[FT]イランを目指すロシア企業 制裁下のビジネスに関心

[FT]イランを目指すロシア企業 制裁下のビジネスに関心
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB164WA0W2A610C2000000/

 ※ 「価値(≒利益)」は、「差異」から生じる…。

 ※ 「商行為」とは、「ある地域」と「ある地域」で、「価格が違うもの」を見つけだして、「安い地域で仕入れて」、「高い地域で売る」ことで、この間の「価格差」を取得するというのが、原型だ…。

 ※ 中国の古代の王朝である、「商王朝(「殷」ともいう)」に、そういうことをやった人が多くいて、「商人」と呼ばれた…。

 ※ だから、「規制」「制裁」の隣りには、「巨額の価値(利益)」が潜んでいる…。
 ※ アメリカ禁酒法時代には、シカゴで、アル・カポネが、酒の密造・販売やって、大儲けした…。

 ※ 今般のロシア制裁の隣りにも、「巨額の利益」が潜んでいることだろう…。

 ※ 今日は、こんなところで…。

『2月にロシアがウクライナに侵攻して以降、イランでツアーガイドをするアリさんのビジネスは好調だ。ただ、以前の顧客はペルシャの芸術や食べ物、文化に興味を持つロシア人観光客だったが、今ではそれがビジネスマンに変わった。
イランを訪れるロシア人ビジネスマンが増えている(テヘランの市場)=ロイター

欧米諸国が相次いでロシア企業などに制裁を科すなか、ロシア人は「米国の制裁下でイランの人々がどうやって暮らしているのかに興味津々だ」とアリさんは話した。

自ら事業を起こしたアリさんはフルネームを明かさないことを条件に取材に応じた。アリさんがテヘランで案内したロシア人は5月だけで160人だったが、そのほとんどがビジネスマンだったという。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)前は観光客が中心で、通常は40人程度だった。

アリさんは「イランを訪れるロシア人ビジネスマンは以前は上から目線でイラン企業に商品を売り込んでいたが、今ではイランの商品を買おうとしている。目を見張るほどの変化だ」と話す。

アリさんはロシア人ビジネスマンをテヘラン周辺の企業に案内し、テヘランの企業関係者を紹介している。欧米の消費財企業がロシアへの商品供給を縮小するなか、アリさんの顧客はイランでアップルのスマートフォンが広く流通しているのを目の当たりにして驚き、興味を示すという。

欧米の消費財も入手可能

2015年にまとまったイラン核合意からトランプ前米大統領が離脱して以降、イランは米国の厳しい制裁を受けて世界の金融システムから実質的に切り離された状態で4年間耐えてきた。だが、イランで流通している欧米の消費者向け製品はアップルのスマホだけではない。広く出回っているのは中国ブランドだが、フィリップスやボッシュといった欧米の消費財大手の製品も購入可能だ。そうした商品がどうやってイランに入ってくるのかは定かではない。密輸の場合もあれば、個人が海外から持ち込む場合もあるだろう。だが、業者によると、トルコやイラク北部で荷を積み替えて米国の制裁を回避するのが主要ルートだという。

「ロシアは欧米の部品や製品を買える世界の闇市場とのつながりで、イランに大きく出遅れている」とアリさんは言う。

ウクライナでの戦争でイランが恩恵を受けているのは、こうして非公式に助言できることだけではない。中国への原油輸出と近隣国への石油以外の製品の輸出で成り立つイラン経済は、石油価格の急騰で潤うようになった。

イラン経済は制裁で大打撃を受け、物価は急騰し貧困が広がっている。一方で、イラン企業が制裁をかいくぐって輸出入を続けていることが制裁の影響を軽減している。

イランが核合意の再建でバイデン米政権と合意に達すれば制裁は解除されるだろうが、核合意再建に向けた外交努力は行き詰まっている。イラン政府が先週、国際原子力機関(IAEA)の監視カメラ27台を核施設から撤去すると発表したことも交渉の障害になっている。核合意の署名国であるロシアは3月、欧州連合(EU)の仲介によりウィーンで開いた交渉で米国の対ロ制裁がロシアとイランとの協力関係に影響を及ぼさないと保証するよう求め、交渉は暗礁に乗り上げた。

イランでは、ウクライナでの開戦直後は少なくとも、ウィーンでの再建交渉の行き詰まりから欧米の注意をそらす効果があったとの見方が依然として存在する。

イランの強硬派に近い政府関係者は「ウクライナ戦争はイランにとって天恵だった」と言う。「そして今、欧米諸国は高インフレと食品価格の上昇という国内問題にどう対応すべきかで頭がいっぱいだ」。さらにこの関係者は、ロシアと中国は以前は核合意復帰で欧米の大国と合意するようイランに求めていたが、今では他に懸念することがあると指摘する。「(ロシアの)ラブロフ外相から何も聞いていないのか。ロシアはもうイランに核合意復帰を求めていない」

ロシア副首相が協力拡大を明言

イラン当局は、北方に位置する近隣国のロシアは、しいて言えばイランの希望だと認めている。イランのファテミアミン鉱工業貿易相はロシアのウクライナへの侵攻開始直後に記者団に対し「イラン経済に対する悪影響より好影響のほうが格段に大きい」と述べた。

ロシアのインタファクス通信によると、同国のノバク副首相は5月にテヘランでの企業関係者との会合で「我々は貿易、経済、物流、投資、金融(および)銀行業務での協力を拡大する方向にある」と語った。さらに、2国間の貿易が22年1~3月に10%以上拡大したと述べた。

イランの関税当局によると、2国間の貿易額は3月末までの1年間で22億ドル(約3000億円)に上った。中国やロシアとの関係拡大を志向するイランのライシ大統領は、ウクライナ侵攻前でさえ2国間の貿易規模が「満足すべき水準ではない」との点でロシアのプーチン大統領と意見が一致していると述べていた。

両国はリアルとルーブルというそれぞれの通貨を貿易決済に使用することでも合意しているとイランのオジ石油相は言う。この点からは両国がドル調達に苦戦していることがうかがえる。

イランの改革派アナリストは両国の経済がエネルギー輸出に依存する点で似すぎていて、得られる恩恵は多くないとみる。イラン経済は規模でロシアよりはるかに小さい。世界銀行の20年のデータによると、ロシアの国内総生産(GDP)はイランの7倍以上だ。

イランのエテマド紙記者でエネルギー事情に詳しいアリ・シャムス・アルダカニ氏は「ロシアが戦略的パートナーになれると考えているのなら、歴史書を読んでロシアには行動理念がないことを認識すべきだ」と書いた。さらに「当局が今何も策を講じなければ、ロシアはアジアに残っているイランの石油輸出先を奪い、アジアの石油市場で主要プレーヤーになるだろう」と指摘している。

イラン・ロシア商工会議所の会員であるジャリル・ジャラリファー氏は通信社ILNAに対し、ウクライナ侵攻以降、ロシア人投資家はイランには来ていないと述べた。「彼らは我々の頭上を通り越してアラブ首長国連邦(UAE)に飛んで」投資していると語り、侵攻開始後、ロシア人が大挙してドバイを訪れていることを指摘した。

こうした反対意見はあるものの、ロシアのウクライナ侵攻がイラン企業に好影響を与えているとする点でアナリストの意見はツアーガイドのアリさんと一致している。

ロシア人ビジネスマンの目当ては通常、重機部品や建材の調達だとアリさんは言う。今はゆっくりとしか進んでいないが、いずれ2国間の協力が拡大するとアリさんは考えている。

「ロシアの需要はじわじわと(イランの)市場に向かっている。対ロ制裁が続く場合、イランとロシアの企業が効率よく協力できるようになるまでに1~2年はかかるだろう」とアリさんは語った。

By Najmeh Bozorgmehr

(2022年6月15日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.』

[FT]中国、鉄鉱石購入を一括管理 オーストラリアに対抗

[FT]中国、鉄鉱石購入を一括管理 オーストラリアに対抗
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB172NH0X10C22A6000000/

『中国は2022年末までに鉄鉱石の輸入を中央で一括管理する新たな体制を構築しようとしている。習近平(シー・ジンピン)政権が価格交渉力の強化を目指す取り組みの一環だ。
中国はオーストラリア産鉄鉱石への依存度が高い=ロイター

事情に詳しい複数の関係者によると、新体制への移行は中国鋼鉄工業協会や政府機関が主導し、中国宝武鋼鉄集団、中国五鉱集団、中国アルミ集団といった国有資源・鉄鋼大手が参加する。

中国は世界最大の鉄鉱石消費国で、年間10億トンの鉄鋼を生産している。全世界で産出される鉄鉱石の約7割が中国に輸入され、その大半がオーストラリア産だ。中国が価格交渉力を強めようとする動きは、鉄鉱石の対中輸出でトップに立つ豪州を警戒させる公算が大きい。

中国政府は、新たな組織に複数の企業を代表させることで、大口購入量を増やし、より割安に調達できるようにする考えだ。

同じ計画の下で、国内での鉄鉱石増産や海外の鉱山に対する投資拡大も目指す。
豪州勢には中国の動きが懸念呼ぶ恐れ

複数の政府関係者や政策アドバイザーがフィナンシャル・タイムズ(FT)に対して語ったところによると、習政権は近年の鉄鉱石価格の大幅な変動にいら立ちを募らせているという。鉄鉱石業界で独占的な立場を築いてきたフォーテスキュー・メタルズ・グループやBHPグループといった豪州勢は、中国の新たな取り組みに懸念を抱く可能性が高い。

