カナダとデンマーク、北極圏の島の分割領有に合意

カナダとデンマーク、北極圏の島の分割領有に合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB169VJ0W2A610C2000000/

『【ニューヨーク=共同】カナダとデンマーク両政府は、約半世紀にわたり領有権を争った北極圏の「ハンス島」をほぼ半分ずつに分割領有することに合意し、14日に調印式を行った。ロシアのウクライナ侵攻が続く中、領土問題の平和的解決が可能だとの「強いシグナル」を世界に発した形だ。

ハンス島はカナダのエルズミア島とデンマーク自治領グリーンランド間の海峡に浮かぶ無人島。1973年の国境線画定時に双方が領有権を主張、80年代以降は双方の軍関係者らが国旗と自国産の酒を交互に島に置いて領有を誇示する習慣ができ「ウイスキー戦争」「世界で最も友好的な争い」などと呼ばれてきた。

今回、突然にも見える合意に至ったのは、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領を念頭に「外交と法治は機能するという強いシグナル」(デンマークのコフォズ外相)を発信することが目的だった。カナダとデンマークはともに北大西洋条約機構(NATO)加盟国としてウクライナを支援している。

カナダのジョリー外相はオタワでの調印式で「国境線を書き直すのに銃は必要ない」と強調。コフォズ外相も「メッセージがプーチン氏に届いてほしい」と訴えた。両外相によるカナダウイスキーとデンマーク酒のボトル交換も行われた。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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別の視点

こうした領土紛争の解決として、領土を面積で半分にして分割するという解決が有効であるということを示す一つの例になっているように思う。これは中露の国境問題でも同様であった。しばしば北方領土での面積半分としての分割案が出てきたりするが、北方領土の場合、ロシアが実効支配しているため、そうした解決が難しい。もう一つ重要なのは、安定した国境紛争は儀式化するということである。インドとパキスタンの間でも、衛兵交代が観光地化しているが、ここでも「ウイスキー戦争」などと言われるように紛争をしているふりをする儀式が出来ることで安定した状態を作っていた。
2022年6月17日 9:10

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

地味だけれども、意義のあるニュースと言える。領有権争い・国境画定紛争は昔から、戦争の火種になることが少なくなかった。平和的に争い、平和的に妥協が成り立ったことは、ロシアのクリミア侵攻やウクライナ東部への侵攻といった軍事行動の非情さが注目されているだけに、ほっこりさせられる。ただし、カナダとデンマークはともにNATO加盟国であること(軍事的に同盟国である)、係争地となった島は無人島であり、資源が豊富といった経済利得と結びついていないことなど、平和的な解決が可能になる前提条件のようなものがある事例ということには留意したい。』