボー)で始まり、翌29日にはWeChat(ウィーチャット・微信)、TikTok(ティックトック)の中国国内版である抖音(ドウイン)でも始まった。

中国メディアによると、国が強制したものではないと伝えているが、ほぼ開始タイミングが同じなので、中国政府が主導して始めたと考えて良い。IP情報公開の目的について、ウェイボーは、「悪意あるデマやアクセス稼ぎを減らすため」と説明している。

中国在住者に聞くと、これまでウェイボーで、プロフィール上に日本在住と記載し、日本の情報を発信していた著名なインフルエンサーが、実は日本でなく、中国国内の山東省在住だったことが明らかになった例があるそうだ。

「このタイミングでのIP情報公開が始まったのは、上海のロックダウンが影響していると思われます。『全員の情報を政府は監視しているぞ』との警告もあるのではないでしょうか」(深セン在住者)

というのも中国政府は、わざわざ表示させなくても最初からすべての情報を把握しているからだ。中国は、SNSが登場した当初から利用ユーザー全員のIPアドレスを政府がすぐに確認できる仕組みになっている。中国政府は、登録情報を瞬時に取得でき、公安と連携して簡単に拘束できる体制で監視を強化してきた。

今回、政府が最初から把握しているIP情報をアプリ上に表示させたのは、抑止効果を狙ったものと言えそうだ。【6月16日 コリアワールドタイムズ】
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【改めて「幸福な監視社会」を考える】

冒頭【FNNプライムオンライン】にあるように、多くの場面では国家による個人情報管理は効率・治安などの面で大きなメリットがあります。

しかし、国家がどのような意図で情報管理するのか、情報をどのように使うのか・・・必ずしも“国家や政府は自分たらを守ってくれる「お父さん」や「お母さん」”ではすまないケースも生じます。
ときに、弾圧・抑圧に利用されることも。そうした場合、国民の側には身を守るすべがありません。

そうした中国における情報管理、監視社会を取り上げて3年前に話題になったのが「幸福な監視社会」

****中国人が監視国家でも「幸福」を感じられるワケ
『幸福な監視国家・中国』梶谷懐氏、高口康太氏インタビュー****

アリババの「芝麻信用(セサミクレジット)」などに代表されるように、日常における個人の消費行動が「信用スコア」のレイティング(等級分け)に利用される中国。レイティングが高ければ、様々なサービスを受けることができる特典が与えられることから、スコアを付けることが日常化している。

ここにきて地方政府などが運用する「社会スコア」というものまで登場している。これには交通違反、ゴミの分別などがレイティング対象となり、スコアの悪い人はブラックリストに載せられたり、航空機などの公的サービスが利用できなかったりするなどのペナルティがある。

個人情報によってレイティングされたり、個人の行動が監視カメラで監視されていたりするなど、日本人が聞くと「どうせ、中国は専制国家だから、プライバシーに無頓着で、監視されることにも慣れているんでしょ……」などと思ってしまいがちだ。しかし、実はそうではない。

そんな中国の実態を、中国経済論が専門の神戸大学経済学部教授・梶谷懐さんと、中国問題が専門のジャーナリスト・高口康太さんが現地取材を交えながら執筆したのが『幸福な監視国家・中国』(NHK出版新書)だ。お二人に、「監視=幸福」という、一見、相反することがなぜ中国で成立しているのか? 聞いてみた。(中略)

強制ではなく、インセンティブを与える

「社会スコア」が導入されつつあるのも、強制力で従わせるのではなく、お行儀の良い行動をとったほうが「得」というインセンティブを与えることで、自然にその方向に向かわせるという狙いがある。

こうしたことから、中国では「便益(幸福)を求めるため、監視を受け入れる」、「プライバシーを提供することが利益につながる」という考え方が一般化している。

二人はどのような場面でそれを最も実感したのか?