豪政府が新型コロナウイルスの発生源を巡って国際調査団の中国派遣を呼び掛けた際、中国政府は豪州への報復を試み、中国企業が石炭からカキ、ワインまでさまざまな豪州産の輸入品をボイコットした。ところが鉄鋼生産に欠かせない原料の鉄鉱石は、他国からの仕入れで全量をまかなうことができなかった。

匿名を条件に取材に応じた中国のある政策アドバイザーは「(世界首位の)鉄鉱石供給国は、世界最大の市場を相手にしないわけにはいかない」と話す。その上で「われわれへの値引きに応じざるを得ないはずだ」と続けた。

中国は理論上、ヴァーレをはじめとするブラジルの資源大手からの鉄鉱石輸入を増やせば、豪州への依存を減らせる。

中国はまた、ギニアで年間最大2億トンもの生産が見込まれるシマンドウ鉄鉱山の開発にも出資している。ただ専門家によれば、同地で実際に採掘を始めるのに、少なくとも150億ドル(約2兆円)を投じての関連インフラ整備が必要となる。国内を結ぶ全長650キロの鉄道もその1つで、169本の橋を架け、4つのトンネルをつくらなければならず、建設には何年もかかる。ギニア政府との正式な開発契約は近く結ばれる見通しだ。
価格変動が激しい鉄鉱石

中国の企業幹部や政府関係者は、米調査会社S&Pグローバル・プラッツが算出する鉄鉱石の国際価格指数の変動幅が大きいことに不満を抱いている。同指数は1年前に1トン230ドル超で過去最高を更新した後、21年後半には半値以下になり、やがて3分の2ほど値を戻した。現在は134ドル前後を付けている。

鉄鉱石価格が20年から21年にかけて2倍になるといった原料価格の急騰を受け、中国鉄鋼業界の利益率はここ数年間で1桁台前半へと落ち込んだ。

中国東部の江蘇省を拠点とする国有鉄鋼メーカー、南京鋼鉄の関係者は「鉄鉱石価格の変動があまりに急で、生産の計画が難しくなっている」とこぼす。

だが専門家の間では、中国各地に数多く散在する中小規模の製鉄所まで中央政府が統制しきれるかどうか、疑問視する見方もある。

英証券会社リベラムのアナリスト、トム・プライス氏は「仮に価格で合意できたとしても、比較的規模の小さい製鉄所や商社が鉄鉱石生産者と勝手に取引するかもしれない」と指摘し、「そうなれば全体が崩壊する」との見方を示した。
製鉄所がどこまで従うかは不透明

中国政府は鉄鉱石の調達を一括するため、国内の各製鉄所に必要な量の見通しを報告させたうえで合計を算出し、海外の主要サプライヤーとの交渉に役立てる予定だ。

しかし中国の市場環境は変わりやすく、需要予測が当たらない場合も珍しくない。世界2位の経済規模を誇る中国だが、ゼロコロナ政策による上海などの経済中心地のロックダウン(都市封鎖)が痛手となり、4月以降は景況感が急速に悪化している。

こうした状況下では、たとえ一定量の購入を約束する契約を破ってでも、鉄鉱石の輸入縮小を余儀なくされる製鉄所が多くなる可能性がある。

中国北部の河北省で小規模な製鉄所を運営する徳龍鋼鉄の関係者は「われわれにとって最善の利益になることをするまでだ」と述べた。

By Sun Yu and Neil Hume

(2022年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

ドンバス

ドンバス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%B3%E3%83%90%E3%82%B9

『ドンバス(ウクライナ語: Донба́с、ロシア語: Донба́сс)は、ウクライナの東南部に位置する地方である。

「ドネツ盆地」という地名は盆地を貫流するドネツ川に由来し、それを表す現地語 (ウクライナ語: Донецький басейн〔ドネツィキー・バセイン〕またはロシア語: Донецкий бассейн) から生まれた混成語が「ドンバス」である[注 1][1]。ドンバス地域の範囲の定義とされる諸説がありながら、公式に法で定められた事は一度もない。今日用いられる最も一般的な定義はウクライナのドネツィク州とルハーンシク州を指すものである。ドンバス地域はウクライナ国土面積の10%を占めている。

他方、19世紀後半より続く採炭[2]においてドンバス炭田をさす場合、上記2州の複数の地域を含めない代わりに近隣のドニプロペトロウシク州と南ロシアの一部を範囲に含める[3]。

同名のユーロリージョンはウクライナのドネツィク、ルハーンシク州とロシアのロストフ州から構成される[4]。ドンバスはザポロズカ・シーチ(ウクライナ語版)(コサックの自治政体)とドン・コサック・ホストとの歴史的な境界線を成してきた[2]。重工業化した19世紀後半以降、ドンバスは重要な採炭地域であり続けた。

2014年3月ウクライナ革命(親露派大統領の追放)に引き続いてドンバスの大きな領域が(親露派による)反乱によって支配されるに至った。この反乱は後に「ドネツク人民共和国」および「ルガンスク人民共和国」と連携した親露派分離主義者と革命後のウクライナ政府との間の戦争へと発展した。戦争が進行するまでドンバスは首都キエフを除けばウクライナの地域の中で最も人口が密集していた。

内戦前、ドネツィク市がドンバスの非公式な首都であると考えられていた。人口10万人以上の大都市にはルハーンシク、 マリウポリ、 マキイフカ、ホルリウカ、クラマトルスク、 スラヴャンスク、アルチェヴスク(英語版)、シェヴェロドネツクとリシチャンシクが含まれていた。

現在ウクライナ側のドネツィク州の暫定行政機関はクラマトルスクに、ルハーンシク州のそれはシェヴェロドネツクに置かれている。分離主義者側ではドネツク人民共和国ではドネツィク、マキイフカ、ホルリウカが、ルガンスク人民共和国ではルハーンシク、 アルチェヴスクが最大級の都市である。 』

『歴史

ロシア帝国時代

石炭を拾い集める貧民 ニコライ・カサトキン(ロシア語版、英語版)による: ドンバス、1894年。

現在ドンバスとして知られる地域は17世紀後半、ドン・コサックが定住するまで無人の土地が広がっていた[5]。最初の町はSolanoyeと呼ばれ (現在のソレダル)、新たに発見された岩塩鉱脈の開発を目指して1676年に建設された。一帯はドンバスと呼ばれるずっと以前からウクライナ語で「荒野(英語版)」と通称され、広くウクライナ人のヘーチマン国家とトルコ人のクリミア・ハン国の支配下に置かれた期間を経て[6]、18世紀の半ばにロシア帝国が征服・併合すると新ロシアと名付けた。産業革命がヨーロッパ中に定着するに伴い、19世紀中盤から後半にかけて地域で資源開発が相次ぐ。すでに1721年に発見されていた石炭の埋蔵量の膨大さが知られるようになった[7]。

「ドンバス」という地名は石炭埋蔵量最大のドネツ川沿いの地域を表す用語と見なされ、ドネツ炭田(ウクライナ語: Донецький вугільний басейн、ロシア語: Донецкий каменноугольный бассейн)の派生語扱いし始めるのはこの頃からである[8]。石炭産業はその隆盛を大きくロシア人住民に担わせたこともあり、ロシア人人口はエカテリノスラフ県のバフムート、Slovianserbskおよびマリウポリ諸郡でほかの地域よりも顕著に増加した。

今日、地域の要となったドネツィクは1869年にイギリスの実業家ジョン・ヒューズが投資する以前、ウクライナ・コサックに連なるザポリージャ・コサック(英語版)が暮らす町でオレクサンドリフカと呼ばれた。ヒューズは製鉄所を建設、複数の炭鉱を開発し、その名前をとって町はユゾフカ(ロシア語: Юзовка)と改称された。炭鉱景気に沸くほかの町も発展し、ロシア帝国のグベールニヤ(県)から出稼ぎ先を求めて大勢の小作農が集まった[1]。1897年のロシア帝国の国勢調査(英語版)によれば、地域人口の52.4%がウクライナ人であり、28.7%がロシア人だった[9]。ドンバス地域にはギリシア人(英語版)、ドイツ人、ユダヤ人(英語版)あるいはタタール人も住み、とりわけマリウポリ地区(人口の36.7%)では重要な存在だった[10]。

それにもかかわらず、産業労働力の多くを担い続けたのはロシア人である。ウクライナ人は周辺(農村)地域に住み、都市部では、地域の重工業に職を求めてやってきたロシア人しか居住しない状況がしばしば見られるようになる[11]。出稼ぎに来たウクライナ人は都市に流入すると、たちまちロシア語話者の労働者階級に吸収されてしまった[12]。

ソビエト時代

「ドンバスはロシアの心臓部」と謳うポスター(1921年に登場したソビエトのプロパガンダポスター)

1917年から1922年のロシア内戦の結果、ウクライナ・ソビエト社会主義共和国が誕生するとウクライナ人が居住した他の地域と共にドンバスは統合された。一帯に暮らしたコサックのうちウクライナ語話者は、1919年から1921年にかけて脱コサック化(英語版)を強制された[13]。

ドンバスに暮らしたウクライナ人はホロドモール飢饉(1932年–1933年)のほか、ヨシフ・スターリンのロシア化(英語版)政策に大きく影響される。ウクライナ人のほとんどが農村の小地主農民 (ソビエト体制の呼称はクラーク) に過ぎず、食糧難の深刻な被害を受けてしまう[14][15]。在英ウクライナ人協会によれば、飢饉により現在のルハーンシク州の人口は25%まで減少し、現在のドネツィク州では15-20%にまで減少した[16] 。ある推定によればウクライナ社会主義共和国内の飢饉によって発生した死者のうちウクライナ人が81.3%であったのに対し、ロシア人の死者はわず4.5%にとどまるという[17]。

ドンバスにおける第二次世界大戦の戦災は甚大である。戦前のドンバスは貧困と食料不足に苦しめられた。戦争への備えにより、結果として工場労働者の出勤日が増えノルマが吊り上がり、達成できない者は逮捕された[18]。ナチス・ドイツの総統アドルフ・ヒトラーはドンバスの資源がバルバロッサ作戦にとって決定的に重要と見ていた。このようにして1941年から1942年に至るナチ占領下でドンバスは苦しむことになる[19]。ドイツの工場で働かせるために強制的に「輸出」された工場労働者は数千人にも及ぶ。旧称スターリノ州、現在のドネツィク州では占領期に27万9千人の市民が殺された。旧称ヴォロシーロフ州、現ルハーンシク州で殺された住民は4万5649人である[20]。1943年の赤軍による攻勢により、結果としてソビエトのドンバス支配が回復した。戦争の代償は高く、破壊され人が住まない地域が残された。

第二次世界大戦後のドンバスの再建期間中、多数のロシア人労働者がやって来て人口比率はさらに変動する。ロシア人居住者は1926年の63万9千人[21]から、1959年にはほぼ4倍の255万人に伸びた。ロシア化はソビエトの教育改革(1958-1959年)によっても推し進められ、ドンバスにおける学校教育からウクライナ語をほぼ消し去るものであった[22][23]。1989年ソ連国勢調査では、ドンバスの人口に占めるロシア人の比率を45%と報告した[24]。

独立ウクライナ時代

ルハーンシクにあるドン・コサックのモニュメント。銘に「栄光と自由の息子たちへ」とある。

ウクライナ独立に関する1991年国民投票(英語版)では、有権者の内、ドネツィク州で83.9%(投票率76.7%)、ルハーンシク州で83.6%(投票率80.7%)がソビエト連邦からの独立を支持した[25]。しかしながら独立は結果的にドンバスに深刻な経済的悪化をもたらした。1993年には産業生産は崩壊し、平均賃金は1990年比80%にまで低下した。キーイウ(キエフ)の新中央政府が冒した数多くの管理間違いと怠惰のせいで、ドンバスは危機に陥った

ドンバスの採炭業者は1993年に国内紛争(歴史家ルイス・ジーゲルバウムが言うところの「ドンバス地域と他の地域との争い」)を巻き起こしながらストライキを行った。あるストライキ指導者が言ったように、ドンバスの人たちは地域や企業や諸都市に権限移譲して欲しいから独立に賛成したのであってただモスクワからキーイウに移っただけの高度に中央集権化された政府を望んだわけではない[25]。このストライキはドネツィク・ルハーンシク両州の様々な憲法上の諸問題に関する意見聴取の住民投票(独立ウクライナの最初の議会選挙(英語版)と同時実施)が行われた1994年まで続いた[26]。これらの諸問題にはロシア語を ウクライナの公用語として採用する是非、あるいはドネツィク・ルハーンシク両州の行政言語をでロシア語とする是非、ウクライナの連邦化かウクライナと独立国家共同体の密接な連携か、といった諸点が含まれる[27]。投票者の90%近くがこれらの提案に賛成した[28] 。しかし、いずれも採択されなかった。ウクライナは単一国家に留まり、ウクライナ語は唯一の公用語として維持され、ドンバスにはいかなる自治権も与えられなかった[24]。しかし、ドンバスのスト参加者達は地域の経済危機に対する緩和策を考慮されるなど、キーイウから多くの経済的譲歩を得た。小規模なストライキは90年代を通じて続いたが、自治に対する要求は終息していった[25]。ドンバスの重工業に対するいくつかの補助金は廃止され、世界銀行による自由化改革を後押しするために多くの炭鉱がウクライナ政府によって閉鎖された[25]。

1994年ドンバスと東ウクライナの他の地域からの支持で当選したレオニード・クチマ ウクライナ大統領は1999年に再選された[25]。クチマは地域内の政治的支援を得るために、開発資金を用いてドンバスに経済的援助を与えた[25]。2000年代初めにドンバス内の権力はオリガークス(英語版)(ウクライナ語: олігархи、オリハルフィー)と呼ばれる一部の政治的エリートに集中した。国有産業の私有化は腐敗の蔓延を招いた。郷土史家の黒宮広昭[29]は地域の経済力、政治力を支配する人々のグループであるこのエリートを「ドンバス・クラン (Donbass clan)」として描写した[25]。「クラン」の著名なメンバーにはヴィクトル・ヤヌコーヴィチとリナット・アクメトフ(英語版)が含まれる。オリガークスの形成は腐敗と結びつき、 ウクライナ内でドンバスが最も非民主的かつ最も邪悪な地域との認識を導いた。2000年代、ウクライナの他の地域から見て、ドンバスは「チンピラ文化」を持ち、「ソビエトの糞貯め」であり、後進的である、と認識されていた[25]。2005年のNarodne slovo紙が伝えるように、コメンテーターのViktor Tkachenkoはドンバスを「第五列」の巣窟と呼び、その地域でウクライナ語を話す事は「健康と生命にとって安全ではない」と発言した[30]。また、親ロシア派分離主義の策源地であるように描かれた。ドンバスはウクライナの他の地域と比べて共産主義者の名前を採って名付けられた都市や村の数が顕著に多い[31]。ところが、これらの描写にも拘らず、1990年代から2000年代に行われた調査ではドンバスによるウクライナの他地域への支援は強力であり、むしろ分離主義者を冷淡に取扱った事が示された[32]。

ドンバスにおける内戦 (2014年から2015年時点)

詳細は「ウクライナ紛争 (2014年-)」および「ドンバス戦争」を参照
ドンバスに展開したウクライナ軍、2015年3月

2014年2月のウクライナ革命とユーロマイダン運動の余波の一部として、3月初頭からドンバスで親ロシア・反政府グループのデモが起きた。これらのデモ[注 2]は2014年4月、分離主義武装勢力(ノヴォロシア人民共和国連邦)とウクライナ政府の戦争に悪化した[33][34]。

内戦の最中、分離独立派の「共和国」は2014年5月11日にドネツィクとルハーンシク両州の地位に関する住民投票を実施した。この住民投票はウクライナ中央政府を排除した自治を望ましいとする結果に回帰した(一方で住民投票はウクライナからは非合法そして国際社会からは非民主的であると見なされている)。幾度も停戦が試みられたが、2014年を通して、そして2015年になっても戦闘は続いた[35][36]。また、この戦争においてウクライナと西側諸国はロシアが分離独立派に物資支援と軍事支援の双方を供与したと主張しているが、ロシアは否定している。分離独立派は2014年8月まで大部分がロシア市民により先導されていた[35][36]。

人口統計と政治

ウクライナ地図:ネイティブなロシア語話者が多数を占める地域を赤で示す(2001年国勢調査)

現在、ドンバスの大部分をロシア語使用地域(英語版)が占める。ドンバスにロシア人少数派の要人が暮らすものの、人口の多数はウクライナ人である。2013年-2014年のウクライナ危機以前、地域の政治は「地域党」によって支配されていた[注 3]。前大統領ヴィクトル・ヤヌコーヴィチをはじめ、党の主要人物はドンバス出身だった。
ドネツィク州のロシア化:上のグラフは長期に見た話者の比率、下のグラフは住民の国籍の変遷を示す[注 4]。 ロシア語/ロシア人、 ウクライナ語/ウクライナ人、 その他。

ロシア起源の住民たちは、主に大都市の中心部に集中していた。大都市とりわけドネツィク、ルハーンシク両州においては母語としてロシア語が優勢である。ロシア語を共通語として話すウクライナ人は多い。

産業化の過程でこの地域に新たな都市がつぎつぎと開かれると、多くのロシア人(特にクルスク州出身)が流入し、東ウクライナの諸都市でロシア語が重要になる。

農村地帯へのロシア語の拡大は研究のテーマとして今も論争が続くが、これら2州では一般的に、それを裏付ける調査結果は出ていない。

ロシア語が母語だと申告する人々にはウクライナ人と他国人がいるため、ロシア語話者は国籍上のロシア人の人口を上回り、ドネツィク州で74.9%、ルハーンシク州で68.8%を占めた[37]。2001年時点で、少数派ロシア人の割合はドネツィク38.2%、ルハーンシク39%だった[38]。

ドンバスには比較的大きなムスリムのコミュニティーがあり、いくつかの地域では人口の20%に達する[38]。

言語学者George Shevelovによると、ソビエト連邦政府はウクライナ社会主義共和国内のすべての学校に、ウクライナ語で授業を行うように命じたというが(ウクライナ化政策の一部として)[いつ?][39]、1920年代初頭、ウクライナ語を教える中学校の割合はドンバスのウクライナ人の割合を下回った[40]。ウクライナで行われた地域的帰属意識の調査によればドンバス住民のほぼ40%が「ソビエト帰属」を意識すると回答している[41]。

セーデルトーン大学(英語版)のRoman Horbykは「不完全かつ廃れた制度」により、20世紀に栄えた鉱山や工場がウクライナ人とロシア人の居住区の境界にあったため、ドンバス住民すなわち周辺から流入したはずの出稼ぎ農民は地域社会にとけ込むことができず、現代的郊外としての性格(全国的に見られる新しいアイデンティティ)が顕著に強まる妨げになったと主張する[40]。