「中国では、医療体制に問題を抱えていました。オンライン診療ができることになったことで、何時間も並んで診察を受けるといったことがなくなりました。サービスを提供しているのは大手保険会社で、個人が差し出す医療情報をビッグデータとして蓄積・解析することでビジネスに活用しています。これにより、迅速かつ低コストで、医療サービスを提供することが可能になっています」(梶谷さん)

「一つだけあげるのは難しいですが、梶谷さんのおっしゃる医療でもそうですし、顔認証だけで様々なサービスが受けられたり、自動車を駐車場に停めても勝手に精算が済んでいたりと、生活するなかでの面倒が日々少なくなっていくのを実感することができます」(高口さん)(中略)

信用スコアはもちろん、QRコード決済など、中国で新しいサービスが急速に普及する背景には、もともとそうしたインフラが整っていないということも関係している。(中略)

日本など先進国だと、先に整ったインフラや規制(ルール)が弊害となって新しいサービスがすぐに社会実装化されることは少ない。米ウーバーのサービスが「白タク」として許可されていないのは、その典型例だ。

「レギュラトリー・サンドボックス方式」と呼ばれる、規制緩和を行って新技術の実証事件を行う仕組みが、イギリスやアジアで導入されているが、中国ではまさにそれを地で行き「先にやって後で許可を得る」という形で、日常的に新しいサービスの試行錯誤が行われている。こうした環境がベンチャー企業を育み、中国発の新サービスを生む土壌となっている。(中略)

新疆ウイグル自治区というディストピア

一方で、デジタル・監視国家の負の側面もある。代表例として本書でも挙げられているのが、ウイグル人の問題だ。彼(女)らは日常生活を監視カメラやスマホのスパイウェアで管理されている。(中略)一般の中国人(漢民族)はこの問題をどのように考えているのだろう。

「私が中国に留学していた際の経験からも、マジョリティである漢民族の中には、新疆人(ウイグル人)は何をするか分からない、怖い人たちだ、という意識があるのを感じました。(中略)ですから、他地域で実施されれば激しい反発が予想される厳しい監視体制も、ウイグル人を対象にしたものである限り、抵抗なく受け入れられている面があるように思います」(梶谷さん)

「やはり、民主主義の欠如ということが問題です。同時に、99%の中国人にとって、そのリスクは捉えられていません」(高口さん)

使い方次第で、ディストピア社会も生み出してしまうが、多くの中国人にとって、それは圏外の問題なのである。

もう一点、不気味さを感じさせるのが、民意を先回りして政策を実行できるという点。
「言論の自由が保障されていないにもかかわらず、買い物の履歴やSNSの発言から情報を収集することで「民意」をくみ取り、それを政策に反映することが可能になっています」(梶谷さん)

「(中略)こうしたシステムを駆使すれば、選挙ではなく、監視によって民意を察知することも可能です。たとえば焼却場の建設計画を進めている時、住民の反発が非常に強く大規模な抗議活動が起きかねないと、世論監視システムが予測します。そうすると、地方政府は先手を打って説得したり、あるいはスピン情報を流したりという対策が打てます。場合によっては建設計画を撤回することもあるわけです」(高口さん)

これまで、社会課題などを議会で議論することで解決するという形をとってきたわけだが、情報を収集して解析すれば、そのような手間のかかる作業をしなくても、多くの人にとっての最適解が出されてしまう。

社会に対して大きな不満を持つことなく(ということは、投票率は益々下がり、今でも少ないデモなどももっと起きなくなる)、無風のまま政府によって飼いならされていく……。

テクノロジーの発達によって人の仕事が奪われるということが話題になっているが、民主主義社会を支える土台においても、人間が積極的に関与しなくてもよい状況が生まれつつあるのかもしれないと思うと、背筋が寒くなる。

中国に限った問題ではない

(中略)「ブレグジット、トランプ大統領の登場などによって、『民主主義って機能しているの?』というイメージを中国人は持っています。人に任せるよりデータに任せたほうが良いのではないかという。日本にも民主主義が機能不全だと考えている人は増えているのではないでしょうか。だからといって、中国と同じになるのがいいとは思いませんが、民主主義をバージョンアップさせるためにも、中国がどう課題に取り組んでいるかを知ることは必要不可欠でしょう」(高口さん)(後略)【2019年8月23日 WEDGE】
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