経済

詳細は「ウクライナの石炭(英語版)」を参照

ドンバスの経済は重工業と金属工業、とりわけ採炭と冶金が優勢だった。1970年代以降、石炭の年間採掘量は減少したものの重要な産出地として生き延びる。採炭は地下深くに達し、褐炭は地表下およそ600メートル、より商品価値の高い無煙炭、瀝青炭の採炭地は地下およそ1800メートルで行われる[7]。2014年4月のドンバス内戦前、ドネツィクとルハーンシク両州合わせてウクライナの石炭輸出高の30%を産出していた[42]。石炭だけでなく、この地域は鉄や鋼の生産拠点ともなっている。

またこの地域は金や銀の採掘、原子炉を建造するのに用いられる水銀を産出することでも知られる。結果、ドンバスはウクライナ全体の輸出の30%を占めており、GDPの20%を占めている。

石炭産業における労働安全

ドンバスの採炭地点の深度化、メタンや炭塵の爆発事故の頻発あるいは岩盤崩落 (rock burst) の危険、さらに時代遅れのインフラにより、世界で最も危険な部類に入る[43]。2000年代後半には非合法でさらに危険な炭鉱すら、全域に蔓延していた[2][44]。

環境問題

ドネツィクのカルミーウス川沿いのボタ山

ドンバスへの採炭と製錬の集中は地域の環境に深刻なダメージをもたらし、次の問題は広く知られている。

水供給の破綻と鉱水 (mine water) に起因する洪水
コークス工場と製鉄所周辺の目に見える大気汚染
大気汚染・水の汚濁とボタ山から発生する泥流の脅威

加えて、ドンバスの化学廃棄物(英語版)処理施設の管理不全から、環境汚染の脅威が続く。

イェネキイェヴェではソビエト時代に1979プロジェクト(ロシア語版)と銘打った実験をしており、極めて特異な核採掘(英語版)の悪影響が懸念される。

世論

2015年11月にドネツィク、ルハーンシク州(親ロシア派占拠地域を除く)のRating Group Ukraineによって行われた調査では住民の75%がドンバス全体がウクライナに留まることを望んでいる事が判明した。7%はロシアへの併合を、1%はドンバスが独立国になる事を、3%は親ロシア派テロリストが出て行き、ドンバスはウクライナに留まる事を選択した。

ロシア語を話す住民に圧力または脅威下にあるかを尋ねた調査では、82%は「いいえ」、11%は「はい」だった。ウクライナのロシア語話者を「保護」するためにロシアが派兵する事を支持するかを尋ねた調査では、71%が「いいえ」2%は「ある程度は」、7%は「その他」だった。

50%はウクライナは単一国家を維持する事を望み、14%は連邦制国家を、13%はクリミアを除いた単一国家を、7%は複数の国家に分割する事を望んでいた。

いずれかを選択するよう尋ねたところ、33%はユーラシア関税同盟を21%はEUを選好した。』

[FT]ブルガリア政権が崩壊の危機、親ロシア派台頭の兆し

[FT]ブルガリア政権が崩壊の危機、親ロシア派台頭の兆し
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1727X0X10C22A6000000/

 ※ 各国、目まぐるしく、「その立ち位置」を定める必要に迫られているな…。

『親欧州連合(EU)の立場をとるブルガリアのキリル・ペトコフ首相はロシアのウクライナ侵攻に当初から反対を表明し、「わが国は屈しない。明らかに賛同できない事態を目の当たりにして黙っているわけにはいかない」と表明してきた。

ペトコフ氏は昨年12月、親EU路線を掲げて首相に就任したが、親ロシア派政党に不信任案を突き付けられている=ロイター

ペトコフ首相がステファン・ヤネフ国防相を罷免したのも、ヤネフ氏がウクライナ侵攻を「戦争」ではなく「特別軍事作戦」と発言し、ロシア大統領府の公式見解と同じ表現を繰り返したからだ。

ところが先週、首相率いる連立政権内でEU拡大支持を巡る対立が激化し、一部政党が離脱して与党が過半数割れとなり、ペトコフ氏の方が政権を追われかねない風向きになっている。罷免されたヤネフ氏は親ロシア新党の党首としてカムバックを果たそうとしている。

ブルガリアはEU内では伝統的にロシアと最も親しい国だが、連立政権が崩壊した場合、この約1年間で4回目の議会選挙が行われる見通しだ。そうなればヤネフ氏が立ち上げた新党を含むロシア寄りの右派政党が大きく勢力を伸ばし、新たな連立に向けたキャスチングボートを握る可能性が出てくる。

「現政権は存続できないだろう」。連立政権に参加するリベラル派の小政党「ダ・ブルガリア」のフリスト・イワノフ党首はこう話した。だが代わりに単独で政権を取れる勢力も存在せず、「選挙をやって右派が増えるとしても、混乱は解消しないだろう」と指摘した。
ポピュリスト政党の連立離脱で政局混迷

トリフォノフ氏は自ら率いる政党が重要議題で蚊帳の外に置かれたとして連立政権を離脱した=ロイター

同国の政局混迷はフォークロック歌手からポピュリスト(大衆迎合主義)の政治家に転じたスラビ・トリフォノフ氏が先週、自ら率いる政党「ITN」を連立政権から離脱させたのがきっかけだ。ペトコフ首相が北マケドニア、アルバニアのEU加盟交渉開始を妨げないとの方針を示していたのにトリフォノフ氏が抗議して離脱を決めた。

これを受けて親欧米派のペトコフ氏が退陣すれば政情不安はさらに深まり、EU拡大阻止を狙うロシア政府の思い通りとなる。

駐ロシア・ブルガリア大使を務めたイリアン・バシレフ氏は、ITNの連立離脱はロシアの利益にかない、ブルガリアが北大西洋条約機構(NATO)とEUに加盟して20年近くたった今でもロシアが同国への影響力を誇示している証しにもなると語った。

バシレフ氏はさらに「ロシアが今回の危機を引き起こした」と何の根拠も示さずに主張した。「彼らの最大の目標はブルガリア政府の動きを封じ、統治能力をそぐことだ」

ITNの副党首と広報担当者はコメント要請に応じなかった。ロシアはブルガリアの政局混乱への関与を一切否定し、ペスコフ大統領報道官は「我々は全く無関係だ」と述べた。

親欧米路線と汚職撲滅掲げたペトコフ首相

米ハーバード大学出身のペトコフ首相は昨年12月、EU最貧国であるブルガリアの首相に就任した。政治危機が長期化し、昨年だけで3回目となった同11月の議会選挙では親欧米路線と汚職撲滅を公約に掲げた。

ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、ロシア通貨ルーブルによる天然ガス輸入代金の支払いを拒否し、ロシア国営ガスプロムとの年間20億ドルに上る長期輸入契約を年末の期限切れ後に更新しないと通告した。一方、ロシアは4月にブルガリアへのガス供給を停止した。

ブルガリア政府は約120人のロシア人外交官のうち12人を国外追放し、先週はラブロフ外相がセルビアを訪問する際のロシア機の領空通過を拒否した。

ウクライナに対しては重要な軍事物資を含め支援した。政府は武器供与を認めていないものの、経済省が公表した統計によると、弾薬の生産及び輸出が前年比3倍に増えている。

同国国防省の元幹部は「欧州がわが国の旧式まみれの兵器技術に大きな関心を持ち、急きょ大量に仕入れようと決めたわけではない」と話した。「行き先は間違いなくウクライナだ」

専門家や政府関係者によると、兵器・弾薬の輸出には政府の承認が必要なので、輸出を阻止したければ現在の少数派内閣の方が望ましいという。

北マケドニア問題が争点に

国防相を罷免されたヤネフ氏は親ロシア派政党を立ち上げ、ぺとコフ首相の追い落としを狙う=ロイター

今回の政治危機の発端となったのは、ペトコフ氏が12月、北マケドニア政府からの譲歩と引き換えにEU加盟交渉に対するブルガリアの拒否権発動を取り下げる合意をまとめようとしたことだった。

多くのブルガリア人は北マケドニアのアイデンティティーや歴教科書の記述内容に異議を唱えている。首都ソフィアのコンサルティング会社アルファ・リサーチのマネジングパートナー、ジェノベバ・ペトロバ氏によると、世論調査では北マケドニアのEU加盟を支持するブルガリア人は半数以下と、2017年時点の3分の2から減少している。

ペトコフ首相は北マケドニア政府に対し、憲法や文化遺産、歴史教科書の書き換えなどを通じてブルガリアのイメージを改善するよう譲歩を求めると訴えた。

だが、トリフォノフ氏は自党が協議の蚊帳の外に置かれたと不満を訴え、ペトコフ氏の発言を「国家的な裏切り」だと批判した。

選挙戦では北マケドニア問題が大きな争点になりそうだ。そうなれば国防相を罷免されたヤネフ氏が立ち上げた国家主義の親ロシア派政党「ブルガリア台頭」と別の極右政党「リバイバル」が有利になる。ペトロバ氏によると、両党とも2ケタの支持を勝ち取る可能性がある。

この2党だけで過半数を獲得する可能性は低いものの、「急進右派の票が選挙結果を左右しそうだ」と同氏は指摘する。極右政党を破るためには、中道右派の「欧州発展のためのブルガリア市民(GERB)」をはじめ極右以外の政治勢力を束ねる必要がある。ただし、GERBを率いるボリソフ前首相は汚職スキャンダルにまみれた計10年間の在任期間をへて、昨年の選挙で敗北した人物だ。

職業軍人で一時暫定首相も務めたヤネフ氏は地元ラジオで、ウクライナ侵攻を「特別軍事作戦」と表現したことについて後悔していないと語った。「プーチン(大統領)の言葉を引用しただけで、彼の言葉には外交的解決も選択肢だという意味が含まれていた」

EUはペトコフ氏に期待

EUはペトコフ氏が権力の座にとどまって北マケドニアの加盟交渉を軌道に乗せ、バルカン諸国におけるEUの存在回復に一役買ってくれることを期待している。

ドイツのショルツ首相は先週ソフィアを訪問した際、ロシアのウクライナ侵攻を受けてEUの加盟国拡大に「新たな意欲」を感じると述べた。

同氏はペトコフ氏と並んで立ち、「前進する好機だ。今後も緊密な意見交換を続ける」と語った。

ドイツのベーアボック外相も3月、「わが国は欧州の中心であるこの地域を決してモスクワに明け渡さない」と話している。

By Marton Dunai

(2022年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2022. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation. 』

[FT]制裁下のロシア経済フォーラム、士気高揚の場に

[FT]制裁下のロシア経済フォーラム、士気高揚の場に
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB1712F0X10C22A6000000/

『ロシアのサンクトペテルブルクで毎年開催されている「国際経済フォーラム」は、国内企業をアピールし、世界の投資家をロシアに呼び込むためにプーチン大統領が企画した会議だ。だが、欧米諸国の制裁を受けてロシアが経済危機に陥るなか、今年のフォーラムは士気高揚を図る場と化している。
16日、国際経済フォーラムでの議論を聞く参加者=ロイター

「現在起きている出来事や、政府、企業、国民の経済動向への反応状況をみれば、ロシアがこの事態を切り抜けたことがわかる。ロシアは強大な国だ」。プーチン氏の経済顧問、マクシム・オレシキン氏は16日、公開討論会でこう語った。

もっと強気な出席者もいる。ロシア政府とつながりがある実業家コンスタンチン・マロフェーエフ氏は「ソ連崩壊以降、今年はロシア経済にとって最高の年だ」とぶち上げた。

表面的には威勢がいいが、18日まで開催されるフォーラムはこれまでと比べて明らかに盛り上がりに欠ける。以前はオリガルヒ(新興財閥)や国営企業が大型契約に次々と調印し、海外から出席する多数の有力経営者や政治家のために豪華なパーティーも開かれていた。

今年はウクライナ戦争を受けて国際的な対立が深まるなか、欧米各国の代表やその友好国は総じて姿を見せていない。

欧米の制裁対象になっているオリガルヒの1人は「毎年、イタリア人や日本人などと契約を交わしていたが、今年は契約案件もなければ契約相手もいない」と語った。

そこで運営団体は、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席やエジプトのシシ大統領などロシアの友好国首脳に17日の基調イベントへの出席を求めた。だが、両者ともプーチン氏とともに登壇するのではなく、ビデオ演説を選んだ。プーチン氏はウクライナからの独立を主張する親ロシア派勢力「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の指導者を伴って演説する予定だ。
タリバン代表が参加

フォーラムに出席している外国要人は他にもいる。カザフスタンやアルメニアの大統領、中央アフリカ共和国の首相、キューバ、ベネズエラ、ミャンマーの政府関係者、アフガニスタンの実権を握るタリバンの代表などだ。

16日に開かれた目玉の経済討論会では、ウクライナにも戦争にも触れられなかった代わりに、ロシアがいかに経済的影響を乗り越えるべきかが話し合われた。

欧米の制裁を受けてロシア企業の多くは資本市場から切り離され、輸入品のサプライチェーン(供給網)が寸断された。外資系企業はロシアから大挙撤退し、ロシア政府は国際的に流通するハード・カレンシーへの国民のアクセスを制限せざるをえなくなった。

ロシア中央銀行のナビウリナ総裁は16日の目玉の経済討論会で「外部環境が変わってしまった。永遠にこのままではないにしても、長期的にこの状況が続くだろう」と述べ、企業に対して輸出重視の戦略を手放し、国内市場に注力するよう求めた。

一方、ロシアのオリガルヒは国内での報復を恐れてプーチン氏のウクライナ侵攻を非難することに消極的で、目立った言動を避けている。中には、まったく姿を見せない人物もいる。制裁対象になっている産業界の重鎮オレグ・デリパスカ氏は先週、オンライン上にサクランボ園の動画を投稿し、フォーラムに出席するより「収穫する時期だ」とコメントした。
会議場にはアフガニスタンからの参加者も顔をみせた=ロイター

その他にも身元を伏せたままフォーラムに出席しようとして、名札に名前を表記しないよう主催者に求める出席者もいた。

ロシアの大手製造企業の幹部は「出席者は多くない。今年は明らかに減っている。誰もかれもが『この制裁下でどうしている』と尋ね回っている」と言う。「悲しい情景だ」

フォーラムに出席した欧米企業の幹部は、ロシアより欧米のほうが制裁の痛手を負っているのではないかと懸念している。制裁を受けて、グローバルサウス(南半球を中心とする途上国)がロシアと好条件で取引するようになった一方で、ウクライナ戦争をきっかけにエネルギー価格が高騰して欧米はインフレ高進に苦しんでいるというのだ。

フォーラムに出席した欧米企業の幹部は「(ロシアという)輸出市場を失い、エネルギー費用が30%上昇して自社製品の単位製造原価の半分をエネルギーが占めるようになれば 、お手上げだ」と話す。「一方で中国の競合企業に対してはエネルギー価格が40%値引きされている。取引条件はそういう風に変化している」

ウクライナ侵攻開始から数週間で企業がロシアから相次いで撤退するなかで、資産をロシアに残すことを憂慮する声もある。

「数十億を売り上げるビジネスをなぜロシアに贈り物として差し出さなければならないのか」。イタリア金融大手ウニクレディトのロシア子会社の売却計画を巡る討論で、イタリア・ロシア商工会議所のビンチェンツォ・トラニ会頭はそう問いかけた。「それが間違いなくイタリアの利益になるのか」

欧米企業の撤退が今後続いたとしても、新しい海外パートナーを呼び込むとロシアは表明している。

プーチン氏の側近で、ロシア政府系のハイテク複合企業ロステックを率いるセルゲイ・チェメゾフ 氏はロシア紙RBCの取材に対し「欧米の裏切りのために窓を閉じ、扉を閉めるのではない。我々は制裁を発動した国と別の道を行くが、世界の他の地域には一貫して理念に基づいて行動しているパートナーがいる」と語った。

マロフェーエフ氏は欧米の制裁で受ける経済的な痛みはロシアより欧米のほうが大きいという。

同氏は「欧米の企業や国々はエネルギー価格の上昇に苦しんでいる。一方でロシア企業は成果を上げている。夢にも獲得できると思わなかった特定市場を手に入れているのだ」と述べた。「唯一残念なのは、(当局が)いち早く欧米を切り離すのではなく欧米が手を引くのを見ていたことだ」

一方で、意気軒高なロシアとは意見を異にする海外の出席者もいる。欧米企業のある幹部は「世界的大手企業が欠席し、その代わりにタリバンの代表が出席している状況で説得力はない」と切り捨てた。

By Max Seddon and Nastassia Astrasheuskaya

(2022年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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ウクライナ最新戦況マップ6.16 東部で9方向から攻撃

ウクライナ最新戦況マップ6.16 東部で9方向から攻撃
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCA170N60X10C22A6000000/

 ※ ロシア軍も、兵員的には、相当消耗していると見える…。

 ※ 『英国防省によると、従来は600~800人の兵士で構成される大隊戦術群で行動していたロシア軍が人員不足に直面し、規模の小さい30人程度の集団で作戦を実行しているとみられる。移動も徒歩による行軍が中心という。』…、ということだ…。

 ※ それほどの「損害出して」、得るものは、何なんだ…。

 ※ ロシア側に、どんな「利得」があると言うんだ…。

『ロシア軍は16日、ウクライナ東部ルガンスク州の要衝都市セベロドネツクの掌握に向けて攻撃を続けた。同市のドネツ川対岸にある都市リシチャンスクへのウクライナ側の地上補給路を複数方向から遮る作戦を優先している。ウクライナ側の情報によると、周辺のドンバス地方で9つの方向から同時攻撃を仕掛けているという。

英国防省によると、従来は600~800人の兵士で構成される大隊戦術群で行動していたロシア軍が人員不足に直面し、規模の小さい30人程度の集団で作戦を実行しているとみられる。移動も徒歩による行軍が中心という。

戦闘の長期化で両軍の損害は増えており、ウクライナ政府高官は「装備の30~50%を失った」との自軍の分析を明らかにし、欧米に戦車やドローンなどの提供を求めた。こうしたなか、米政府は15日、ウクライナに追加で10億ドル(約1300億円)相当の武器を供与すると決めた。りゅう弾砲や弾薬などを追加提供して、各地へ砲撃を続けるロシア軍への抵抗を支援する。』

ロシア工作員、ICCに侵入試みる 別人になりすます

ロシア工作員、ICCに侵入試みる 別人になりすます
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB174LM0X10C22A6000000/

 ※ 「戦争犯罪」関係の情報に、アクセスしようとでもしたものか…。

『オランダ当局は16日、ハーグにある国際刑事裁判所(ICC)に、ロシアの情報機関で働く男(36)が別人になりすまして侵入しようとしたと発表した。ICCはウクライナでのロシア軍による戦争犯罪の疑いを捜査している。

発表によると、男はロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の所属。ブラジル人の個人情報を使い、インターンシップを装ってICCで働こうと4月にブラジルから渡航したが、入国を拒否され、ブラジルに強制送還された。

当局は、男がICCに侵入できていた場合、情報収集やデジタルシステムへの接触などをしていた恐れがあると指摘。捜査にも影響を及ぼしていた可能性があるとして「非常に脅威だ」とコメントした。(共同)』

南京条約

南京条約
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E4%BA%AC%E6%9D%A1%E7%B4%84

『南京条約(ナンキンじょうやく)とは、1842年に阿片戦争を終結させるため、清とイギリスの間で結ばれた講和条約。江寧条約ともいう。

南京条約を記した原本は、のちに中華民国が受け継ぎ、香港返還直前は台北市で一時期展示されていた。 』

『概要

1842年8月29日(道光22年7月24日)、南京近くの長江上に停泊したイギリス海軍戦列艦コーンウォリス艦上で、イギリス全権代表ポッティンジャーと清国全権代表で欽差大臣の職にあった耆英によって締結された。
条約の内容

 香港島割譲
 賠償金2,100万$を四年分割で支払う
 広州、福州、廈門、寧波、上海の5港開港
 公行の廃止による貿易完全自由化

附属協定

その後、南京条約の附属協定として「五口通商章程」と「虎門寨追加条約」(1)領事裁判権(治外法権)(2)片務的最恵国待遇(3)協定関税(関税自主権喪失)(不平等条約)が締結された。

この条約により、それまで強い制限下でヨーロッパとの交易を広州1港で行っていた体制「広東システム」が終結した。

1860年に九龍が租借圏に加えられ、ハチソン・ワンポアのルーツとなった。
関連項目

虎門寨追加条約 - 1843年に清朝とイギリスと締結した南京条約の追加条約
望厦条約 - 1844年アメリカ合衆国と結んだ南京条約と同類の条約。
黄埔条約 - 1844年にフランスと結んだ南京条約と同類の条約。
大英帝国 』

アヘン戦争

アヘン戦争
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%98%E3%83%B3%E6%88%A6%E4%BA%89

『アヘン戦争(アヘンせんそう、中: 鴉片戰爭、第一次鴉片戰爭、英: First Opium War)は、清とイギリスの間で1840年から2年間にわたり行われた戦争である。

イギリスは、インドで製造したアヘンを、清に輸出して巨額の利益を得ていた。アヘン販売を禁止していた清は、アヘンの蔓延に対してその全面禁輸を断行し、イギリス商人の保有するアヘンを没収・処分したため、反発したイギリスとの間で戦争となった。イギリスの勝利に終わり[2]、1842年に南京条約が締結され、イギリスへの香港の割譲他、清にとって不平等条約となった。

なお、アロー戦争を第二次とみなして第一次アヘン戦争とも呼ばれる。 』

(※ 以下、省略)

[FT]「香港は英国が占領」 中国、教科書で主権喪失否定

[FT]「香港は英国が占領」 中国、教科書で主権喪失否定
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB164QW0W2A610C2000000/

『香港の中等教育学校に配布された新しい教科書は、香港は英国の植民地ではなく占領地だったと教えている。香港における中国政府の思想弾圧の一環として行われている歴史の塗り替えだ。
2019年に香港で広がった抗議活動では、英国国旗を掲げて街頭で訴えをする人々の姿が見られた=ロイター

2019年に反政府デモが相次ぎ、一部のデモ参加者は独立を要求した。こうしたことから教科書は、将来の香港の政治体制は香港人が決めるべきだとする「自決」を求める声を封じようとしている。

「英国は香港を占領したが、中国政府はそのような不平等条約を認めず、香港に対する中国の主権を主張した」。現代教育研究社という香港の出版社が製作した教科書では、ある「模範解答」にこう書かれている。

「このため、香港は『国による主権の喪失』の条件を満たさず、植民地ではなかった」と教科書は解説している。

出版前の評価のために香港の中学、高校に送られた少なくとも5点の教科書は、現在の中国政府は香港島を英国に割譲した歴史的な条約を正式に認めたことがないと強調している。
反政府デモ後にできた科目で導入

数点はさらに、1972年に「国連非自治地域リスト」から香港が削除されたことは、植民地の自治に関する決議への国連の支持が香港に適用されないことを意味すると記している。

香港の雅集出版社から出された中国語の教科書には「これは、香港問題が中国の国家主権の範囲内であることを国際法が確認したことを示している」と書かれている。

教科書は、「公民と社会発展」という香港の新科目の一環として学校に配布された。中国政府に忠実な支持派が2019年の反政府デモに参加するよう学生の思想を過激化させた原因として批判した「通識教育(リベラル・スタディーズ)」に代わって昨年導入された科目だ。

香港当局は中国の国家主義的な路線をとるよう学校に対する圧力を強めており、この取り組みを受けて昨年、香港最大の教職員組合が解散に追い込まれた。

英国は1841年、アヘン戦争の最中に香港を占領し、中国を当時支配していた清朝が翌年、香港島を割譲した。第2次世界大戦中に日本軍の占領下に置かれた時期を除くと、中国に返還される1997年まで、英国が植民地として香港を統治した。

雅集出版社の教科書は、香港は経済的、政治的な管轄権だけでなく、「民族的な絆」「文化的伝統」「言語体系」「駐留部隊」のおかげで中国と結びついていると記している。
9月から高校の授業で使用予定

5点の教科書は計7点の教科書のリストの一部で、学校がこのなかから新科目の授業で使う教科書を選ぶ。教科書はすでに香港政府教育局によって審査され、今年9月から高校の授業で使用されるとみられている。

また、これらの教科書は2019年の民主化デモを「外部勢力」によって扇動された激しい暴動として描く中国政府の表現も繰り返している。

中等教育学校の教師を30年以上務めてきたチャン・チワさんは、19年以前には教科書が香港は植民地ではなかったという考えに触れることはめったになかったが、昨年以降、教育当局によって開催されるセミナーで、この見解が教師に伝達されていると話す。

「教師にとって最も難しいところは、香港が多くの人から植民地とみなされてきた時に、なぜ今はそうではないのかを生徒に説明することだ」とチワさんは話す。

教科書を1点ずつ出版した雅集出版社と現代教育研究社、名創教育にコメントを求めたが、すぐに返答がなかった。

教科書を2点出版した香港教育図書と香港政府教育局は、教科書の内容についてのコメントを控えた。

By Chan Ho-him, William Langley and Jennifer Creery

(2022年6月16日付 英フィナンシャル・タイムズ電子版 https://www.ft.com/)

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多様な観点からニュースを考える

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川島真のアバター
川島真
東京大学大学院総合文化研究科 教授
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ひとこと解説

香港返還交渉を行うに際して、鄧小平は「返還」という言葉を使わず、「回帰」と位置付けた。これは、そもそも南京条約など一連の条約が、西洋列強が武器を突きつけて清朝に結ばせた条約であり、無効だとする発想に基づく。回帰は、あるべきところに戻るということだ。また、香港返還は本来1898年に99年期限で租借した新界だけが対象で、割譲された香港島や九龍半島南部は対象外のはずだった。だが中国としては、それらも中国に戻って当然だとした。それも「回帰」という言葉に込められる。これから、こうした中国の公的な歴史観が香港の歴史教育になだれ込んでいくことになるだろう。香港で簡体字が用いられるのも間近かもしれない。
2022年6月17日 4:57

益尾知佐子のアバター
益尾知佐子
九州大学大学院比較社会文化研究院 准教授
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分析・考察

中国と世界との距離はどんどん遠くなっていますが、もはや香港も同じです。このような奇論で教育された子供たちが、世界の金融センターとしての香港の機能を維持し続けられるとは思えません。
香港は「『駐留部隊』のおかげで中国と結びついている」。ーー天安門事件を想起すれば、部隊は国外の敵ではなく内部の反対勢力のために必要なのでしょう。鄧小平らは一国二制度を提起した当初、台湾に軍隊の保持を認めていました。その制度はいまや似て非なるものになりました。
数年前、香港の知人は香港が「中国の植民地になっている」と言っていました。彼女はきっといま、香港が「中国の占領地になっている」と思っているでしょう。
2022年6月16日 18:56 (2022年6月16日 18:57更新)』

中国が係争地に橋、インドもインフラ整備 衝突から2年

中国が係争地に橋、インドもインフラ整備 衝突から2年
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB25C0C0V20C22A5000000/

『【ニューデリー=馬場燃】インド北部と中国西部が接する係争地で、中国が実効支配線を横切るパンゴン湖で大きな橋を建設していると、インドメディアが報じた。1月に現地で確認された巨大な橋に次ぐ2本目となる。いずれも戦車の走行が可能な大きさだ。2020年6月15日から両国の部隊が衝突し、45年ぶりに死者が出てから2年。係争地では再び、緊張が高まっている。

報道によると、中国が建設した1本目の橋は全長400メートル。幅は8メートルとの情報がある。インド外務省は2本目の橋について「建設地点は中国が違法に占拠している地域にあり、決して容認できない」と強く非難した。

係争地ではインドも軍用車両の走行が可能な道路などの建設を進めてきた。中国の橋建設に対抗し、今後も係争地でインフラを整備する構えだ。

インドと中国は駐留部隊の司令官レベルで協議を重ねてきたが、緊張が緩む気配はない。インドのジャイシャンカル外相は「中国との関係は正常でない」と指摘する。

インドと中国の国境は約3000キロメートルが未確定だ。両国の部隊は20年5月からインド北部のラダック地方でにらみ合い、同年6月の衝突で多数が死傷した。両国は係争地に計10万人前後の部隊を配置している。

この記事の英文をNikkei Asiaで読む
Nikkei Asia https://asia.nikkei.com/Politics/International-relations/China-India-build-roads-and-bridges-in-disputed-Himalayan-region?n_cid=DSBNNAR 』

中国、第3の空母「福建」が進水 国営メディア

中国、第3の空母「福建」が進水 国営メディア
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGM174KU0X10C22A6000000/

『【北京=羽田野主】中国国営の新華社通信は17日、上海で建造していた同国3隻目の空母が17日に進水したと伝えた。限られた甲板スペースでも高頻度で艦載機を発射できる電磁式カタパルト(射出機)を初めて搭載した。攻撃力を高めることで、米国への対抗姿勢を鮮明にしている。

新たな空母は「福建」と名付ける。福建省は習近平(シー・ジンピン)国家主席が長く勤務したゆかりの地だ。満載排水量は8万トン強。ウクライナから購入して改造した「遼寧」や、初の国産空母「山東」よりも大型化している。原子力ではなく、通常動力で稼働する。』

米国、ウクライナに追加軍事支援 1300億円

米国、ウクライナに追加軍事支援 1300億円
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN15EPY0V10C22A6000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】米政府は15日、ロシアが侵攻を続けるウクライナに追加で10億ドル(約1300億円)相当の武器を供与すると決めた。ロシア軍による黒海封鎖でウクライナからの穀物輸送が滞っている事態を打開するため、地上配備型の対艦ミサイルシステムを新たに送る。食糧価格の高騰を和らげる狙いがある。

バイデン米大統領は15日、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話協議し、追加の軍事支援を説明した。米ホワイトハウスは15日に声明を発表し、首脳協議で「ウクライナの民主主義を守り、ウクライナを守るという約束を改めて確認した」と記した。

【関連記事】ウクライナ東部要衝、市民退避焦点 ロシアは「人道回廊」

ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降、米政府が決めたウクライナへの軍事支援は総額56億ドルになる。今回の支援では地上配備型対艦ミサイルシステム「ハープーン」2基を盛った。5月下旬にデンマークが提供を決めており、ウクライナが求めてきた。米国による武器支援に含めるのは初めてになるもようだ。

ロシアによるウクライナ侵攻で穀物価格は上昇している。ロシアが黒海に面したウクライナ南部オデッサ港を封鎖し、トウモロコシ輸出が世界4位、小麦が世界5位である同国からの出荷が停滞しているのが一因だ。ウクライナ沿岸に対艦ミサイルを配備し、ロシアに対抗する。

米国務省高官によると、現在ウクライナの食糧貯蔵庫には2億人から4億人を賄える2000万トンの穀物が出荷できないままになっている。アフリカや中東などに向かう予定の穀物が含まれているとみられ、国連などは飢餓の深刻化を懸念している。

ウクライナ東部で戦闘を想定して4月以降から供与してきた155ミリりゅう弾砲をさらに18門送る。すでに約300門の譲渡を決めている最大射程30キロメートルほどのりゅう弾砲を拡充する。弾薬も3万6000発を追加する。

すでに供与を決定した「ハイマース」と呼ばれる高機動ロケット砲システムの弾薬も渡す。射程は最大70キロメートルほどで、平地が多い東部ドンバス地方で攻勢を強めるロシア軍の砲撃に対峙する態勢を増強する。

オースティン米国防長官は15日、ベルギーで開いた米欧など約50カ国の国防相らとの会合でドイツ政府が多連装ロケットシステムと弾薬の提供を申し出たと明かした。米英と足並みをそろえ、長距離ロケット砲を送る。オースティン氏は会合後の記者会見で「ドンバスでロシアを撃退するために不可欠だ」と述べた。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長はロシア軍の砲兵や射程に触れ「数字では明らかにロシア軍が有利で、十分な戦力を持っている」と指摘。一方、ロシアが直面する軍の補給体制や士気低下などの課題を挙げ「戦争は単なる数のゲームではない。どう使うかが重要だ」と訴えた。

バイデン政権はロシアによる攻撃で被害を受けたウクライナ国民を支援するため、追加で2億2500万ドルの人道支援も実施する。飲料水や食糧、医薬品、避難所の設営などを想定する。
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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

ウクライナへの地上配備型の対艦ミサイルの供与は、ロシアの黒海艦隊にとっては大きな脅威となるでしょう。特にアメリカがロシア海軍艦艇の位置情報をウクライナと共有することになれば、現在のロシアの黒海封鎖作戦への大きな挑戦となるでしょう。米国はウクライナに対して、過度に攻撃的な武器を供与して、戦争を激化させて長引かせたくないという懸念もありますが、今回は世界的な食糧危機を防ぐという目的を優先して、ウクライナへの軍事援助を強化した形になりました。
2022年6月16日 8:11

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深川由起子
早稲田大学政治経済学術院 教授
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今後の展望

戦争が長引き、世界中にインフレや食糧危機が広がり、その中で米国の中間選挙が近くなり、西側結束力維持へのプレッシャーが増しつつあります。ロシアや中国にとっては「多様な民主主義」を掲げ、「無責任に上から目線の説教を繰り返すだけの西側」と、途上国・新興国に広く存在する心情的反発を刺激する好機。欧米が夏休み入りする前の今月はいろいろなドラマが増えそうです。
2022年6月16日 9:02 』

ハンス島

ハンス島
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%B9%E5%B3%B6

『ハンス島(ハンスとう、グリーンランド語 Tartupaluk, デンマーク語 Hans Ø, 英語 Hans Island, フランス語 Île Hans)は、グリーンランド(デンマークの自治領)とカナダのエルズミーア島との間のネアズ海峡に位置する無人島。面積は1.3km2。

カナダとデンマークとの間で領有をめぐって係争中である。これまではこの島やその周辺海域を領有したところで大した利益が見込めるわけではなかったが、地球温暖化により、この海峡の氷が溶けて北米とアジア、ヨーロッパなどを結ぶ「北西航路」の要衝に一変する可能性が発生し、この小さな島を領有する事によって資源探査や漁業権といった国益が生じる可能性が出てきたため、領有権問題がにわかに熱を帯びてきている。

両国の軍隊が入れ替わり上陸し、自国の旗を立て相手の旗を撤去している。撤退に際して自国産のビールやウイスキーを残していくことが慣例化しており、領有権主張の一環として、ビールの箱には「カナダにようこそ」などと記されている。このように武力衝突を伴わない形で係争してきたことから、「最も礼儀正しい領土紛争」と呼ばれるケースもある[1][2]。

2022年6月14日、カナダとデンマークはこの島を分割領有することで合意し、長らく続いた係争状態が終結した[2]。 』

カナダとデンマーク、北極圏の島の分割領有に合意

カナダとデンマーク、北極圏の島の分割領有に合意
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCB169VJ0W2A610C2000000/

『【ニューヨーク=共同】カナダとデンマーク両政府は、約半世紀にわたり領有権を争った北極圏の「ハンス島」をほぼ半分ずつに分割領有することに合意し、14日に調印式を行った。ロシアのウクライナ侵攻が続く中、領土問題の平和的解決が可能だとの「強いシグナル」を世界に発した形だ。

ハンス島はカナダのエルズミア島とデンマーク自治領グリーンランド間の海峡に浮かぶ無人島。1973年の国境線画定時に双方が領有権を主張、80年代以降は双方の軍関係者らが国旗と自国産の酒を交互に島に置いて領有を誇示する習慣ができ「ウイスキー戦争」「世界で最も友好的な争い」などと呼ばれてきた。

今回、突然にも見える合意に至ったのは、ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領を念頭に「外交と法治は機能するという強いシグナル」(デンマークのコフォズ外相)を発信することが目的だった。カナダとデンマークはともに北大西洋条約機構(NATO)加盟国としてウクライナを支援している。

カナダのジョリー外相はオタワでの調印式で「国境線を書き直すのに銃は必要ない」と強調。コフォズ外相も「メッセージがプーチン氏に届いてほしい」と訴えた。両外相によるカナダウイスキーとデンマーク酒のボトル交換も行われた。
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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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別の視点

こうした領土紛争の解決として、領土を面積で半分にして分割するという解決が有効であるということを示す一つの例になっているように思う。これは中露の国境問題でも同様であった。しばしば北方領土での面積半分としての分割案が出てきたりするが、北方領土の場合、ロシアが実効支配しているため、そうした解決が難しい。もう一つ重要なのは、安定した国境紛争は儀式化するということである。インドとパキスタンの間でも、衛兵交代が観光地化しているが、ここでも「ウイスキー戦争」などと言われるように紛争をしているふりをする儀式が出来ることで安定した状態を作っていた。
2022年6月17日 9:10

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上野泰也
みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト
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ひとこと解説

地味だけれども、意義のあるニュースと言える。領有権争い・国境画定紛争は昔から、戦争の火種になることが少なくなかった。平和的に争い、平和的に妥協が成り立ったことは、ロシアのクリミア侵攻やウクライナ東部への侵攻といった軍事行動の非情さが注目されているだけに、ほっこりさせられる。ただし、カナダとデンマークはともにNATO加盟国であること(軍事的に同盟国である)、係争地となった島は無人島であり、資源が豊富といった経済利得と結びついていないことなど、平和的な解決が可能になる前提条件のようなものがある事例ということには留意したい。』

輸出管理規制で米国先行、日本は「不満」

輸出管理規制で米国先行、日本は「不満」
動き出す経済安保(4)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08EF90Y2A600C2000000/

『1日、米東部ペンシルベニア州マルバーン。米半導体メーカー、ビシェイ・インターテクノロジーの本社に、首都ワシントンから車で3時間かけて足を運んだ米商務長官ジーナ・レモンドの姿があった。「私たちが半導体を発明し、シリコンバレーを構えたのに、すべてアジアに出ていってしまった」。レモンドは同社幹部に米半導体産業の現状を嘆いた。

「ほかのすべての国が補助金を出そうとしている。企業は米国外に工場を建ててしまう」。焦りを募らせるレモンドは半導体サプライチェーン(供給網)の強化などを盛った「中国対抗法案」の早期成立を議員らに呼びかけている。「国家安全保障に関わる。成立の遅れは許されない」

米国が超党派で議論する対中法案は、日本で5月に成立した経済安全保障推進法より踏み込んだ内容だ。同法にも盛り込まれた半導体や人工知能(AI)、量子分野の開発・生産支援など自国技術の振興策に加え、企業の対中投資を規制する条項などで日本の先を行く。
中国と対立を深める米国は、同盟国の日本と時に摩擦を引き起こしてきた。

トランプ前政権は華為技術(ファーウェイ)などに禁輸措置を発動し、日本企業も出荷停止を迫られた。米国外で製造した製品にも、米国の技術や部品を一定以上含む場合に国内と同等のルールを課す輸出管理規制の「域外適用」に「日本はずっと不満を抱いてきた」(日本政府関係者)。

2月24日、ロシアがウクライナへの侵攻を始めると、米国は外国製品でも米国の製造技術を使っていればロシアへの輸出を認めない強力な制裁を打ち出した。異例だったのはこれまで同盟国に求めてきた域外適用のルールの一部を「同様の輸出規制を取り入れた」との理由で日本や欧州連合(EU)には免除したことだ。

4月、米商務次官補のシア・ケンドラー(輸出管理担当)が訪日した。ケンドラーは「日米が規制の足並みをそろえることで効果が高まる」と日本の連携に期待する。サプライチェーンからの中ロ排除を打ち出す米国に対し、日本はどこまで歩調を合わせられるか。政府と企業は覚悟を試される。

(敬称略)
三木理恵子、川上梓、西野杏菜、加藤晶也、鳳山太成が担当しました。

【ルポ迫真「動き出す経済安保」記事一覧】

・経済安保法「どこまで厳しいのか」 企業に緊張と戸惑い
・国の機密、企業どう関与 経済安保の資格導入一旦封印
・公開できない特許「不安大きい」 企業惑わす政策大転換

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渡部恒雄
笹川平和財団 上席研究員
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分析・考察

半導体の米国の対中輸出規制を理解する上で悩ましいのは、どこまでが安全保障上の理由で、どこまでが経済競争力という理由かの境界線が曖昧なことです。日本は80年代に米国との半導体摩擦の経験から、米国は国内産業保護のためにあらゆる手段をとることを知っています。一方で、中国がAIや量子コンピューターなど、最先端技術で日米を凌駕するゲームチェンジャーとなる技術を獲得した場合、真っ先に自国の安全が脅かされるのは日本であることも厳然たる事実です。安易な解答がない中で、日本は自国の安全を担保する日米同盟と、日本の産業競争力強化の二兎を追いかけ、米国との協議と協力を続けていくことが最善の政策なのでしょう。
2022年6月17日 7:52

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鈴木一人
東京大学 公共政策大学院 教授
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分析・考察

アメリカの半導体や新興技術をめぐる問題は、一方で対中政策の一環として位置づけられるが、他方で自国産業の保護という性格を持つ。この両者をつなぐカギは「アメリカの技術覇権」というキーワード。しかし、アメリカは既に国内に産業(製造業)を維持することが出来ず、保護主義的な政策をとっても保護すべき産業がない。TSMCの工場を誘致したが、その生産コストの高さで計画もうまく進んでいない。自由貿易には背を向けたアメリカだが、こうした産業の流出を止めようとすれば、今度は資本の動きを止めるしかないが、それはできない。アメリカの経済安全保障はまた裂き状態になっている。
2022年6月17日 9:16

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柯 隆
東京財団政策研究所 主席研究員
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分析・考察

こうやってみると、民主党のバイデン政権はトランプ前政権とほとんど変わらない。焦りが分かるが、具体策はみえてこない。ファーウェイなどの中国企業を規制することと米国半導体企業の投資行動は別問題である。中国企業をいくらやっつけても、米国企業が必ずしも米国に戻らない。まず、なぜ米国半導体企業がアジアに出て行っているかを分析しないといけない。市場はアジアにあり、供給網がアジアに集中している。むりやり供給網をアジアに戻そうとしても、企業は応じない。なぜならば物流コストが高くなるからである。今起きていることは中国から供給網が部分的に分散することである。アメリカに戻らない
2022年6月17日 8:07 』

米中首脳、今夏に電話協議と報道 衝突回避へ対話探る

米中首脳、今夏に電話協議と報道 衝突回避へ対話探る
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN1708E0X10C22A6000000/

『【ワシントン=坂口幸裕】米ブルームバーグ通信は16日、バイデン米大統領と中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が今夏に電話協議する調整をしていると報じた。米中は6月に入って高官による対話を重ねており、偶発的な衝突を避けるため首脳間でも意思疎通するタイミングを探っているもようだ。

米中首脳協議の時期は検討中だという。実現すれば3月18日にテレビ会議方式で実施して以来になる。この時は2月24日にロシアがウクライナに侵攻した直後で、バイデン氏が中国への経済制裁をちらつかせて習氏にロシアを支援しないよう迫った。

最近は米中高官の接触が続く。6月10日にオースティン米国防長官と中国の魏鳳和国務委員兼国防相がシンガポールで会談。13日にはサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と中国の外交担当トップ、楊潔篪(ヤン・ジエチー)共産党政治局員がルクセンブルクで会っており、今夏の首脳協議も議題になった可能性がある。

サリバン氏は16日、米シンクタンクの会合に出席し、楊氏との会談で「台湾海峡の平和と安定を維持する必要があるという米国の考えを伝え、中国の動向に懸念を表明した」と述べた。ウクライナへの侵攻を続けるロシアとの関係について「中国は慎重な姿勢をとっている」と話した。

米政府は中国に軍事・経済面でロシアを支援しないよう要求してきた。サリバン氏は「中国はロシアへの直接的な軍事支援をしておらず、(日米欧などによる)制裁や輸出規制を回避するための組織的な関与もしていない」と指摘。「中国は一線を越える措置は取っていない」と語った。

米国の台湾政策を巡っては「台湾を防衛する必要があるか迫られる日が来ないようにするのが目的だ。それが効果的に抑止していることになる」と指摘。「これは歴代政権と同じだ。台湾政策には緊張を含んでおり、台湾海峡の平和と安定を維持する点で機能してきた」と訴えた。』

米国、G7でインフラ投資枠組みを表明へ 中国に対抗

米国、G7でインフラ投資枠組みを表明へ 中国に対抗
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN16F310W2A610C2000000/

 ※ 「借りる側」からすれば、「金利は、どれくらいになるのか」、「担保に、何を取られるのか」という点が、焦点となるだろう…。

『【ワシントン=鳳山太成】サリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は16日、6月下旬の主要7カ国(G7)首脳会議で、新たなインフラ投資の枠組みの創設を表明すると明らかにした。インド太平洋などで経済的な影響力を強める中国に対抗する。

米シンクタンクのイベントで明らかにした。米国主導の枠組みでG7と協力する。詳細は触れなかったが、デジタルや医療の分野で世界各国のインフラ投資を支援するという。

サリバン氏は新たな枠組みについて「中国が提供するものの代わりを提供できる」と述べた。中国の広域経済圏構想「一帯一路」への対抗を念頭に、アジアなど世界各国でインフラ投資を通じて影響力を確保する狙いがある。

新たな枠組みの規模はG7全体や民間の投資も含めて、最終的に数千億ドル規模になるという。政府投資を呼び水に企業の投資を引き出す官民パートナーシップの形態を想定する。米政府の資金拠出は「控えめな規模になる」(サリバン氏)。

サリバン氏は「(バイデン大統領の)残りの任期において、バイデン政権の外交政策の象徴のひとつにするつもりだ」と述べ、新枠組みを通じた指導力の発揮に意欲を示した。

G7首脳会議は6月26~28日にドイツで開かれる。バイデン氏は中国やロシアに対抗するため、日本や欧州各国との連帯を打ち出す。』

米国、多国間で太平洋関与へ 来週構想立ち上げ

米国、多国間で太平洋関与へ 来週構想立ち上げ
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN170OJ0X10C22A6000000/

『【ワシントン=共同】米ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)のキャンベル・インド太平洋調整官は16日、日本やオーストラリア、ニュージーランド、英国、フランスなどと連携して太平洋諸国に関与する構想を来週立ち上げると明らかにした。この地域で影響力拡大を図る中国に、多国間で対抗する狙いだ。

米シンクタンクのイベントに参加したキャンベル氏は「太平洋は戦略的に極めて重要な地域だ」と強調し「活動を大幅に強化したい」と表明。「開かれ、健全で生産的、かつ強圧的でない太平洋」を維持できるよう、太平洋諸島フォーラム(PIF)加盟国のニーズに合った分野で緊密に協力したいと述べた。

また、米国が域内各国と2国間で漁業協定や違法操業取り締まり、不発弾除去、気候変動対策のほか、経済や安全保障面で海洋の状況を把握する能力を指す「海洋状況把握(MDA)」の協力を進めていると説明。同様の取り組みを有志国と共に実施したいとの考えを示した。

中国は4月、オーストラリアに近い南太平洋のソロモン諸島と安保協定を締結するなど太平洋進出を続けており、米国には出遅れ感が漂う。5月に日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」首脳会合に合わせ、違法操業を追跡するため域内各国と情報共有する仕組みをつくると発表するなど、巻き返しに躍起だ。』